GoToトラベル停止の思わぬ余波。「家に帰りたくない」お父さんの嘆き

日刊SPA!

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべく、年末年始の「GoToトラベル」キャンペーンが停止された。さらに今回の緊急事態宣言に伴い、その停止期間が来月まで延長された。

この影響を受けたのは、一般の旅行客や観光事業者だけではない。GoToトラベルを意外な目的で活用していた人々が、人知れず「悲鳴」をあげていることは、あまり知られていない。

◆「GoToトラベル」停止で悲鳴をあげる家族不仲のお父さん

「年越しは漫画喫茶です。お店が利用者にカップそばを振る舞ってくれたのでありがたかった」

千葉県在住の会社員・坂田義明さん(仮名・40代)は、妻と中学生の息子と三人暮らし。5年ほど前にマンションも購入し、幸せな生活を満喫しているのかと思いきや、そうではない。

数年前から、夫婦関係がギクシャクするようになり、家にいると些細なことで口論が絶えなくなった。

ただ、幸いにも(!?)坂田さんはいわゆる「出張族」。月の半分ほどだった出張を、自ら会社に志願して増やし、できるだけ自宅に帰らないようにして過ごしてきたのである。

「顔を合わせると喧嘩。子供にも悪い影響があると思い、それなら自宅にいる時間を減らそうと。本当は子供と一緒に過ごしたいのですが、子供の前で喧嘩ばかりして、家庭の空気が悪くなるよりはずっといいでしょう」(坂田さん、以下同)

ところがコロナ禍により、昨年夏以降の出張はゼロに。さらに悪いことに、全社員に「リモートワーク」が奨励されると、坂田さんは自宅で過ごさざるを得なくなった。そして、すぐに夫婦喧嘩が始まったのだ。

もう家を出るしかないのか。そう決めかけていた時、坂田さんが思いついたのは「GoToトラベル」を使った“家出”だった。

◆出張のフリした“家出”に利用

「ビジネスホテルが、一泊4000円以下のプランを出し始めて、GoToトラベルキャンペーンを使えばそこから三割引き。さらに隣県のホテルに泊まれば地域共通クーポンまでもらえる。実質、一泊2000円以下とかで泊まれるのなら、家出に最適だと」

出張の際、宿泊費用は会社の経費として落とせたが、食費は自腹。といってもほとんどがコンビニ飯だったため、クーポン券をコンビニで使えば食費まで浮かせられると考えれば、一泊あたり1000円程度の負担で済んでしまう。

「風呂とベッド、テレビまであって一泊1000円とか。1か月でも3万円程度です。小さな炊飯器を持ち込み、半自炊まで始めましたから、食費もおかずを買う程度でした」

10月から12月の頭まで、自宅に帰ったのは3回だけ。妻や息子には「出張」や「家庭内にコロナウイルスを持ち込まないため」と説明していた。

◆「GoToトラベル」が一時停止に

普通の家庭なら、そんな理由で帰宅しないなどあり得ない、とも思えるが、坂田家の安寧のためにはむしろ好都合だった。

妻とはSNSで最低限のやり取りしかせず、顔を合わせないため、喧嘩なども起こり得ない、というのである。しかし、快適な「家出生活」を過ごしていた12月中旬、政府は「Go Toトラベル」一時停止の決断を下す。

「割引もクーポンもなしで1日4000円は無理です。というわけで、クリスマスに泣く泣く家に帰ったのですが、明らかに妻も私がいないほうがよかったという雰囲気でした」

というわけで、クリスマス以降はビジネスホテルではなく、近くの漫画喫茶に。ちょうど仕事も休みになり、狭いブースで日がな一日、漫画をみたりネットをしたり……。薄暗く狭い空間に何日もいて、気がついたら年が明けていたと話す。

◆緊急事態宣言で絶体絶命!?

「漫画喫茶は一泊プランとフリータイムプランを併用しても、やはり3000円近くかかりますから、いかにGo Toがありがたかったか。そういえば、漫画喫茶の共有スペースで、おそらく私と同じくらいの中年男性数人を毎日みましてね(笑)。店員さんもGoTo以降、ホテルから漫画喫茶に来た家出客が増えたといっていました」

坂田さんと同様の事情なのかどうなのか定かではないが、自宅で過ごす時間の増加と共に、家族不仲になったという話は枚挙にいとまがない。GoToが身寄りのないお父さんたちの「家出」に使われていた可能性も少なくないのである。

そんななか先日、坂田さんに追い討ちをかける出来事が……。1月7日、緊急事態宣言の再発令によって「Go To トラベル」停止期間は2月7日まで延長された。彼らにとって見れば、この措置は痛すぎるのかも知れない。<取材・文/森原ドンタコス>

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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