病気治療にも…脳波とITの融合“ブレインテック”最前線

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意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ブレインテック」です。
■ 脳波とITの融合。病気治療にも役立つ技術開発。

昨年11月に野口聡一さんを乗せた民間の宇宙船を打ち上げたスペースX社。CEOはイーロン・マスク。彼の事業でいま最も注目されているのが、2016年に設立したニューラリンク社です。ここでは、人間の脳とコンピューターを繋ぐ技術「ブレイン・マシン・インターフェイス」を研究開発しています。脳とコンピューターが直接接続されて、人体の機能が拡張されていく未来がもう始まっているんですね。脳神経とITを融合させる新しいサービスや研究開発のことは、「ブレイン(脳)」と「テクノロジー」を合わせて「ブレインテック」と呼ばれています。

昨年8月末にニューラリンク社は、脳に脳波を読み取るデバイスを埋め込んだ豚の様子をリアルタイムでモニタリングしました。今後、思ったことがそのまま目の前で起こるようなこと、たとえば「スイッチをつけたい」と思うと、すぐに部屋の照明がつく、みたいなことが可能になるかもしれません。

元ケンブリッジ大学の研究者たちが作ったBIOS(バイオ)社では、脳から発せられる情報を操作し、難病の治療を内側からやろうという技術の研究が行われています。脳の神経情報を解析し、書き換えることで心臓病や糖尿病、関節炎などの症状の改善が期待されています。2021年中には臨床試験の開始を予定しているそうです。

スウェーデンのスタートアップ企業では、うつ病治療に前頭部を刺激して症状を改善させるヘッドセットを作りました。欧州では認証され、自宅で使えるものとして、実際に治療に投入されているようです。

ほかにもマイクロソフト、オラクル、シスコなどの米国企業、日本の富士通などもブレインテックの研究を始めているといわれています。

これからは脳のデータが大きな資産になっていくでしょう。自分さえ無自覚なことが、情報としてどこかに集積されることになるのですから、すごい時代です。究極の個人データを誰がどう管理していくのかが課題になりますね。本来なら、一企業や一国家ではなく、人類データセンターのような公平を期したところに預けられるとよいのかもしれません。

堀 潤 ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が昨年公開された。

※『anan』2021年1月20日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

当記事はananwebの提供記事です。

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