文系IT社員の日常 第5回 AIでは予測しきれない! ?「現場」が見ているもの


あなたは文系? 理系? 高校時代に選ぶ方が多いこの二択。しかし文系だけれど社会に出てからIT業界に携わる「文系IT社員」という働き方もある。文系とIT、一見相反するように見えるが、顧客とエンジニアの橋渡しをしながら課題を解決する彼らの仕事とは……?

この連載では、AIと金融工学を活用したWebプラットフォームを開発・運営するMILIZEに所属する著者による、実体験をベースにした「文系IT社員の日常」を紹介する。

<前回までのあらすじ>
都内で23店舗展しているスーパー「フレッシュネス」の役員・早坂氏からの依頼で、AIを活用した肉の需要予をするために過去データの分析を行った三浦と大野。早坂氏に分析結果の説明を実施するなかで、より予測精度を向上させるために「肉の需要予測の予想的中率が高い店舗責任者」との面談を希望した。それから一週間が経過した――。

これまでの話はこちら。

今日は3回目のフレッシュネス・早坂氏との面談日だ。本日もオンラインで面談を行う。

三浦・大野「早坂様、今回の打ち合わせも宜しくお願いします」

早坂「今回は三浦さんからのリクエストにお応えして、肉の売上予測をよく当てている、フレッシュネス練馬店の佐々木も同席しております。佐々木は弊社では唯一の女性店長です」

佐々木「初めまして。練馬店の店長を勤めている佐々木と申します。宜しくお願いします」

メガネをかけた凛とした佇まいからは、知的そうな雰囲気が滲み出ていた。歳は私と同じくらいだろうか。直感的に何か良い情報が得られそうだと感じた。大野も同じことを感じたのか嬉しそうにしている。

三浦「こちらこそ宜しくお願いします。弊社では現在、フレッシュネス様から依頼を受け、肉の需要を予測するために過去の売上データ分析を行っています。AIである程度のところまで予測はできるようになったのですが、さらに精度を高めたいのです。佐々木様の予測精度が高いと聞いているのですが、予測を行う際のお話を伺って、何か活路を見出せればと思っています」

大野「佐々木様が予測をする際、気をつけていることはありますか?」

佐々木「私が予測を行う際にはいくつか気をつけているポイントがあります。まずひとつ目は"天候と気温"ですね。夏場にニュースでも取り上げられますが、練馬は都内でも屈指の暑いエリアです。晴れた暑い日はBBQなどのイベントが行われやすいため、天候と気温は注意しています」

三浦「なるほど。確かに寒いとBBQをする気は起きないですね。夏祭りなどのイベントごとだと、屋台の売れ行きにも天候や気温は影響しそうです……」

佐々木「そうですね。次に気をつけていることは"メディア"です。テレビで肉に関わる料理が放送されると、売れ行きが好調になります。少し前だと、テレビで餃子パーティーが取り上げられた時、豚ひき肉の販売が伸びました。他にも、豚バラ肉や豚ロース肉も伸びましたね。一般的に餃子は豚ひき肉が定番ですが、少し変化をつけたいと考えた方もいたようです」

大野「餃子パーティー、流行りましたよね。あとはテレビ関連だと、"ステーキを食べると幸せホルモンが出る"(※メモ1)というニュースも見ました。僕も家でステーキを作りまくった覚えがあります」

文系IT社員メモ

■メモ1「幸せホルモン」とは
脳内を流れる神経伝達物質「セロトニン」は、気持ちを安定させる働きをするため、通称「幸せホルモン」とも呼ばれる。ステーキをはじめ、牛・豚などの赤身肉やレバーに含まれる必須アミノ酸ひとつ「トリプトファン」は、この「セロトニン」の材料と言われている。

佐々木「幸せホルモンの話題が取り上げられた時は、牛肉の売れ行きが伸びました。ステーキをご家庭で作る方が多かったんだと思います」

佐々木「最後に私が気を付けていることは、総務省から発表されている『加工肉の消費者物価指数(CPI全国月次)』(※メモ2)です」

三浦「CPIは知っていましたが、加工肉という狭いジャンルでもあったんですね」

これは盲点だった。省庁が出している指標があるのであれば活用しない手はない。

文系IT社員メモ

■メモ2「消費者物価指数」とは
消費者が購入するモノやサービスの価格など、物価の変動を時系列的に測定する指数。国民の生活水準を示す指標のひとつで、総務省が毎月作成・発表している。

佐々木「私はプライベートで株取引を行っているのですが、チャートのトレンドから肉の需要予測ができないものかと思い、色々調べてみた結果、この指標に辿り着きました。この指標を使い始めてからは予測しやすくなりました。全体で上昇トレンドなのか下降トレンドなのかを把握するだけでもかなり違いますからね」

大野「この指標は使えそうですね。過去の肉の売上データと照らし合わせて、相関関係を早速調べてみたいと思います」

佐々木「お役に立てたなら良かったです。肉の需要予測って、各店舗の責任者にとっては結構なプレッシャーなんですよね。多すぎても少なすぎてもダメですし、いつも胃が痛くて……。お二人には期待していますね」

佐々木氏はそう言うとにっこりと微笑んだ。

三浦「期待に応えられるよう頑張ります! 色々と貴重なヒントを伺えて助かりました。早速予測の改善に取り組むので、結果が出ましたら改めてご連絡しますね」

早坂「宜しくお願いします。楽しみにしています」

こうしてフレッシュネスとの3回目の面談は終了した。大野は面談が終わると同時に、プログラミングを開始した。その目はかつてないほど輝いていた。

次回に続く

菊地学 きくちまなぶ 1980年宮城県生まれ。慶應義塾大学商学部卒。メガバンクで約10年勤務した経験あり。株式会社MILIZEでは主に金融機関を対象とした営業活動を行う傍ら、動画の制作やイベントの企画、Webセミナーの配信等の広報活動を実施。 この著者の記事一覧はこちら

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