<純烈物語>「紅白に出られても伝わらなければ忘れられてしまう」リーダー酒井一圭が緊急事態宣言下考えていたこと<第79回>

日刊SPA!

―[ノンフィクション連載「白と黒とハッピー ~純烈物語」]―

<第79回>結果的に2020年の純烈は例年以上にアクティブだった

◆「グループを存続できないかも……」NHK『クローズアップ現代』出演の余波

新型コロナウイルスの影響により、スケジュール表がどんどん白紙となっていく中で、純烈はNHKの『クローズアップ現代』にとりあげられた(2020年4月22日放送)。「“イベント自粛”の波紋 文化を守れるか」というテーマのもと、酒井一圭がグループを存続させていけない可能性があると公言したため、反響が大きかった。

プロデューサーとして歌以外の活動を提案し、新たな仕事の中でメンバーやスタッフについてきてもらおうという考えが芽生えつつも、やはりみんなのメンタルが持たないだろう、ならば純烈をやめて全員自由になった方がいいのかも……と、葛藤が渦巻いていた頃だった。そのまま取材班に伝え流されたわけだが、それによって拓けたものもあった。

◆酒井さん、もうちょっとトーンを落としてください

「やっぱり俺って、みんながクヨクヨしたり不安だったりした時に鼓舞して笑っているタチなんで、取材クルーさんが『酒井さん、もうちょっとトーンを落としてください』って言うの。そりゃそうだよね。俺、笑ってんだから。番組的には笑っちゃいけないのに。まあそれはそれで撮ってもらったんだけど、最後はクルーが『酒井さん、元気づけられました』って帰っていった。

それがオンエアされて、続けるかやめるかという話にファンがええっ!?となって、その反応をネットで見てやっぱりやめない方がいいという答えが得られた。じゃあ、続けるとなったら方法はひとつしかない。グループって存在自体が密だし、バラ売りするしかないだろうと。もともと純烈は、バラ売りするために組んだようなものだったからね」

白川裕二郎を口説くさい「紅白に出てハクをつけることで、このまま役者を続けるよりも高いステージに上がれるようになる。そういう道を進んで夢をつかむのもアリじゃないか」と言ったように、はじめから酒井は純烈に関し他のスキルを生かすためのタグとして考えていた。番組の反響はファンの間だけでなく、他のメディアまで及ぶ。ワイドショーでとりあげられるたびに「100本のステージが飛んで、今はYouTubeにDVDのダイジェストをあげています」とアナウンスした。

◆「100本飛んだということは100日分、純烈は空いていますよ」

「100本飛んだということは100日分、純烈は空いていますよ」という酒井が吹いた犬笛だった。これが届き、山本浩光マネジャーの電話がバンバン鳴るようになる。

リモート出演だったが、初めてつながる関西や九州の番組スタッフも大変な思いで動いているのを見て、自分たちが献身的にやることで関係性を継続させようという姿勢になった。情勢さえ変わっていけば、それが次はスタジオで、その次はロケでと仕事の幅が広がっていく。この頃の純烈は、とにかくテレビへの露出に活路を見いだそうとしていた。

「やっぱりテレビに出ないと、コンサートにいこうとしていた人たち隅々にまで伝わらないじゃないですか。絶対にテレビじゃないとダメだと考えて、テレビとつながる形をとった結果、また呼んでくれたりいろんな人たちが見てくれたりにつながった。だから、2020年はすごくテレビに出た一年だったという印象です。

◆「紅白に出られても、伝わらなければあっという間に忘れられてしまう」

僕らとすれば紅白に出られても、伝わらなければあっという間に忘れられてしまう。でも生きていかなきゃいけない。そこで稼働もしていないのに会社が給料をキープしてくれたのは大きかった。マイナスを抱えても給料を保証してもらっているなら、俺らも動いて1万円でも5000円でも入るように持っていかなきゃダメでしょという、いたって普通の動機なんだけど、そういうのもあって結果的に一番テレビに出た年でしたよね」

それまでの2、3年はとにかくライブの需要が大きく、語弊を恐れずに言うなら敷かれたレールの上を全力で駆け続けたようなものだった。それがコロナにより途絶えたことで、自分たちで道を拓いていく必然に迫られた。

結果論ではあるが、その意味で2020年の酒井一圭と純烈は例年以上にアクティブだった。テレビやラジオ、あらゆるメディアに露出し、ドラマも制作、コロナ禍におけるライブの可能性を模索し具現化、そしてちゃんと3年連続紅白歌合戦出場という目標にも到達できた。

◆酒井に流れる「あばれはっちゃく的なもの」

「そこは俺自身の性分がアクティブというか、“あばれはっちゃく的なもの”があるんでしょうね。みんながアッパーな時は、あまり自分は必要ない。それが2020年は発動したよねえ。肉体的なことにかぎらず、頭の中もアクティブでい続けた。みんな停まっちゃって白紙になったからこそ、そこを変えたもん勝ちだろ。じゃあ何を書こうかという感覚になりました。

5月中に種蒔きして、世の中がマシになったら秋に動くぞと決めて、その間も頭はずっと動き続けていた。ステージには上がれないけど、いつも以上に脳をフル回転させて受験生のようでしたよ。芸能界における東大のようなものがあったら、間違いなく俺は受かっているね」

頭がアクティブといえば聞こえはよくとも、あまりに抱え込む量が多すぎるとメンタルがやられてしまう。「マッスル」時代の盟友であるスーパー・ササダンゴ・マシンと顔を合わせると、出るのはやはり酒井のことになるのだが、いつも「一圭さんはそのつど自分で判断を下さなければならない立場にある。大変だと思います」と言っていた。

ササダンゴ自身も普段は新潟の金型工場・坂井精機代表取締役として日々、判断を迫られる立場にある。その言葉を伝えると酒井は「あいつだってそれをやってんだろ!」と即座に突っ込むのだが、自分の舵取りによって多くの人たちに影響を及ぼすのは事実。そのプレッシャーに精神が蝕まれることはないのだろうか。

「シンドくないです。なぜなら、いつも即答だから。もちろん、即答といってもその場の思いつきやいい加減に答えるんじゃなく、即答できるためにひたすら情報を処理した上での答えです。2020年に関しては、サッカーのフィールドが4つ、5つ並ぶ中で全部の試合に出場し、同時進行でプレイしているような感覚でした。これが1試合分だと重いのよ。

たくさんのプロジェクトがあると、即答して軽くできる。重い対象が消えてくれるから働きやすくなるし、不安になったところへいってポンと答えれば、みんな燃えたり勇気が湧いたりするでしょ。ずっと同じところにいると、コロナでずっと家にいるのと同じで重い。家族や純烈以外にも、ほかのプロジェクトをやった方がいいんだとハッキリわかった」

◆「俺は年に何日いればいい?」と妻に問うと……!?

家にいる間、酒井は妻に「俺は年に何日いればいい?」と聞いた。返ってきたのは「2日」という、なんとも現実感丸出しのひとことだった。

旦那の分も含め毎日三食キッチリ作るのは、主婦として重いのだと家の中で同じ空気を吸っていて理解できた。子どもたちもそうだが、みんなが散開しそれぞれの時間を持つことでうまく家族が機能していく。それは、自分自身の変わらぬ役回りともつながっている。

「自分は直感がパーンと出るように膨大な準備をするのが一番向いているんだと思います。純烈結成前から、いろんなことがあったからこそ僕もいる意味があるというか、のどかな風景の中で安定していたら酒井一圭は邪魔でしかない。なんか事件起こらないの?っていう人だから。純烈は火事場に強い、またそれが多いのは、そこから来るんでしょうね。

無名だった頃、ボイストレーニングの先生をしていただいた琴姫さんに言われて肝に銘じていることがあって。『表向きにいい時こそ、裏では大変なことが起きているのがエンターテインメントの世界。リーダーさんはそれを常に考えて頑張ってね』。みんながやった!と喜んでいる時に何かがくるぞ。ならばそれさえ乗り越えればまたいいことがくる。ヘンなことが起きている時の方が、希望を持てるって考えちゃうんです」

こちらが質問を投げかけることで、明確な考えとして言語化しているものの、本当はもっと感覚的なスタンスで酒井はコロナ禍の中、やってきたのだろう。傍目から見て「リーダーは大変」と映っても、本人は「仕事っちゃあ仕事だけど遊びだからケラケラ笑っていて、シンドいのをやっている気がしない」が、じっさいのところらしい。

受け手側がニヤニヤしてくれれば、それでいいと思っている。そして、そのためには「遊びを本気でやる」のが大前提。

だから、ニヤニヤしてもらうための妄想もスケールがやたら大きい。酒井一圭はコロナで先が見えぬ中、こんなことを頭の中で描き誰も知らぬところ一人勝手にニヤついていた。

◆「一番いいところでしくじりたい」

「一番いいところでしくじりたい。今までは誰かがしくじったのを処理して名をあげてきた自分が、最大の見せ場でしくじることによって世の中が激震して、純烈をやる前以下になってしまう。それは犯罪ではないんだけど、すごくダサいことでさ。『こんなことで今まで築き上げてきたものを台無しにするなんてダッセー!』って笑われてんの。

でもそれって俺らしくないですか? すべてを失う酒井。あそこで死んだら最高な形で終えられたのに、もう少し長生きしたからペシャンコになっているという人生を使ったギャグ。俺を知る人たちは、酒井はヘンで酒のつまみになるというとらえ方だから、そこに向けて内輪受けでやっている感覚があるんです。だからファンの人たちともファンの立場じゃなく、身内の立場でバカやっているなと思える距離感ですよね」

撮影/ヤナガワゴーッ!

―[ノンフィクション連載「白と黒とハッピー ~純烈物語」]―

【鈴木健.txt】

(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxt、facebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』が発売

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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