【インタビュー】映画『裏アカ』瀧内公美 SNSの裏アカウントにハマる主人公を熱演「演じているうちに、自分と真知子がリンクしていった部分があった」

テレビファン


 今や私たちの生活と切り離せない存在となったSNS。コミュニケーションツールとして便利な一方、そこでの発言が社会問題化することも少なくない。そのSNSを題材に、素性を隠して本音をさらけ出す“裏アカウント”、すなわち“裏アカ”にハマっていく女性の姿を赤裸々につづったセンセーショナルな人間ドラマ『裏アカ』が、4月2日から全国公開される。仕事や日常でストレスをため込み、ふとしたきっかけで“裏アカ”に手を出す主人公・伊藤真知子を、迫真の演技で表現したのは瀧内公美。キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞をはじめ、数々の賞に輝いてきた実力派女優が、「自分と真知子がリンクしていった」と語る撮影の舞台裏を明かしてくれた。

-この作品のどんなところに魅力を感じて出演を決めたのでしょうか。

私自身は「自分を表現するのは作品の中で」と考えているので、発信するものに関するSNSは利用していません。ただ、SNSは今、社会問題になるほど影響力の強いものです。そこから感じとるものが自分にとって実感のない感情だからこそ、その渦中の人物を演じることは、自分の考えの幅を広げてくれるのではないか。そう思ったことが、この作品に参加した大きな理由です。作品は、自分が体感したことのない感情に出会えるチャンスでもあり、遠ければ遠いほどやりがいはありますし、いろんなことを知るきっかけにもなりますから。

-ご自身とかけ離れた真知子という女性を演じるに当たって、どんなふうにアプローチをしましたか。

まず、SNSに関しては完全に初心者だったので、助監督の方たちと一緒に勉強させてもらいました。Twitterとインスタグラムが劇中に出てくるので、実際に登録をして、どんなふうに発信するのか、みたいな使い方の基本からです(笑)。

-映画を見ていると、とても初心者とは思えませんね。

ありがとうございます。ただ、SNSを使えるようになっても、役自体にリアリティーがないと意味がないので、アパレル業界で働いている真知子を演じるに当たっては、実際にアパレル企業も取材させていただきました。どんな仕事をされているのか、SNSとアパレルの関係性みたいなものも聞かせてもらったり。レセプションパーティーの場面もあるので、監督と一緒にそういうパーティーに行き、その雰囲気を見せていただいたりもしました。

-脚本についてはいかがでしょうか。

1カ月半ぐらい監督と話し合い、何度も推敲(すいこう)を重ねました。もともとは、もっとドラマティックな感じだったんです。でも、もうちょっとリアリティーを持たせたかったので、ふとしたことから始めるということと、小さな積み重ねを大切にしたいと。ごく普通の人なのに、いきなりフォロワー数がバーンと増える、みたいなことは滅多にないでしょうから、緩やかに伸びていくことに喜びを感じるさまを丁寧にやっていきたいと思って。

-監督も脚本も男性ですが、女性として違和感はありませんでしたか。

男性目線だと思った点に関しては、「私だったらこう感じます」とお伝えしました。助監督や他のスタッフにも女性がいらっしゃったので、皆さんの意見も聞きながら脚本をブラッシュアップしていったような感じです。違和感みたいなものは少しずつ取り除けたように思えます。

-真知子がハマっていったSNS上の承認欲求については、どんなふうに感じましたか。

こういったこともあるんだろうな、とは思いました。SNSで発信する立場にある人なら、大なり小なり持ってしまう感情だろうな、と。

-真知子の気持ちは分かるけど、ご自身としては、そこから一歩引いた距離感でいたということですか。

そうですね。客観的に見て、なぜ彼女がそれに対して悩むのか、なぜのめり込んでいくのか…。何を求めているのか、どうしたいのか、ということを客観的に考えて、だからこういう行動になっているんだな、と脚本を読み解いていきました。

-そうすると、自分と距離があっても、演じる上では違和感はなかったのですね。

でも、やっぱり難しかったです。自分に実感のないことばかりだったので。

-それをお芝居に落とし込んでいくには、どんなふうにしたのですか。

ひたすら想像していきました。「自分だったらどうかな…?」と置き換えて。それがないときは、身近なところから「誰かこういう人いなかったかな」と探っていった感じです。漠然と“演じる”だと、ホンに書かれたまま、せりふを言うだけになってしまいますが、生意気かもしれませんが、私はいつも「役を生きる」ってなんだろうなって考えることが多くて。生きていれば、人っていろんなことを考えますよね。だから、「何を考えているのかな…?」というところから想像することを心掛けました。

-その結果、演じてみた手応えは?

撮影は2年前だったんですけど、今回、久しぶりに見てみたら、私自身が不安定なのが分かるんです。やっぱりこの中にいたとき、そういうふうになっていったんだろうな…と。客観的に見て、そう感じました。あのときは、本当に必死だったので…。自分でもSNSのことがあまりよく分かっていないし、真知子も自分の人生が分からなくなってきている。演じているうちに、それが自分の中でリンクしていった部分があったのかな…と。

-真知子の根底には、“孤独感”や“寂しさ”といった感情がありますが、瀧内さんがこれまで演じてきた役は、そういう部分が共通するものが多いように思います。その辺りを、ご自身ではどう感じていますか。

そういう時代に生きているということなんでしょうね。一貫性という点では、彼女の人生は間違いじゃない』(17)や『火口のふたり』(19)、『アンダードッグ(前編・後編)』(20)など、社会性やメッセージ性のある作品が多いですよね。社会的弱者と言われる役を演じることもありますし。そういう意味では、いろんなことを考えるきっかけをいただく作品が、ものすごく多いです。役によって成長させてもらっている感じが、すごくあります。

-ご自分で意図しているわけではなく、たまたまそういう役に巡り合っているということでしょうか。

巡り合っているのもありますし、自分がそういう作品を好きだから、ということもあります。劇場を後にしたとき、何か一つでも感じ取っていただける作品に関われたのなら、すごく幸せなことですし。お金を払って見ていただいているので、おこがましい話かもしれませんが…。でも、何らかの意味がある作品に携わることができたのなら、やっぱり幸せですし、やりがいもものすごく感じます。そういう作品に出会える役者でいるために、いろんな努力をしていかねばと常に思っています。

(取材・文・写真/井上健一)

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