オリラジは「芸人」でナイツは「漫才師」…「芸人」の定義とは?

日刊SPA!

文/椎名基樹

昨年末をもってオリエンタルラジオが吉本興業を退社。フリーで活動していくことが発表された。中田敦彦は、2018年からテレビの仕事を減らし、YouTubeの活動へシフトしており、退社は予想できた流れだった。しかし藤森慎吾は6本のレギュラー番組を抱えており、中田の独立を受けて急きょ退社を決めたことに驚きの声が上がった。中田敦彦は今後家族でシンガポールに移住し活動の拠点とするという(←あっちゃん、かっこいい!)。

前代未聞のユニークな身の振り方は、いかにもオリエンタルラジオらしいと感じた。今回の退社報道を受けて改めて考えてみると、オリラジが「お笑い史」の中でエポックメイキングな存在であったことに気づく。彼らがデビューしてすぐに大ブレイクした当時は、なんとも軽薄に感じ、理解できなかったが、今振り返ってみると、オリラジの新しさがわかる。

◆「芸人」ってなにする人?

オリラジの「武勇伝」は、「リズムネタ」の多くのフォロワーを生んだ。リズムネタはあっという間に消費されてしまうので、宴会芸と揶揄されたりもするが、生み出すのは至難の業だろう。そしていちど観客の心を掴めば、あっという間にブレイクできるパワーがある。

ナイツの塙宣之は自身のラジオ番組「ナイツ ザ・ラジオショー」(ニッポン放送)で、“オリエンタルラジオは、デビュー1年目から売れていて、自分達が10年かけて見てきた景色を1、2年で見てきている。そしてそれは、後付けではなく、計算して1年目から売れていった。オリラジは、将来へのビジョンを持ち、セルフプロデュースしてきた”と賞賛した。“オリラジにとってネタを披露する段階は、1つの通過点であり、現在はネタでない部分で活動しているので、それをする気はもうないのだろう”と分析した。

私はこの塙の分析を聞いて、「芸人」という言葉の定義について考えてしまった。「芸人」という言葉は、いつの間にか世の中に定着している。バラエティータレントたちも自らを「芸人」と称している。その話しぶりに私は「自負」と少しの「陶酔」を感じたりする。

しかし、石橋貴明は、とんねるずが結成された40年前の1980年では、「芸人って言ってなかったような気がするんですよね。お笑いとは言っていましたけど」とインタビューで答えている。(2020/9/13「Yahoo!ニュース 特集」「とんねるずは死にました」―戦力外通告された石橋貴明58歳、「新しい遊び場」で生き返るまで)

◆オリラジとナイツの違い

「芸人」の本来の意味は文字通り「芸を売る人」だ。しかし現在「芸人」が指すものは、全く逆の意味の「芸を売らない人」にみえる。オリラジはその意味でまさに「芸人」である。ナイツの塙はあえて言うならば「漫才師」だ。ミルクボーイも「漫才師」だ。

「芸人」とはバラエティー番組のMCや盛り上げ役、ロケのレポーターが主な仕事であるが、その他、小説を書き、絵本を出版し、漫画でベストセラーを飛ばし、料理本を出し、絵画を描き、高いレベルで楽器を演奏し、俳優業で個性を発揮する。ひと昔前にもてはやされた「マルチクリエイター」と言う概念が最も「芸人」という言葉が現在指すニュアンスに近いように思う。そして「芸人」のする仕事で、最も重要なのは「笑い」によって「物の見方」を提示することだ。

何者にもなろうとしない、自由な存在の「芸人」は、現在のヒーロー像と合致しているように思う。だから40年前にはいなかった「芸人」が、今では溢れかえっている。多才な「芸人」はかっこいい。だが、私はもうじじいだから、塙みたいな「職人」に憧れたりする。

しかし、オリラジのこれからは非常に興味深い。「芸人」の可能性をさらに推し進めるだろう。

【椎名基樹】

1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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