【Editor's Talk Session】今月のテーマ:360度ビジネスを展開する経営者が見たコロナ禍における音楽シーン

OKMusic

音楽に関するさまざなテーマを掲げて、編集部員がトークセッションを繰り広げる本企画。第14回目のゲストは、東京・大阪・福岡・沖縄で計30店舗のライヴハウスやカフェ&レストランを経営し、音楽プロダクション&レーベル、さらにライヴ配信サービス『サブスクLIVE』の運営やサーキットイベント『TOKYO CALLING』も手がける株式会社エル・ディー・アンド・ケイ(以下、LD&K)の代表取締役・大谷秀政氏。いち早く360度ビジネスを展開してきた経営者の視点から、深刻化するコロナ禍における音楽シーンを語ってもらった。

座談会参加者

\n■大谷秀政
ガガガSP、かりゆし58、打首獄門同好会、日食なつこ等所属のレコード会社LD&K代表。宇田川カフェなど飲食店の他全国ライヴハウスなど30店舗経営。DJ皆殺し。

\n■石田博嗣
大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP’s&OKMusicに関わるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。

\n■千々和香苗
学生の頃からライヴハウスで自主企画を行なったり、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP’s&OKMusicにて奮闘中。ディズニーとドラマが好き。

\n■岩田知大
音楽雑誌の編集、アニソンイベントの制作、アイドルの運営補佐、転職サイトの制作を経て、music UP’s&OKMusicの編集者へ。元バンドマンでアニメ好きの大阪人。

■飲食店にお金を配るよりも 医療へ向けて配るほうが良かった

千々和
「1月7日に緊急事態宣言が再発令されましたが、この事態を率直にどのように受け取られていますか?」

大谷
「緊急事態宣言と言っても基本的に飲食店の時短営業ですもんね。昨年の4月に出た緊急事態宣言に比べれば緩いというか、微妙な感じで。映画館や学校は止めないから緊急事態じゃない気がする。個人的な見解としては、緊急事態宣言は医療機関が切迫してるからでしょ? とはいえ、前回から半年以上経っていて、そこでなんとかできなかったというほうが問題でしょうね。こんなに細かく給付金を配るくらいなら医療機関に集中すれば良かった気がするし。医療だけでなく、他の業界も事後に保証ができないから、医療だけ保証することはできないと国が言ったことも問題ですよね。最前線で頑張っている医療を守らないと国が言ったことが。“絶対に病院は潰しません”と国が言ってくれれば、民間医療機関も頑張るんですよ。民間医療機関も患者を受け入れればベッド数も増えるはずだし。そこを直せば状況は良くなるし、今回の緊急事態宣言の根底にある医療切迫については大丈夫だと思うんですよね。それをこの半年で対処できなかったことのほうがでかいんじゃないかな? 飲食店に細かくお金を配るよりも医療へ向けて配るほうが良かったと思いますね。」

石田
「もちろん切迫しているからなのですが、分かりやすいところにお金を配った感じはありますよね。」

大谷
「そうなんですよね。それさえなんとかしてくれれば、感染者は今のところそこまで大した数じゃないんで。ワクチンが出るのを待っているというのもありましたけど、キリがないし。」

石田
「ワクチンは人に抗体を作るだけで、世界からコロナがなくなるわけではないですからね。」

大谷
「今回の宣言は飲食店が時短なだけだし、一般の方はそんなに変わりないかもしれないですよね。昼は普通にみんな動くから、飲食店だけ狙われている感じがして微妙だなと。飲食店からクラスターが出ているのは分かりますが、これで潰れちゃう店も結構あるんじゃないかな? 昨年の春に宣言が出た時、政府がお金を貸してくれてるから借りてますけど、たぶんみなさん年内いっぱいの資金しか借りてないんですよ。ここまでコロナ禍が続くと思ってなかった人が多いだろうから、資金繰りをしていても年越しまでは考えていなかったと思う。」

千々和
「半年前から飲食業界でもUber Eatsが流行ったりしていますが、実情は変わっていないのですか?」

大谷
「変わってないところもあるし、変わってるところもありますよね。日々変わるから全ての情報を集めて、その中から即時に冷静に判断しなければならないので、それができるかできないかだと思います。そこが非常に頭を使うところで、この一年は柔軟性を求められていた気がしましたよ。」

石田
「体力をどこで使うかということですね。資金繰りだけに体力を使っていたら持たなくなるし、しっかりと未来を見据えていないと疲弊していくだけというか。」

大谷
「そうですね。飲食業界だけじゃなくて、他の業界も非常に心配ですよね。それぞれ生き延び方が違うと思うけど、そこはとてもテクニカルな問題になってくる…って、経済誌に載せるような話ですね(笑)。」

石田
「大谷さんの場合はレーベルやマネジメントだけじゃなく、ライヴハウスや飲食店の経営もやられているから、コロナ禍の影響を大きく受けていますよね。」

大谷
「もろに受けています(笑)。全部が全部そうですからね。僕は30年も経営をやってますが、今より10年歳をとっていたら気力的に危なかったと思うんですよ。要するに借金をどれだけするかなんで、借金をして返すということをどこまで頑張れるかだから、“この歳で借金したくないよ”ってギブアップしかないじゃないですか。そこはまだ元気なんで大丈夫ですね。」

■天井以上に売上を伸ばすには 必然的に配信になる

石田
「まだ元気だからこそ、このコロナ禍の中で新たなライヴハウスをオープンしたのでしょうか?」

大谷
「いえ、既定路線だったんですよ。LD&KのライヴハウスはCHELSEA HOTELが一番最初でまだ18年くらいですけど、この10年くらい新しいライヴハウスを建てていないんですね。実はライヴハウスの経営が一番安定しているんです。そこまで損もしないし、得もしない。しかも、LD&Kはレーベルなので新人開発をしなくちゃいけない。なので、新人開発の意味を含めてライヴハウスの経営をやってるんです。だけど、最近新しい店舗を出していなかった…カフェやいろんな料理屋さんばっかりで、一番安定するライヴハウスを10年も出してなかったのかという話になったんですけど、ここ3年くらいオリンピック前で景気が良くて家賃がすごく上がっていたんです。渋谷も再開発されたから1.5倍くらい上がっていたし。あと、飲食業界がこの3年くらい人手不足だったのと、工事代金がオリンピックの影響で高かった。いわゆる新規出店に関する悪い3大条件が揃っていたので出店を控えていたんです。飲食店は何店舗か出していたんですが、ライヴハウスは自重していた。オリンピックが終われば、また不況が来ると思っていたから不況下待ちをしていたというか。不況になると人が余るし、工事代も下がるし、好都合なんですよ。そうやって不況待ちをしていたら、コロナ禍で不況が始まり、いい物件が出てくるようになり、新店を出したんですね。だから、もともとの既定路線なんです。コロナでやけっぱちになっているわけではなくて(笑)。」

石田
「そういう流れがあったんですね。」

大谷
「予定通りでした。いわゆるCDなど音源のコンテンツが稼げなくなった…無料で聴けちゃったりして。もともとLD&Kはインディーズレーベルと事務所なので、どこよりも早く360度で音楽業界のビジネスに対応できたんです。ここ10年くらいで360度と言われるようになりましたが、LD&Kがおそらく一番最初にやったと思っています。そこを考えると、音源コンテンツが売れなくなって市場がシュリンクしていく中、ライヴ業界だけがずっと右肩上がりだったんで、ライヴハウスを作るというのは経営者として当然の判断ですね。で、コロナ禍の前から『サブスクLIVE』という配信のプラットフォームをリリースするという話もあったんですよ。でも、ライヴの現場にずっと前から配信もしたいと言ってたんですけど、“儲かってるから今はいい”と断られ続けていて。“配信は大変だからやらなくていいでしょ”って言われてたけど、コロナ禍になったことで“やってみよう!”ということになったんです。」

石田
「大谷さんは早い段階から配信がひとつのツールになると思われていたんですか?」

大谷
「現在は移転しましたが、宇田川カフェが空中階にあった頃、同じビルにシアターDというお笑いの劇場があって、その劇場が移転する時に“大谷さんも経営に参加してくださいよ”と言われていて。吉本興業さんはルミネtheよしもととかの劇場はあるけど、他の事務所からお笑いの劇場がないという相談があったんですね。お笑い芸人さんはギャラが少ないという噂もあったし、僕はお笑いのファンは全国にいるだろうから、お笑いのライヴを箱でやって配信もすることで、少しでも収益を上げて芸人さんに還元する仕組みを作ろうと思ったんです。お笑いって座って観るからキャパシティーがそこまで取れないので、なかなか採算が合わないんですよ。そうすると、リアルのお客さんプラスアルファで売上を上げるにはどうしたらいいかを考えないといけないわけで、そこで配信だと。」

石田
「その構想が『サブスクLIVE』につながっていくんですか?」

大谷
「そうです。ライヴハウスも結局はキャパシティーまでが売上の限界なので、それ以上は当たり前に伸びないじゃないですか。経営者として天井以上に売上を伸ばすにはどうすればいいかを考えると、必然的に配信になりますよね…という話です。」

■ライヴに行きたいけど 行けない人が意外と多い

岩田
「ライヴのサブスクはもとの構想でお持ちだとうかがえましたが、ライヴハウスの新規出店も同時でやろうと思われたんですか?」

大谷
「LD&Kは音楽事務所でもあるので、今回福岡に事業所を増やしたんですね。沖縄にはもともとあるんですけど、沖縄や福岡のバンドを東京まで呼ぶのが大変で…しかも若者なので、自腹で来てもらうのはなかなかハードルが高くて。だから、こっちから出て行かないと。やっぱり地元に基地みたいなものがないとまずいかなって。かりゆし58とか沖縄を中心に活動するアーティストも増えてきたから沖縄で現地採用もしているので、それもあって福岡に営業所を増やすことにしたんです。なので、LD&Kは地方も含めて新人開発に関して整っていると思いますよ。『TOKYO CALLING』などのサーキットイベントをやってるんですが、あれも新人開発のためなので。」

千々和
「『サブスクLIVE』のアナウンスがあった時、まだ他のライヴハウスは配信に目もくれてなかったと思うので、行動がすごく早いと感じました。」

大谷
「『サブスクLIVE』はコロナ禍の前に発表しようと思ったんですが、緊急事態宣言でロックダウンしちゃったから配信もできなかったし、バンドも集まれなかった時期があって、実は発表がだいぶ遅れちゃったんですよ。本当は3カ月前には告知できてたんです。その頃は家からでしか配信ができないってなってしまって…あの、星野源さんがしてたやつですよね。あれで配信の需要が伸びた気もします。」

千々和
「スタジオやライヴハウスが営業再開してからは、独自で配信をやる人たちも増えてきて、大谷さんが思っていた流れと違っていたと思うのですが、その点はいかがですか?」

大谷
「だからこそ、『サブスクLIVE』の発表が遅れちゃったのが残念でした。コロナ禍前にアナウンスできていればもう少し配信ライヴ事業を仕切れてたと思うんですけど、発表した時にはいろいろなところがやってましたから。“ほらほら~”って思っていましたよ(笑)。まぁでも、ある程度のところで落ち着くんじゃないですかね。もともとリアルのライヴが復活した時のプラスアルファくらいにしか考えていなかったし、配信がメインになるとは思っていませんから。僕的にはコロナが落ち着いてくれれば、リアルのライヴと配信でのほんの少しのプラスがあればいいと思っています。LD&Kとしては打首獄門同好会が無料配信ライヴをかなり早い段階でやりましたが、あの時に視聴者から“やっとやってくれましたね!”という声をたくさんもらったんですね。ライヴに行きたいけど行けない人が意外と世の中に多いということを、みんな見失いがちなんですよ。行きたくても地方だから行けないとか、子供が小さいから行けないとか、物理的に行けない人が多い。そういう人たちから“やっとライヴをリアルタイムで観れた”と言われたことで、このようなマーケットがあるんだなと思えましたよ。そのマーケットがあることが知れたので、無料配信をやって良かったですね。だから、配信はないよりもあったほうがいいと思っています。ちなみに『サブスクLIVE』に関しては、もともとスポーツ配信をしているチームを使っているので、こちらから出向かなくてもサッカーチームがあるところには現地のクルーがいるんですよ。そこに遠隔で録ってもらっているんです。動く人を録るチームだから撮影がうまいんですよね。」

石田
「配信ライヴはカメラのスイッチングだったり、画像の切り方がうまいものとそうでないものの差が出ますよね。」

大谷
「クオリティーが違いますよね。そういう意味では、『サブスクLIVE』はクオリティー重視なんですよ。ソフトバンクさんとのVRに向けたプロジェクトでもあるし。ソフトバンクさんが協賛してくれて、撮影チームは無料で手配できているんです。そんなプロジェクトと協力してライヴハウスを助けようという施策なんでね。今、携帯電話の各社が5Gのシェアの取り合いで競争しているんですよ。5G時代のVRのマーケットシェアを取り合っている。VRとの親和性が高いのはスポーツもなんですが、スポーツは専門チャンネルがたくさんあるんですよね。でも、音楽のライヴシーンはまだ浮いているんですよ。メジャーレーベルが配信に尻込みしているんで。それはなぜかと言うと、ライヴ配信は契約の問題があって、アーティストとの契約の中でレコード会社は専属録音権しかなく、ライヴの仕切りは事務所なんです。でも、録画して放送しちゃうとレコーディングになるんで、レコード会社からすると権利を取得したくなる。だから、アーカイブを禁止にしているメジャーレーベルも多くてね。アーティストそれぞれの問題ですけど、その考えって古いと思うんですよね。まぁ、ライヴ配信をする前提で契約はしてませんからね。そういう意味では、LD&Kは事務所兼レコード会社だから大丈夫なんですよ。それもあって、メジャーが配信をやらないからソフトバンクさんがLD&Kに相談してきたという。ライヴハウスを何店舗も仕切ってるし、事務所もレーベルもやってるのはLD&Kくらいしかないと。その結果、ソフトバンクさんの協賛のもと、今アツいアーティストの選定は僕たちがやって運営をしているんです。」

石田
「360度でビジネス展開していたのが全て結びついて、さらに他の企業を巻き込んで立体的になった感じですね。」

大谷
「LD&Kに関しては特殊な会社なので。コロナ禍でいろんなライヴハウスがなくなっちゃうかもしれないけど、ある程度はLD&Kで拾っていけるんじゃないかと思ってます。」

■事務所に対する想いが 強くなってくれたと感じている

千々和
「下北沢シャングリラをオープンされましたけど、それはどのような経緯だったのですか?」

大谷
「サーキットイベントをやってることから、ほとんどのライヴハウスとつながりがあるんですね。ライヴハウスが閉店することになるとオーナー以外は仕事がなくなってクビになっちゃうから、ライヴハウスを運営する人から“LD&Kさん、どうにかなりませんか?”と相談が入るんです。火事場泥棒みたいなのは嫌だから自分からは話に行かないんですけど、そういう相談が入ったら、まず物件はどうなってるのかを訊いて。人員だけ雇うのは僕たちもコロナ禍で営業停止している店舗があるから難しいので、物件ごとなら買い取るっていう話をしています。その際、スタッフも含めて全員そのままで受け取っているので、下北沢シャングリラもそれに近い流れですね。だから、言われないとやらないけど、相談を受けると大体やっちゃいます(笑)。」

石田
「潰れるライヴハウスが大谷さんのところに助けを求めにきたとしても、大谷さんはノウハウがあるから次のアクションがすぐに取れるんでしょうね。」

大谷
「コロナウイルスに関しては初めてのことなので、そこでしっかりとした判断ができないと、さすがに今回は潰れちゃいますよ。僕たちも分からないですから、もっと長引くと。なんとなくですが、きっとワクチンができてもコロナが終息することは絶対にないと思うんです。みんなの気持ちの上での“終息”であって、終わるではなく自体が“収束”するという意味で気持ちが収まれば終わるんですよ。みんなずっと続くと思ってないから。ずっと続くと思ってないということは、このままではないし。そういう気持ちがあれば終わりに向かっていくはずですよ。僕はこの1、2年で辞めちゃうというのがもったいないと思ってる派で…だって、ライヴハウスをゼロから作ると、その1、2年の家賃以上にお金がかかるわけですからね。そのバランスを考えた時にもう一回作り直すことを考えたら、ダメでも維持することを選びますよね。まぁ、年齢にもよるかもしれませんけど。僕ももっと歳がいってたら考えないかもしれないし、単なるメンタルの問題な気もします。」

千々和
「事態は深刻だけど、あまり深刻に考えすぎずに判断するのがひとつの切り口なのかもしれませんね。」

大谷
「考えすぎたところで良くはならないですからね。」

岩田
「その考えが昨年ライヴハウスを作ったり、『サブスクLIVE』を始めたことにつながるのかもしれませんね。第三者から見てLD&Kが音楽業界を盛り上げてくれているという印象がありました。」

大谷
「でも、そこは既定路線ですからね。物件が出てきたので取りかかれた感じでした。リアルな話をすると、ダメだった場合は潰れるんですよ。倒産…つまり、僕が破産するわけですよね。その時は負債がどれだけあっても同じなんです。だったら、やらないよりはやったほうがいいじゃないですか。僕がひとりで会社を経営してるならいつでも辞められますけど、従業員のみんながいますしね。LD&Kでしか働けないような人が何人かいますから(笑)。」

石田
「でも、そこですよね。大谷さんのその気持ちが、“社員はひとりも辞めさせない”という経営理念っていうか。一般的な企業の経営者は人員削減をして会社の存続を考えると思うので。」

大谷
「辞めなくていいなら辞めてほしくないですからね。だって、キリがないじゃないですか。“その範囲はどこまでなんだ?”って。それを考えるのも精神的に堪えちゃうんですよ。考えると暗くなっちゃうので、どうせなら考えずに進みたい。」

千々和
「社員の方もたくさんいて、ライヴハウスのスタッフやアルバイトの方もいるので、メンタルとか心配された部分もあったと思うのですが。」

大谷
「それはありましたね。できるだけ、心配にならないようにしてほしいと思っていました。でも、落ち込んじゃう人はどこにいようが落ち込んじゃうんですよね。」

岩田
「それこそアーティストに対しても心配されていたんじゃないですか?」

大谷
「LD&Kはそんなに影響がなかったと思います。コロナ禍になって意外と状況が良くなったんじゃないかな? 結束力じゃないけど、事務所に対する想いが強くなってくれたと感じています。そんな気がしていますね。」

■レコード会社は いらなくなるかもしれない

岩田
「ライヴ配信はかなり前から着眼されていたということですが、音楽業界という大きな視野で2020年は大谷さんにとってどのように映りましたか?」

大谷
「これは音楽業界に限らずですが、変化のスピードが上がりましたよね。その中でも音楽業界は特に動きが遅いと思っていたから。僕が新規の業界に参入するのは既存の業界に問題があると思った時…音楽業界で言うなら、LD&Kの創業期はバブルが崩壊した時ですけど、やっぱりどこかおかしいと思っていたんですよ。いつもライヴをすると大名行列みたいにメーカーの人とか8~10人とか来るんで、“この人たちは何をしてるんだろう?”と感じていて。当時はCDが3万枚以上売れないと契約を切られちゃうみたいな感じだったんですけど、今ではあり得ないですよね。僕がショックだったのは、エレファントカシマシが一番最初のメーカーをクビになった時で。彼らも3万枚売れなかったからなんですよ。それの話を聞いて“ちょっと待てよ! エレカシをクビにするなんて!”という衝撃を受けて、“じゃあ、レコード会社は何をするところなんだ?”と思ったんです。そういうのを見ていて、絶対にこれはおかしくなると感じたというか。“余計な人がいっぱいいるからじゃないのか?”って。アーティストには関係ないことですからね。周りにいる人が3人だろうが20人だろうが変わらないわけで、実際に仕事をしてくれている人はそんなにいないし。そういうスタンスでLD&Kをやってるところはありますね。」

岩田
「先ほど変化のスピードが上がったとのことでしたが、どの点に変化があったと思いますか?」

大谷
「例えば、日本のイノベーションで言うと、中間に立つ企業が一番潰れるんです。だから、今や問屋や取次の流れが無駄に感じますよね。あと、音楽なんて、今はハードよりもソフトのほうがサイズがでかいんですよ。それがちょっと分からないし、ずっとすごく無駄なんじゃないかと思ってて。例えば、洋服ブランドの店舗に行くと、欲しいものがなかった時に近隣の店舗が持ってきてくれるんです。でも、レコードショップはある店舗で品切れたからバックオーダーがあって、他の店舗からは返品があるんですよ。“何をやってんだ?”と。せめて同じ法人の中では商品を回してくれって。メーカーに発注すれば商品を簡単に送ってもらえると考えていると潰れますよね、この業界は。エコじゃないし、まず無駄だから。」

岩田
「そう考えると、配信というのが一番合っていると。」

大谷
「そうなるべきだし、それがイノベーションだと思う。まぁ、どんどんシンプルになってくるんじゃないですかね。」

石田
「もともとメーカーってプレイヤーを作っていて、それを普及させるためにソフトとしてレコードを売っていたが、時代が変わってプレーヤーがなくなり、音源がデータになったというの流れはありますね。」

大谷
「それは歴史的にずっと変わってきてることじゃないですか。例えば、アルバムが尊重されている時代もあったし、その前はテレビの歌番組からの流行歌の時代で、ラジオしかなかった時代は流行りの曲はラジオをきっかけに生まれて。その時代時代で変わるのはおかしくないんですけど、その変化に対してみんな少しブレーキがかかるんですよ。少し前の時代がいいとされているから。その考えはそこまで必要ないと僕は思ってますけどね。やっぱり時代時代のイノベーションに合わせていかないと。なんでそう言えるかと言うと、僕は圧倒的に音楽を信じてるからなんです。音楽は絶対になくならない。そう信じているから、僕はどうなっても構わないと思っています。LD&Kは事務所もレーベルも全部やってますからね。ただ、レコード会社はアーティストが自分たちで全てをやるようになってしまったら困るでしょうね。レコード会社でできることがなくなってしまう。まぁ、アーティストの身の回りのケアとかで、エージェントは必要かもしれないけど。」

石田
「もうすでにアーティストは自分で曲を作って、そのまま配信もできてしまいますからね。SNSを使ってプロモーションもできてしまうし。」

大谷
「できちゃいます。なので、そこの進化がスピードアップしていくんじゃないですかね。」

岩田
「コロナ禍を抜きにしてもライヴ事業はこれからも力を入れたいと思われますか?」

大谷
「ライヴはなくならないと思いますね。なくなるとは考えずらい。アーティストとお客さんが直接だからシンプルだし、そこまで中間が入っていないし。よりダイレクトな時代に変化すると考えても、ライヴは削ぎ落とす部分がないんじゃないかな?」

石田
「配信ライヴが多くなって、生ライヴの貴重さや大事さがより浮き彫りになった気もします。」

大谷
「ライヴはドキュメントですからね。ドキュメントって追いたくなるからライヴはなくならないと思いますよ。音源はいろんなかたちになるだろうけど。アーティストも僕たちが提供しているクラウドファンディング(wefan)を利用すれば、アルバムを作る資金調達もできますから、そこの基準が変わればレコード会社はいらなくなるかもしれない。いろんなものが削ぎ落されると、進化のスピードが速くなる…日本は15年くらい遅すぎますからね。でも、みなさん賢いので、いろいろ手を変え品を変えやっていくと思いますけど。そういう意味でもボーッとしてるとダメですよね。本質を掴みながら何をしていけばいいかを考えないといけない。」

石田
「次に向かって動かないと後退しているのと一緒ですからね。」

大谷
「そうです。アーティストのために、音楽が存続するためにどうしたらいいかということを、LD&Kも何ができるのかを常に探してやってますよ。」

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当記事はOKMusicの提供記事です。

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