中国に配慮? 「“自由で開かれた”インド太平洋」の文言変更、政府の意図は

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意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「自由で開かれたインド太平洋」です。
■ 中国に配慮し、姿勢に変化の兆し。説明を求む!

「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」とは、2016年のアフリカ開発会議で当時の安倍総理が提唱した構想です。法の支配のもと、航行の自由、自由貿易の普及・定着。質の高いインフラ整備を通じて、連結をもって経済的繁栄を追求する。海上法執行能力の向上支援、防災などを含む、平和と安定のための取り組み。これらを構想の実現に向けた三本柱にしています。

そもそもこの構想が生まれた背景には中国の台頭がありました。中国は2013年に国家戦略として「一帯一路」構想を掲げました。陸路と海路の両方で、ヨーロッパやアフリカまで貿易圏を広げようとする中国にとって、太平洋はアジア・アフリカに抜けていくための大事な航路。しかし、そこには沖縄(日本)、台湾、韓国があります。そこで日本に対しては尖閣諸島問題でプレッシャーをかけ、南シナ海には人工島を作り、中国の領土であると主張。これに対して、安倍前総理はオーストラリアやアメリカなどの国々と、「自由で開かれた海にしましょう」「特定の国が強力な武力で圧力をかけるようなことは許しません」ということを暗に示したんです。2017年にはトランプ政権が発足し、アメリカもこれに賛同。米中の対立が高まるなか、FOIPは存在感を増していきました。

ところが昨年11月、菅総理は公式の場で「平和で繁栄したインド太平洋」という表現を用いました。「自由で開かれた」が、「平和で繁栄した」に変わっていた。これは中国に配慮した発言ではないかと物議を醸しました。

中国はカンボジア、スリランカ、パキスタン、ミャンマーでも港の開発を進めています。一見、民間企業の開発に見えますが、中国軍が利用する可能性もある。昨年9月、アメリカ政府は、カンボジア南部で開発を進めた中国企業に対して、人権侵害を犯していると経済制裁を行いました。日本は中国の強権に対して、欧米諸国のように強い抗議を示していません。日本にとって中国は大事な市場ですが、もしも中国との間で何らかの約束を交わし、スタンスを変えなければいけなくなったのなら、政府はきちんと説明をする必要があると思います。

堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。映画『わたしは分断を許さない』が、2/5までポレポレ東中野でアンコール上映中。

※『anan』2021年2月3日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

当記事はananwebの提供記事です。

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