鈴木浩介が『ほんとうのハウンド警部』を語る~「トム・ストッパードは本当にヤバイ! でも面白い!」

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シス・カンパニーが、2021年3月5日(金)~3月31日(水)、東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンにてイギリスの劇作家トム・ストッパードの戯曲『ほんとうのハウンド警部』を上演する。

『ほんとうのハウンド警部』は1968年にロンドン・クライテリオン劇場にて初演。「劇中劇」のからくりを、物理的にも心理的にも緻密に絡み合わせ、当時の観客の度肝を抜いたと言われる、斬新な戯曲。現代英国演劇界の至宝とも称されるストッパードのブラックでシニカルな感覚が冴え渡る作品だ。小川絵梨子演出のもと、本作を演じるのは、生田斗真、吉原光夫、趣里、池谷のぶえ、鈴木浩介、峯村リエ、山崎一という実力派の面々。今回SPICEは、鈴木浩介に話を聞いた。


――この作品に出演が決まった時のお気持ちと、台本を初めて読んだときの印象からお聞かせください。

2020年12月に三谷幸喜さん演出作品に出演させていただいたのですが、その後、あまり間を空けずに新しい芝居の稽古が始まる、また舞台の上に立てる、ということが素直に嬉しかったです。でも戯曲を読んでみたら、もちろん面白かったんですが、なにしろ構造が複雑で難しくて(笑)。もっと読み込まないと、と思いました。劇中劇を演じる役者と、劇中でそれを観るお客さんとしての役者と、劇の外から全体を見る本当のお客さんの存在があって。またその劇中劇自体も面白くなければ物語としてはハネない訳です。そこは三谷さんが演出されたニール・サイモンの『23階の笑い』にも共通するところですが、ストッパードはそのあたりをとても丁寧に書きこんでいると思いました。なんなら劇中劇だけを観ても楽しめるんじゃないか?とも思ってしまうくらいです​。

――この作品の台本を私も拝読したのですが、一度二度では読み解けなくて。面白いけれど複雑で難しい作品だなって思いました。また冒頭のト書きが膨大な長さで(笑)。

そう! あんなに長いト書きから始まる戯曲は初めてですよ。ト書きだけで難しいよ、分かりづらいよって気分になりましたね(笑)。でも、それがその後の面白さにつながっていくんです。当然、原語での面白さを、日本語でどう表現していくかの難しさもあると思いますが

――この作品に限らず、翻訳劇だからこそ難しく思うことは何だと思いますか?

その作品がずっと前に書かれたものだとしたら、当時の時代背景や、当時のお客さんたちがビビットに反応していた内容を、日本の現代のお客さんにどのように伝えられるのか、そのあたりは演じながらも難しいと思うところです。でも、そういう壁を乗り越えて、あるときには、歩み寄りながら、現代のお客さんにどのように伝えていくかが課題だと思っています


――その一方で、翻訳劇ならではの良さ、面白さもあると思うのですが、その点はいかがですか?

「翻訳劇」ってどこか絵本を見ているような魅力があると思うんです。例えば『23階の笑い』であれば、1950年代当時のアメリカに連れて行ってもらえるような感覚になります。僕は子どもの頃、アメリカのTVドラマ『奥様は魔女』をよく観ていたんですが、日本のドラマを観ているときよりも、なんだか単純に楽しかったんですよね。ああ、アメリカってこういう暮らしなんだぁ、とか思いながら見ていました。また昨年春に予定されていた『桜の園』では、KERA(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)さんが素晴らしい演出でチェーホフの世界をお客様に見せてくれるはずでした。となると、海外戯曲自体の面白さに加えて、翻訳戯曲を演出家がどのように調理して提供してくれるか、にもかかってくるのだと思います​。

――その大事なキーマンとなる演出を『ほんとうのハウンド警部』では小川絵梨子さんが務めますね。

それが今から本当に楽しみで。素晴らしい評判しか聞こえてこないですからね、小川さん。新国立劇場の芸術監督を務めていらっしゃるし、次世代を代表する演出家と初めてご一緒できることにワクワクしています。とても自由に、そして丁寧に役者とコミュニケーションを取りながら稽古を積み重ねてくださるのではないかと楽しみにしています。

前新国立劇場芸術監督の宮田慶子さんには青年座の研究生の頃、演劇の基礎から徹底的に教えていただきました。その宮田さんが芸術監督として最後に手がけられた『消えていくなら朝』に、僕も出演させていただきました。その宮田さんから芸術監督のバトンを受け取ったのが小川さんですから、そういうご縁という意味でも小川絵梨子さんの演出を受ける事を楽しみにしています。

――その小川さんが腕を振るう本作では、ステージの作り方も気になりますね。劇中劇を見せる場所、それを劇評家役の生田斗真さんや吉原光夫さんが観劇する場所、という風に分けて作るとは思うのですが、それも途中から二つの世界が入り混じる事になるでしょうから。

またあの二人が、芝居を観ながらよく喋っているんです(笑)。ト書きに「そこは良しとしよう」みたいに書いてあるんですが、おいおい、本当に良しとしていいのかって(笑)。

――観劇中はお口チャックで!って思いますよ、本気で(笑)。

本当に不思議な戯曲ですよね(笑)。僕が演じる役は劇中劇の中のキャラクターなんですが、どういう人物にしていくのがいいのか、まだまだ戯曲を読み深めていかないと、と思っています。小川さんともいろいろ相談したいですしね。ネタバレになるといけないので詳しくは言えませんが途中からあんな事やこんな事になりますし……ほんと、トム・ストッパードはヤバイですよ(笑)! でも面白いです​。

――共演者についてもお伺いします。生田さんとは初めての共演なんですよね?

ええ。劇場で挨拶したくらいですが、本当に楽しみですね。趣里さんとも初共演です。そして山崎一さんと吉原光夫さんはまさに『23階の笑い』から続いての共演なので気が楽ですね(笑)。


――鈴木さんの目から見た山崎さんと吉原さんは、芝居の中ではどのような存在感を放つ方ですか?

いやあ、もう、まず一さんは、今、日本で一番上手い役者さんなんじゃないかなって思うんです。どんな役もできるし、今までの経験、実力、そして気力と体力のすべてがいい具合に揃っていて、「脂が乗っている」って、こういうことを言うんじゃないですかね?

そして吉原さんも、何といっても存在感がすごい!「ジャン・ヴァルジャン」ですから! ただ、あのヴァルジャンは人見知りで、でも打ち解けると実にお茶目なんです。最初は少し恐そうに見えるところもありますが(笑)、真面目な方で、心のどこかにお茶目さがあるので、舞台に立った時にそれが実にチャーミングに見えるんですよ。

――そんな顔ぶれが揃うこの作品、3月の上演が待ち遠しいですね。

ええ、いまは演劇をやる事がかなり難しい状況になってきていて、まだ開幕まで何が起きるか、誰にも分からない状況です。でも、僕たちは、まずはお客様にご覧いただける状況に持っていく事、そしてちゃんと幕を開けて、幕を下ろす事に集中していきたいですね​。

――最後になりますが、西田敏行さんにあこがれてこの世界に入られたという鈴木さん。役者生活も20年を超えて、今後どのような道を歩いていきたいですか?

僕は演劇が大好きなので、間を空けずに舞台に立てる状態でいるのが夢です。なんなら1年に6本舞台に出たいくらい。稽古して本番やってまた稽古して本番と……それで1年埋まりますからね。でも6本は言い過ぎか……1年に4本くらいでもいいです(笑)​。


取材・文・撮影=こむらさき

当記事はSPICEの提供記事です。

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