<ライブレポート>Kroi、“やりたいようにやる” 持ち味を最大限見せつけたリリースツアー追加公演

Billboard JAPAN



 Kroiの3rd EP『STRUCTURE DECK』のリリースツアー「DUEL」の追加公演【-TURN END-】が、2021年3月27日東京・Shibuya WWW Xにておこなわれた。

会場内は何を象っているともつかない極彩色のオブジェでデコレーションされ、ステージは全体にファーが敷き詰められた異様な空間。

ただ、そういった舞台美術よりも会場を異質なものにしていたのは床だった。というのも、COVID-19の感染対策のため、フロア全体がマス目で区切られていて、観客は入場順に1人1マスに収まって整列しているのだ。そして飛沫を防ぐため、コールアンドレスポンスどころか歓声を上げることもできないという旨のアナウンスが流れる。

ボーカル・ギターの内田怜央は割と積極的に客席とコミュニケーションをとるフロントマンだ。このようなライブ環境にあって持ち味が出せるのか? 本人たちは"この状況"を楽しめるのか? 開演前に一抹の不安が襲った。

定刻通りに客電が落ち、メンバーが入場。歓声がないのもあって、客席に向かってアジテーションするわけでもなく、ふらっと立ち寄ったような物腰。そして数秒のざっくばらんな音出しの流れの中で、入場同様カジュアルに演奏が始まった。

「皆さん調子いかがですか? 元気ですか? Kroiです。よろしくお願いします」
 リラックスした内田のMCとともに披露された1曲目は「Noob」。光線銃のようなスペーシーな音色の鍵盤と、アグレッシブなギターで引っ張っていくボルテージの高い楽曲。徐々に上げていくのではなく最初からトップギアでぶっちぎっていく。歌がいない時間が長い楽曲で、楽器隊が競うようにそれぞれの技巧を披露する。

息継ぎなしで2曲目「Finch」へ。曲冒頭こそ抑えたボーカルで音数も少ないものの、途中メンバー全員参加のアフリカンなかけ声をきっかけとして一気に盛り上がりを迎えていく。

「あらためましてKroiちゃんです。もっと拍手ください」
 2曲目が終わったところでまた内田の気の抜けたMC。そして「Monster Play」「Suck a Lemmon」とKroi屈指のライブ・アンセムを続けざまに投下! オーディエンスは声を出せないものの、それぞれの胸の内で処理した熱量の高さは言語化不能の何かを通してありありと伝わってくる。オーディエンスの静かな熱狂に応えるように、バンドは4曲目まで一切ブレーキを踏まずバイタリティの高い演奏を続け、メンバーそれぞれの持ち味を最大限見せつける。

内田は単にキーやリズムを外さないというレベルの先、表現力の部分がますます洗練されている。フェイクやエッジボイスで声にニュアンスを付け、バンド名通りの黒いフィーリングを体現する。のみに留まらず、それだけ声に多様な表情を付けていながら、常に安定した発声をキープして、音が割れたり掠れたりせず常にいい成分が聴こえている。

長谷部はギターソロでは思いきりブルーズを聴かせ、バッキングではファンクのマナーに則ったカッティングをする稀有なギタリスト。今回のライブでは特にブルーズの側面が際立ち、音を詰め込まず情感たっぷり1音1音しっかり聴かせるギターソロが堪能できた。

関はグレコのBG Bassをチョイスするセンスの渋さに顕れているように、プレイの面でも年齢を疑うような洗練された滋味を感じる。若く、バンドとしても波に乗っているときにこれだけ弾けてしまったら、もっとドヤりが音に出でもうよさそうなものの、まるで余分なタメや音の暴れがない。スラップも、右手の忙しいメロディアスなベースラインも、休符を聴かせるリズムのとり方の難しいフレーズもシームレスに行き来する。落ち着き払ってやってのけるので、ぼーっと聴いていると難しいことをやっていることに気づけないほど。

千葉の鍵盤は本当に盤石というか、必要なときに必要なメロディで曲を肉付けする利他的な働きを果たしながら、ライブのたびに弾いている内容が変わる自由さで、自分が楽しむことも同時にやってのける。イントロに主旋律にソロにとあらゆる場面でバンドアンサンブルの要所を担って、ステージ上での彼の定位置(上手側の壁に背を向けるようにして左からメンバー全員を見渡すポジション)同様に、バンド全体に目を配れるプレイヤーであることが窺い知れる演奏。

そして、曲ごとにかなり方向性の異なるリズムパターンを網羅して、ソングライターの要求に応える益田のドラム。近年4つ打ちに特化したようなバンドも多い中、Kroiは本当に多種多様なドラムパターンの曲をリリースしていることが、ライブの場では特によくわかる。しかも彼らはライブのたびにどんどんアレンジを変えて演奏している。ドラマーの柔軟性が問われる場面も多いだろう。

5曲目の手前でまた内田によるMC。
 「なんていうか、だらっとやりたいようにやっちゃうバンドなんで、エモいのを求めてる人には合わないと思います」
 そうだ、Kroiはこうだった。こうしてハコの規模が徐々に大きくなり、セットを組まれるようになってもまったく気負わず、やりたいようにやる姿勢は最初期から貫かれている。

バンド始動直後から業界関係者がライブに足を運ぶ注目株だったKroi。昨年頭にはメンバーが音楽活動に集中するため仕事を辞め、これから快進撃というところで緊急事態宣言が発令された。

出鼻をくじかれる格好になったが、そんなときでも彼らは楽しんでいた。「こんなときだからこそどうにか」といった悲痛さもなく、ライブができない時間をいかに楽しく過ごすかをメンバー全員がおもしろがりながら探っている姿が頼もしかった。

だからこんな時勢の中、こんなにも短期間で「ツアーの追加公演をWWW Xでやり、当日券が出ないバンド」に急成長したことになんの意外性もない。そうだ、こういうバンドだった。観客とのコミュニケーションの術が封じられた今回のようなライブも、これはこれなりの楽しさを見出しておもしろがれるバンドだった、ということに内田のMCで改めて気付かされた。

この余裕と、この余裕の根拠になる確固たる技術力がKroiの核だ。

ライブではその後も、長谷部による歯ギターや謎のバリトンボイスの披露といった遊び心を感じる演出と、それを下支えする確かな実力に圧倒されっなしの時間が続く。

内田は曲によってウィスパーからベルティングのハイトーン、ソウルフルなファルセット、シャウト、どこで息継ぎしたのかわからないような高速ラップと縦横無尽にスタイルを使い分ける。

楽曲の面でも、濃度の違いこそあれ全曲に”黒い”ノリは共通するものの、その黒さの方向性はファンク、ヒップホップ、ブルーズ、ソウルと多岐にわたる。さらには同じカッティングでもファンクに振り切ったチャカチャカしたカッティングもあれば、ワウを噛ませたサイケなカッティング、ロック寄りの縦ノリなフィーリングが強いカッティングもありと異なっていて、本当にやりたいことを全部やろうとしているというのが楽曲のバラエティ豊かさに顕れている。

今回のライブでこれまでにリリースした楽曲をまとめて聴いて改めて感じたのは、つくづく絶対につまらないアウトロをやらないバンドだということ。ロックバンド然とした、コードをかき鳴らしてジャーンで終わるといったベーシックなものがなく、これまでに出てきたメロディそのままではなくアウトロ用のメロディラインが存在するもの、ジャムのような応酬を繰り返すものや、それぞれのソロを聴かせるようなものなど、聴いていて飽きない。

これまでのKroiを凝縮したような18曲を駆け抜けたのち、アンコールでは4月末日にリリース予定の新曲「shift command」を初披露。

4つ打ちのドラムに特徴的な単音フレーズのギターとクワイアなオルガンが乗る、これもまた今までのどの曲とも毛色の違う楽曲。この曲が収録される1stアルバムの発売とリリースツアーへの期待を存分に高めての終演となった。

Text:ヒラギノ游ゴ
Photo:Momo Angela

◎公演情報
【Kroi 3rd EP 『STRUCTURE DECK』release tour“DUEL”追加公演】
2021年3月27日(土)
東京・渋谷WWW X
<セットリスト>
1.Noob
2.Finch
3.Monster Play
4.Suck a Lemmon
5.dart
6.Mr.Foundation
7.flight
8.侵攻
9.Never Ending Story
10.MAMA
11.Polyester
12.risk
13.Custard
14.Page
15.HORN
16.Network
17.Fire Brain
18.Shincha
19.shift command

◎リリース情報
シングル「shift command」
2020/4/3 配信スタート

アルバム『LENS』
2020年6月リリース

◎ツアー情報
【Kroi 1st Album Release Tour“凹凸”】
2021年07月04日(日)北海道・PLANT
2021年07月10日(土)神奈川・横浜FAD
2021年07月11日(日)千葉・LOOK
2021年07月16日(金)大阪・梅田バナナホール
2021年07月18日(日)愛知・名古屋SPADEBOX
2021年07月30日(金)福岡・DRUM Be-1
2021年08月01日(日)京都・KYOTO MUSE
2021年08月06日(金)東京・渋谷CLUB QUATTRO

当記事はBillboard JAPANの提供記事です。

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