南河内万歳一座新作『ゴミと罰』記者会見レポート~東京・福岡公演中止なれど、大阪公演は決行! 「あまり深刻にならず、バカバカしくゴミを遊びたい」

SPICE



2020年に、劇団旗揚げ40周年というメモリアルイヤーを迎えていた、関西小劇場界の兄貴分的な劇団「南河内万歳一座」。3月には、大阪で行われた優れた舞台芸術に贈られる「大阪文化祭賞」を受賞し、さらにエンジンをかけていこうとした矢先、コロナ禍によって他の劇団と同じように、6月の公演が延期に。その次に待機していた新作『ゴミと罰』も、東京・福岡公演の中止が土壇場でアナウンスされたが、大阪公演は予定通り決行する。

今回は、座長で作・演出家の内藤裕敬や劇団員たちが、「ぜひ一緒にやってみたい」と望んだ、野田晋市(リリパットアーミーⅡ)、山藤貴子(PM/飛ぶ教室)、岸本武享(劇想からまわりえっちゃん)を招いた特別公演。大阪市内の劇団稽古場で、内藤、野田、山藤、岸本の4人の会見が、2020年末に行われた。そのためこの時点では、三都市で公演を行うことが前提だったということを、あらかじめお断りしておく。

明らかにドストエフスキーの名作をもじったタイトルは「最初に思いついた後、ダジャレが過ぎるので止めとこうかと思ったけど、むしろバカバカしくていいかと思った」と内藤。そのタイトル通り「ゴミを遊ぶ」というのが、今回のコンセプトだ。
2019年末に合同公演形式で上演した、劇団いちびり一家+南河内万歳一座☆オールスターズ『デタラメカニズム』より。 [撮影]谷古宇正彦
2019年末に合同公演形式で上演した、劇団いちびり一家+南河内万歳一座☆オールスターズ『デタラメカニズム』より。 [撮影]谷古宇正彦

断捨離なんて言われますけど、他人にとってはゴミだけど、私にとってはゴミではない物。使わないけど捨てたくない物。捨ててしまうと二度と戻ってこない物。中でも一番やっかいなのは、捨てたくても捨てられない物ですね。あるいは胸の中にも、捨てたくても捨てられない、苦いものがいっぱい詰まっている。そんなものは誰にでもあって、死ぬまで消え去ることはないだろうと。

でもそういう負の部分が、俺が死んで消えるならいいけど、なるべく次の世代には引き継がせたくないわけで。今回はメタファーとして核廃棄物の問題も出てくるけど、そんな数万年後まで面倒を見ていただかねばならない、子々孫々と呪いみたいに受け継がれるような物を、これ以上増やしたくないとも強く思うわけです。実際に目の前にあるゴミ、自分の胸の中にあるゴミ、そして未来までおっかぶせてしまう負の遺産について、今回は物語にしたいと思っています」。

内藤裕敬(南河内万歳一座)。
内藤裕敬(南河内万歳一座)。

舞台となるのは、元は豪邸だったものの、焼失後はゴミだらけとなっている更地。不法投棄の対策で、見張りを立てることが町内会で決定し、一人の若者がその係となる。彼はいろいろとゴミを調べているうちに、豪邸跡地の地下室に入り込むが、そこはいろんな箱を保管する、大きな倉庫のような空間だった……。

町内会のシーンでは、かつてとは相当コミュニティが変わったことが露呈して、古い人と新しい人たちの間で話し合いにならないということも描きます。そして当番の青年は、その家の隠された仕事を知ることになる。その中で、人の心の内にある、捨てたくても捨てられない様々なものを、どこに持っていったらいいのか? みたいなことと、核廃棄物が重なっていきます。現代的な“罪と罰”の話になる可能性はあるけど、あまり深刻にならずバカバカしく、笑って観られるようなものにできればと思っています。

地上のゴミ捨て場から地下に場面が移る時、劇空間をガラッと変えなければいけないけど、ビジュアル的にも動き的にも、それを可能とする演出プランはできあがってます。しかも地下には様々な箱がいっぱいあり、それを積み上げたり探したりすることで場所が変わっていくから、そこも楽しめるんじゃないかと思います」。
一度一緒に演りたかった関西の俳優達+南河内万歳一座☆オールスターズ『ゴミと罰』公演チラシ。 [イラスト]長谷川義史
一度一緒に演りたかった関西の俳優達+南河内万歳一座☆オールスターズ『ゴミと罰』公演チラシ。 [イラスト]長谷川義史

そして今回のゲストの3人からは、以下のような挨拶が。

野田:内藤さんは最初の稽古の時に「どうしても稽古終わりで飲むのは無理なのか?」という話を延々とされてて、途中から笑いが止まらなかったです(笑)。読んでると次が知りたくなるような脚本だし、稽古しながらも次の展開が楽しみ。完成すると、すごく面白い芝居なんじゃないかと。

山藤:万歳さんの舞台に自分が立つと思ったことがなかったので、最初は不安だったけど、野田さんの言う通り内藤さんのお話がすごく面白くて、今は毎日緊張もなく楽しくやってます。オープニングからかなり飛ばしてる芝居で、私も今までやったことのないことをさせていただけるので、とても楽しみです。

岸本:僕は今日から稽古参加なので、(記者の)皆さんと同じ温度で今の話を聞いてました(笑)。万歳は8年前の『お馬鹿屋敷』にオーディションで参加させていただいて、次は客演として呼んでもらえることが一つの目標だったので、今回はこのご時世だけど頑張らせてもらおうと思っています。
野田晋市(リリパットアーミーII)。
野田晋市(リリパットアーミーII)。

内藤はこの3人について「それぞれの(所属)劇団のテイストは完ぺきに無視してるので、あんまりやったことのないことをやってると思う。山藤さんは(PM/飛ぶ教室主宰の)蟷螂(襲)さんは書かないようヒドいことを言わせてるし(笑)、野田君は舞台に立つことに対して妙なこだわりを持っている人なので、今回の状況に身を置いた時に、どう暴れてくれるのかを見たいです。岸本君は、今回一番割を食う役をやってもらうけど、若いから難しいことをいっぱいやらせたい。“この台詞が言えないようじゃ、ちょっと……”みたいなことをやりたいです」と語った。

新型コロナウイルスの脅威が続く現在だが、舞台上ではマスクやソーシャル・ディスタンスなどは考えず「いつも通り暴れる」ことを宣言。しかしそのために、野田がコメントした通り、飲みの席を封印されてしまっていることが、内藤には一番の問題だそうで……。
山藤貴子(PM/飛ぶ教室)。
山藤貴子(PM/飛ぶ教室)。

フェイスガードや、役者間の距離を空けましょうなんてことをやると、劇団が作ってきたスタイルが変わってしまうし、コロナで演劇のスタイルを変えなければならないなら(公演を)我慢した方がいい。“暴れるのならやめておこうかな”という人が出たら、それはしょうがないですね。稽古に入る10日前から全員健康状態を確認して、稽古場でも検温と消毒のケアを徹底することで、いつもどおりの演劇スタイルを貫こうと思っています。

ただ一番こたえているのは、稽古終わりにみんなで一杯やるのを禁止されたことです。そこで気持ちをゆるめてから、家に帰るのが習慣になってたので。だから地下鉄に乗る時に、缶コーヒーの中にお酒割を入れて、(帰りが同じ人たちと)小声で談笑するという体を取っています(笑)。でも居酒屋がダメで、劇場がOKというのはどうなんだ? というのは、演劇をやってる奴はみんな思ってるんじゃないかなあ」。

さらにここ最近、舞台と配信がワンセットになった公演が増えているが、万歳は消極的というか、割と否定的なスタンス。内藤はその理由を、こう説明する。

岸本武享(劇想からまわりえっちゃん)。
岸本武享(劇想からまわりえっちゃん)。

活動を継続できる劇団は、演劇の本質的な、オリジナルの芸術性を持つことができた所だけだと思うし、それを映像にすると別物になると思うんです。記録として残すのはいいと思うけど、生配信を観劇の代わりにするという趣旨だと、ここまで自分たちがやってきたことが変わっちゃうと思います。それと同じように、正直プロジェクションマッピングとか、映像を(演出に)使うのも嫌い。あれが演劇の本質的な何かに有効だとは、今のところ全く思ってないです。

あくまで舞台にこだわって作っているわけだから、映像で見せるのなら、最初から映像作品として作りたいですね。こういう状況でお客様も事情があるでしょうから、今後の公演では実験的に配信を入れてみることも考えていますが、今回は配信しません。でも演劇は“再演”という手段が取れますので、収束後のなるべく早い時期に、ブラッシュアップした形で再演できればと思います」。

この会見が行われてからしばらくして、新型コロナウイルスの状況が悪化し、再び緊急事態宣言が出る事態となってしまった。今はどの演劇人も観客も、いつ全面的にエンターテインメントがストップするかと、ヒリヒリするような気分でいるだろう。

劇団いちびり一家+南河内万歳一座☆オールスターズ『デタラメカニズム』(2019年)より。 [撮影]谷古宇正彦
劇団いちびり一家+南河内万歳一座☆オールスターズ『デタラメカニズム』(2019年)より。 [撮影]谷古宇正彦

しかしどんなに困難な状況下でも、「楽勝」を合言葉に、パワフルかつ現在をあざやかに風刺した芝居を、40年に渡って作り続けてきた万歳一座。ゴミという題材+ゲストたちとの化学反応によって、一見バカバカしいようだけど、実はコロナ禍の世界に一筋の光を照らすような舞台を作り上げてくれることだろう。大阪公演だけでも無事にやり遂げられることを、深く祈りたい。

当記事はSPICEの提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ