都市部の生き方は最適か? 目の前の人間を一瞬で信頼する社会をめざして


●東海エリア注目の起業家・きょうちゃんがめざす社会とは?
"せともの"の街、愛知県瀬戸市。この街は火の街・土の街と呼ばれ、昔から真っ白な陶土や自然の釉薬が採れるため、やきものの産地として栄えてきました。「ものをつくって、生きる」そのことに疑いがない。それゆえ、陶芸に限らず、さまざまな"ツクリテ"が山ほど活動する、ちょっと特殊なまちです。瀬戸在住のライターの上浦未来が、Iターン、Uターン、関係人口、地元の方……さまざまなスタイルで関わり、地域で仕事をつくる若者たちをご紹介します。

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○Vol.16 On-Co 代表取締役 藤田恭兵

「On-Co」の藤田恭兵くんこと、 “きょうちゃん”は現在28歳。オンラインを駆使しつつ、リアルに帰着させるニューノーマルな地域の課題解決に日々挑戦している。大学時代に起業し、都市部の生き方は最適化なのか? を探り、現在はローカルを舞台に全力で遊ぶように働く。

瀬戸では商店街での大家さんの顔、そして行政とのプロジェクトを運営する顔を見せる、東海エリア注目の起業家・きょうちゃんがめざす社会とは?
○きょうちゃんとは何者か?

世の中には、いろんなことを手がけすぎて、「何をしている人なんだろう?」とよくわからない人がいる。そのひとりが、きょうちゃんだ。

瀬戸では、せと銀座通り商店街にある「ライダーズカフェ瀬戸店」の物件大家さんであり、瀬戸市役所の都市計画課とは、菱野団地内の空き家のリノベーションプランを考える企画「DADADA DANCHIストック計画」などを進める。

2020年までは、名古屋駅徒歩圏内でシェアハウスのコミュニティーマネージャーとして活動し、一緒に事業を運営していた水谷岳史さんと「On-Co」を立ち上げ、共同代表になった。

地域の課題を解決するクライアントワークをしつつ、空き家解決や若い人の夢を叶えるプロジェクトとして、物件ではなく、借りたい人の想いをホームページで紹介する「さかさま不動産」をリリース。「儲からないんすよ~」と笑いつつも、すでに4組がマッチングに成功し、成果をあげている。

その活動は、まだまだ数えきれないほどあり、きょうちゃんが何者なのかというイメージは、人によってさまざま。ただ、新しいことを生み出すスピード感と実行力は、驚くべきものがあり、彼を知る人は、何に向かって、あれだけ動けるのか!? と思っている人も多いハズ。そこで、きょうちゃんが一体何を原動力に動き続けているのかをお届けしたい。
○大学時代に友人と起業する

きょうちゃんは、大学生のときに友人3人と大学時に合同会社「Memotime(メモタイム)」を 立ち上げ、新社会人向けに教育コンテンツの作成とコミュニティ運営の事業をスタートする。

「20歳ぐらいの時、やりたいことがなくて、モヤモヤしながら大学生活を送っていたんですよね。まわりみると、何やったらいいか悩んだり、先輩が就職して鬱になる人がめっちゃ多かったんです。そこで、大学生向けの教育コンテンツを始めました。

その時に、いろいろな社長に会いに行ったり、知見を広めていったら、人生楽しいな~と思うようになったんです。僕と同じ現状があったときに、どうすれば解決されるかなと思い、形にしようと思いました」

けれど、メモタイムはうまくいかず、1年で廃業。個人でインターン開発を始め、仲間を募集すると、集まってきてくれたものの、住まいがバラバラだったため、名古屋に集まれる場所がほしいと持ち上がる。そこで、2015年、名古屋駅から徒歩圏内に古民家シェアハウス 「Fyume(フューム)」の運営もはじめた。

すると、シェアハウスの運営の方が、お金がまわってきて、「こっちのほうがいいじゃん(笑)」と、シェアハウスの運営に舵を切る。

その後、シェアハウスを立ち上げる時に、お世話になったシェアハウス「Longroof」立ち上げメンバーの水谷岳史さんと活動をはじめ、飲食店、レンタルスペース、シェアハウスなど合計8件の空き家をリノベーションして運営するように。まるで家族のようなコミュニティが出来上がり、大都会・名古屋に “村”が出現と、話題を集めた。
○オンラインを駆使し、リアルに帰着させるまちづくり

名古屋で5年以上活動し、一大コミュニティを築いた末、2020年になると、「新しいことをやりたい」と、古民家シェアハウス・飲食店は、やりたい人へすべて譲渡。前年には、水谷岳史さんと共同代表で「 On-Co」も設立し、ローカルでの課題解決の仕事が増えていく。

さらに、新型コロナウイルスが拡大すると、SNSを駆使したライブ配信の実験などを日々行っていたことで、オンライン配信の依頼が多く舞い込んだ。

瀬戸市では、「瀬戸まちづくり」から、瀬戸市の中心市街地の活性化できないか? との依頼で、瀬戸の魅力と空き家を紹介するVTRを作成。その動画を「On-Co」メンバーで見て、ツッコミながらのオンライン配信。

ほかにも、「三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島」では、オンライン商店街を開催。GATEの漁業をゲームワールドな世界観でライブ配信し、獲れた魚は名古屋市内のカフェで食べられるようにしたり。また、三重県桑名市のお寺で開催された法要のオンライン配信をサポートしたこともあった。

●都市部の生き方は最適か?
○都市部の生き方は最適か?

長らく名古屋駅すぐという、超都心部で活動だった。しかし、ここ数年で、なぜローカルに目を向けるようになったのだろうか?

「都市部の生き方が最適ですか? ということは、めっちゃ考えていますね。名古屋でずっと活動してきましたが、都会は良くも悪くも、すごい人もいっぱいいるから、若い人たちは新しい挑戦がしにくい。

マサラタウン(※ポケットモンスターで最初の一歩を踏み出す町)には向いていないと思うんですよ。さびれている町のほうが、最適だったりする。ローカルだと、家賃や物価も安くて、週5とか週6で働かなくても、もっと自分らしい働き方ができますよね。

その可能性を社会に広げたい。僕ら自身も、新たに実践している最中で、全力でローカルで楽しむ。新しい生き方の発信は、会社を立ち上げた21歳の時から好きだったので、そういう提案はしていきたいなと思います!」
○“大喜利”が楽しい街、瀬戸

実践の場のひとつに、瀬戸がある。訪れるようになったきっかけは、「ゲストハウスますきち」の南慎太郎くんだった。同世代の起業家が開くライティングスクールで出会い、瀬戸に遊びに来るようになり、町を好きになっていく。

「瀬戸の場合、マサラタウンからは、すでにレベルアップしてるんですが、町自体が大喜利している感じが好きですね。歴史ある神社の参道に、『宮前地下街』という商店街があって、待て待て~地下じゃないやないか! みたいなツッコミ待ちがあったりする。街がボケてるのがおもしろい。ツッコミスキルが試されて、突っ込む人によって、楽しみ度合いが変わるんですよ」

お題をもらい、ムムッと頭をひねり、おもしろおかしく回答する「大喜利」。それはきょうちゃんにとって、仕事の提案の姿勢にも近い、という。

「例えば、最近お仕事することが多い行政だったり、先日、相談を受けたテレビ局だったりには、常識や当たり前、それに通例だったりがあると思うんですが、僕にとってはフリ(常識。お題)なんですね。

それに対して、こんなことできますか!? とボケ続けていると、おもしろいからやろ~と通ったりするんですよ(笑)。

それに、相手からツッコミが入ったりする。突っ込むということは主体性を持って、物事を見てくれた瞬間だと思うので、僕たちは常に大喜利をしていてみんなにいかに突っ込んでもらえるか? に挑戦しているのかもしれません」

○突然、瀬戸の物件を購入する

そんなある日、オーナーの南くんと「せと銀座通り商店街」を歩いていると、「瀬戸に物件があったら、借りたいんだよね~」と口にする。商店街内に、ちょうど格安で空き物件があったので、南くんが「売ってるらしいよ」と紹介すると、「おもしろいことが起こるかも」と即決で購入。

現在、その物件は友人のDAVID YUくんに貸され、「ライダーズカフェ瀬戸店」としてオープンとして、生まれ変わった。

それは、冒頭で紹介した「さかさま不動産」のマッチングで、リアルにオープンした、初のお店となった。

「『さかさま不動産』では、どうして借りたいのか。その想いが可視化されることによって、信頼ができたり、価値が生まれて、経済が回っていくんじゃないかと思っています。不動産というものを新たな価値観で回していくには、どんな情報を、どう可視化していくのがベストなのか、探っている状態ですね。

『さかさま不動産』のずっと先には、僕がめざす “目の前の人間を一瞬で信頼できる社会”ができるんじゃないかなと思っています。目の前にいる人間が、信頼できるなと思って、ものをあげたりできる人のほうが、人は暮らしやすいと思うんです」
○“目の前の人間を一瞬で信頼できる社会”とは何か?

もともと、信頼ベースで生きているというが、そのきっかけかも、というエピソードは大学生の頃に遡る。シェアハウスを始めるときに、水谷さんと一緒に物件を運営していた吉原旭人さんに、物件をどう探したらよいかと相談すると、「一緒に探すか!」と町を歩いてくれたのだという。

「そしたら、物件が1時間ぐらいで見つかりました(笑)。近所のおじいちゃんやおばあちゃんに、このへんで空き物件ないですか? と聞いたら、そのなかのひとりに『うちこい!』と呼ばれて、一緒にビール飲んだんです。そしたら、わかった、隣の物件紹介したるわって、マッチングしたんですよね。

その時に、この人はどこの馬の骨かもわからないような僕を信頼してくれたんだなーと思って。ふつうはそれが起きないんだけど、目の前の人を信頼する人が増えると、多くの人が幸せになれる。そんなふうに考えています」

きょうちゃんにとって、契約書は相手を信頼できない代名詞であり、「クソつまんない」こと。家や車に鍵をかけることも、ルールづくりもそう。

今、仕事になっていることは、人と人の関係性や「信頼」をベースに「間」をとりのぞく、サービスの実験のように見える。みなさんは、「目の前の人間を一瞬で信頼する社会」をどう思いますか?

上浦未来 かみうらみく 1984年愛知県瀬戸市生まれ。地域での人と人の関係性をつくるPRチーム「ヒトツチ」共同代表。東京・神保町の小さな出版社で働いたのち、ライターとして独立。『TURNS』(第一プログレス)『greenz.jp』(NPO法人グリーンズ)『ことりっぷ』(昭文社)、関西テレビ制作のドラマやバラエティ公式HP記事ほか、多数を担当。現在、瀬戸の町歩きWebエッセイ『ほやほや』運営、「ゲストハウスますきち」&「aime le pain(エムルパン)」PR担当。 この著者の記事一覧はこちら

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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