「から揚げの天才」店舗急増で話題。テリー伊藤とワタミがコラボした理由

日刊SPA!

―[あのすごい企業の「中の人」に聞いてみた]―

日常に何気なく溶け込んでいる商品やサービスの裏には、知られざる逸話や並々ならぬ努力が隠されていた……。そんな“実はスゴい”エピソードを持つ企業を紹介する連載企画第1回目は、現在“すごい勢い”で出店数を伸ばしているワタミグループ(本社/東京都大田区)の新業態「から揚げの天才」にスポットを当てる。

◆テリー伊藤氏とワタミグループがコラボしたきっかけ

大分の中津から揚げや北海道のザンギといったB級グルメブームに端を発し、から揚げ専門店が全国へと広まって、はや数年。いまや定番として確立されつつあるから揚げカテゴリーにおいて、異端児的な存在感を放つチェーン店「から揚げの天才」が、急激に店舗数を伸ばしている。

その店頭には、いつもの毒気をすっかり抜かれてキュートさが全開になったテリー伊藤人形が立ち、「○○(出店地域名)のみなさーん! テリー伊藤でーす! 待たずにお渡し! スマホからも注文できますよー!」と本人の陽気な音声が流れる。出店した各地域では、「どうやら、テリー伊藤がから揚げ店を出したらしいぞ」との声でもちきりなのである。

看板メニューは、握りこぶしほどあろうかという特大サイズ(60グラム)のから揚げ「デカから」(1個 税別99円)と、「テリー伊藤こだわりの玉子焼き」(1本 税別650円)だ。実家が老舗の玉子焼き屋であるテリー伊藤氏が監修したオリジナルの玉子焼きはしっとり甘く、から揚げと合わせて“親子”での販売戦略ということになる。同店誕生の経緯について、ワタミ株式会社から揚げ営業部部長の川本治氏に聞いた。

◆から揚げの天才はラジオ番組から始まった

「まず、どうして弊社とテリーさんが? と首をかしげる方もいらっしゃると思いますので、そこから説明をさせていただきますね。『から揚げの天才』プロジェクトは、弊社グループ会長の渡邉美樹がパーソナリティを務めるニッポン放送のラジオ番組『渡邉美樹 5年後の夢を語ろう!』から始まりました」

もともと同番組は政治家や学者をゲストに迎える構成だったが、「ちょっと固いんじゃない?」と渡邉美樹氏に知恵出ししたのが、テリー伊藤氏だったという。

「その流れもあって、2018年2月から『笑顔で突撃!! テリー伊藤、大社長への道~!!』というコーナーが始まったんです。ここでの2人のトークがきっかけで、『から揚げの天才』プロジェクトがスタートしました」

かねがねフランチャイズビジネスを始めたいと考えていたテリー伊藤氏に対し、起業家を応援するのが大好きな渡邉美樹氏は、ならばと大社長になるための本気の経営塾をやろうと決意。その後、紆余曲折を経て、テリー伊藤氏を看板にしたから揚げ店が立ち上がったというわけだ。

◆テイクアウト需要の増加と出店戦略が合致

もっとも、2018年11月に大田区内に1号店である梅屋敷店をオープンし、約1年後の2019年10月時点ではまだ直営店3店舗にとどまっていた。ようやくフランチャイズ1号店ができたのは2020年2月で、当初の出店スピードは緩やかなものだったという。これが一気に加速したのは、今年5月頃のことだ。

「6~7月は月20店舗前後のペースで出店し、12月上旬には全国に70店舗を超える規模に。関東エリアだけでなく、大阪、京都、兵庫、愛知にも進出しています。コロナ禍でテイクアウトと中食の需要が高まってきたところで、一気に出店を進めるかたちとなりました。新店がオープンした際には、近隣さまへのご挨拶も兼ねて、テリー伊藤さんにみずから足を運んでいただいています」

コロナ禍にあっては多くの飲食店が閉店に追い込まれたが、その空き物件を埋めるようにテリー人形と本人が街にやってきたというわけだ。

「居抜き物件を狙っているように見えるかもしれませんが、それは結果的にそうなっただけで、すべては立地条件ありきの出店戦略です。これまでの居酒屋業態では乗降客数の多い駅前の一等地を攻めてきましたが、『から揚げの天才』では打って変わって、住宅地やベッドタウンにある商店街が主戦場です。1号店を出した梅屋敷も、京急蒲田という大きな駅の隣の、各駅停車しか停まらない駅の商店街ですからね。また、テリーさんの気持ちとして、昔ながらの商店街を元気にしたいという思いもあり、そうした点も踏まえて出店先を検討しています」

◆コロナによってワタミグループも業態の転換を迫られた

コロナ自粛により大人数での会食の機会が減ったことで、ワタミグループの主力である居酒屋業態も大打撃を受けた。苦境打開の一手として、居酒屋業態のうち、3割ほどの店舗を焼肉店に転換していく方針だ。

「『焼肉の和民』への転換もそうですが、今後、会長の渡邉は居酒屋そのものの市場が縮小すると考えており、ほかの芽を考えないわけにはいきません。居酒屋で培ったノウハウをどう活かすかを考えたときに、居酒屋業態では必ず人気ベスト5に入る、から揚げに特化した専門店で勝負をしたということです。『から揚げの天才』、『焼肉の和民』、韓国のフライドチキン『bb.qオリーブチキンカフェ』、これら3つを、グループの事業の柱として育てているところです」

コロナによるテイクアウト需要の増加、住宅街を中心とした出店計画が見事にハマッたから揚げの天才。だが、人気の秘密はそれだけではない。そこには乱立するから揚げ専門店と差別化を図るための秘策があった。その秘策の裏には外食チェーンで培われた“当たり前のこと”があった。(※近日公開予定の後編に続く)

―[あのすごい企業の「中の人」に聞いてみた]―

【松嶋千春】

様々なメディア媒体で活躍する編集プロダクション「清談社」所属の編集・ライター。商品検証企画から潜入取材まで幅広く手がける。

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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