ドラッグストアで「なぜPCR検査を受けられないの!」疲弊する薬剤師

日刊SPA!

 新型コロナウイルス感染拡大が「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に拍車をかけた。“お客様は神様”ではないが、客から理不尽なクレームを受けたり、過剰なサービスを求められたりすることが増えているという。

我先にマスクを求める客がドラッグストアに押し寄せ、数々のトラブルを生み出したことは記憶に新しいが、流行から1年以上経過した現在まで続くカスハラの実態とは、一体どんなものだろうか。マスコミの報道内容によって変化があるとか……。

◆マスコミの報道に合わせてクレーム内容が変化

大手ドラッグストアチェーン店で薬剤師として働く上野博樹さん(30代・仮名)は1年を通して、クレームや問い合わせの内容に変化を感じていた。

「去年のはじめごろはマスク、その後は消毒液、紙製品、精製水など、メディアで取り上げられたものを求める人が殺到してクレームになる感じでした」(上野さん、以下同)

コロナが流行し始めた頃は、マスク需要の急激な高まりや、“転売ヤー”の出現などで在庫切れになってしまうことが多々あった。そのため、「なんで朝から並んだのにマスクがないんだ!」「在庫を隠してるんじゃないのか?」などと言われたそうだ。

朝早く来たのに買えなかった、と不満を抱いた客が多いのか問い合わせは午前中に集中、男女ともに中高年の客という印象だそう。

「あと、マスクはお一人様3つまでに個数制限をしていましたが、30個以上レジに持ってきた中年男性もいました。すると『どうして売ってくれないんだ!?』と騒がれてしまって。こちらとしても販売したいのですが、より多くの方に手に取ってもらいたいとの想いがありまして……」

また、上野さんが勤務する店舗では、密を避けるため朝から並ぶことは控えるように告知していた。だが結局、マスクなどの人気商品の販売日には行列ができてしまい、整理券を配って対応したのだとか。商品の供給が安定し始め、徐々にこうしたクレームは減ったそうだ。

◆検査やワクチンに関する“問い合わせのようなクレーム”が増加

しかし最近、検査やワクチン、治療薬などの報道が増えてきた影響か、カスハラの内容に変化が見え始めた。

「最近はPCR検査についての問い合わせのようなクレームも増えました。『ここで受けられないんですか?』といったものです」

PCR検査キットの販売自体はしているが、自分で検体をとって直接クリニックに送るといった方式のもの。薬局で薬剤師などが検査するものではないので、ここでは検査ができない旨を伝えた。そしてキットの使い方を説明したが……。

「『どうしてできないんですか? もういいです!』と少々怒って帰られました。中には『じゃあいいです!』と言って帰ってから『やっぱりください』と戻ってきた人もいました」

こうした問い合わせをする客はひとりだけではない。複数人いたそうだ。

◆クレーム件数はコロナ流行前に比べて15倍以上に

さらに、新型コロナの治療薬候補「アビガン」が報道で騒がれると、「置いてあるか」などの問い合わせもあったそうだ。クレームのような感じではなかったそうだが、コロナで不安を感じる人が多い証左ともいえる。

上野さんの店舗ではコロナ流行前は1か月2件程度のクレームだった。単純計算すれば1年間で24件。しかし去年は1年間で受けたクレームは370件と15倍以上にも跳ね上がった。細かいクレームはもはや共有していないそうで、実際の件数はさらに多い可能性も。

「以前は商品に不良があったなどのことがなければクレームにならなかったんです。でもコロナが流行してからは、気軽に、と言っては語弊があるかもしれませんが、簡単にクレームをつけてくる人が増えたように感じます。商品が手に入らないストレスや、コロナ禍への不安を店員にぶつけているのでしょう」

◆ドラッグストア店員がもっと評価されてほしい

従業員も人間なのだ。カスハラは上野さんにとって大きなストレスとなっている。上野さんの妻である優子さん(40代・女性)が話す。

「夫は、クレームの対応に追われた日はいつも疲れた顔で帰ってきていました。繁華街にあるインバウンド向けの大型店舗に勤務しているので、コロナ禍初期から外国人の旅行者の接客をしていました。また、買い占めやクレーマーが話題になった時は、その相手をして……。普段はあまり仕事の話をしない夫が時々ぼやくので、とても大変そうだなと思っていました。緊急事態宣言下でも店を閉めることなく頑張り続けてきたドラッグストアの店員さんたちも評価されてほしいですね」(優子さん)

上野さんは去年1年間を振り返り、「どうか相手の立場になって考えて」と訴える。

「私たちも売れるものなら皆様にお売りしたいのですが、入荷の関係でどうしても無理なこともあります。現状を正しく把握して自己中心的な考え方をやめていただければと思います」(上野さん)

上野さんは理不尽な要求に耐えながらも、「自分の仕事がみんなを助けている」「人助けをしている」という自負を持って今日も働いている。<取材・文/星谷なな>

【星谷なな】

5歳の頃からサスペンスドラマを嗜むフリーライター。餃子大好き26歳。 たまに写真も撮ります。Twitter:@nanancypears

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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