浦沢直樹が明かす、大ヒット漫画「20世紀少年」誕生秘話「完全にお風呂で考えました」

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放送作家の高須光聖が、世の中をもっと面白くするためにゲストと空想し、勝手に企画を提案していくTOKYO FMの番組「空想メディア」。2020年11月22日(日)の放送では、漫画家・浦沢直樹さんが登場しました。



(左から)浦沢直樹さん、高須光聖

◆次の漫画家世代に繋げるために
高須:「浦沢直樹の漫勉」(NHK)という、ほかの方の漫画を読む番組をやられていて、“面白いことをやっているなぁ”って思ったんですよね。ああいうことを“やりたいな”って思ったのはいつぐらいのことですか?

浦沢:話せば長いんですよねぇ。それこそ、子どもの頃に遡ります。親戚のおじさんとかに「直樹君は漫画がうまいからプロになれるな」って言われていたんですね。

高須:それって何才ぐらい?

浦沢:8才ぐらいです。だけど、当時の僕は実際に描いたことで“漫画の厳しさ”を知っているんですよ、だから、“どいつもこいつも漫画をわかっていない!”と思っていました。

高須:なるほど。絵がうまいっていうのは表向きの誉め言葉であって、実際に漫画として形にすることはすごく大変なことだと理解していた訳ですね。

浦沢:そうですね。そして、プロになってからも「“漫画の大変さ”って理解されていないんだろうな」っていう気持ちがずっと残っていたんですね。たしかに、漫画ってカジュアルに楽しむものだから、パラパラと読んで楽しめるような描き方をしています。だけどその裏側は、パラっと読む箇所に3日間ぐらいかけていたりするんですよ。

なので、そういう事情を含めて“漫画のリアルな制作現場を見てもらう機会はないものか”と考えていたんです。テレビにも何度か出て“漫画とはこういうもの”ということを話してきたのですが、限られた時間内で伝えきることはできず、0から始めて1にもならないで終わっていたんですよ。なので、あの番組のように、制作現場を見ながらプロ同士で会話をすることで、“いきなり5から10くらいまで伝える番組を作りたい”ということを、放送作家の倉本美津留さんに相談して「浦沢直樹の漫勉」を作りました。

高須:僕自身、自分の仕事をほかの人に見せることに対して恥ずかしさを感じてしまうのですが、ほかの漫画家さんも同様な反応ではありませんでしたか?

浦沢:もちろん、みなさん「見せたくない」とおっしゃっていましたよ。実際、僕も同じ気持ちです。だけど、番組を作ることは、漫画という文化を広めるために必要なことだと思ったんですね。それに、番組を観た若い子たちが、次の世代を作ってくれる可能性がありますから。そういうことを伝えて、番組に協力してくださる方が増えていきました。

高須:浦沢さんの人間性に惹かれた方もいらっしゃるんでしょうね。浦沢さんだからこそ協力してくださる人もいると思います。

浦沢:ちょうど自分はレジェンド的な存在の漫画家さんの知り合いがいるし、若手の漫画家さんとも繋がりがあるんですね。なので、この立ち位置をうまく活用できたらいいなと思いました。

◆アイデアは休んでいるときに閃く!?
高須:浦沢さんが“こんな漫画が描きたい”と閃くときって、どんなタイミングですか?

浦沢:“何でもないとき”ですね。つい最近のことなんですけど、お風呂で頭を洗っているときにアイデアがおりてきたんですよ。それで、頭のなかでいろいろアイデアをまとめていたら、“そういえばリンスしたっけ?”とハッとしました(笑)。

高須:僕もお風呂で番組のアイデアがパッと浮かぶときがあります!

浦沢:お風呂っていい空間ですよね。「20世紀少年」(小学館)は完全にお風呂で考えましたから(笑)。「Happy!」(小学館)という漫画の連載が終了したので、打ち上げをしたあと帰宅してお風呂に入ったんですよ。

それで、“あぁ、終わった終わった”と湯船に浸かっていたら、国連事務総長の「彼らがいなければ、我々人類は21世紀を迎えることはなかったでしょう」という挨拶が頭のなかで聞こえてきたんです。そして、そのまま主人公たちが登場してきて、バックにはT・レックスの「20th Century Boy」が流れてくる……そして、浮かんできたタイトルは「20世紀少年」でした。

お風呂からあがってすぐ、先ほどのイメージをメモに書いて、編集部にファックスを送りました。今でもそのときのファックスは残っていますよ。

高須:すごいねぇ! 作品の骨格が、お風呂場で生まれたんですね。休んでいるときのほうが自然と仕事のことを考えちゃったりしませんか?

浦沢:たしかに。テラスの椅子に座った瞬間にスーッと(アイデアが)浮かんだりしますね。この前、三谷幸喜さんとお話したんですけど、三谷さんも風呂あがりにバスタオルで体を拭いているときにアイデアが浮かんだことがあるそうですよ(笑)。

◆漫画を描くことはやめられない!
浦沢:連載がスタートして、たとえば20巻ぐらいで完結する漫画だったとしたら、5年か6年ぐらいは描き続けることになるんですね。僕は「MASTERキートン」(脚本:勝鹿北星・長崎尚志・浦沢直樹/小学館)と「YAWARA!」(小学館)、「MONSTER」(小学館)と「Happy!」(小学館)というように、週刊誌と隔週誌で2本同時に連載していた時期があり、月に6回ぐらい締め切りがあったんです。

高須:地獄ですね(笑)。そんなの無理じゃないですか。

浦沢:でも、僕はそういう生活を20年間続けたんですよね。

高須:よく倒れずに活動されましたよね。危ない生活ですよ。

浦沢:だけど、手塚治虫先生のスケジュール表を見させてもらったことがあるのですが、自分の3倍ぐらいのボリュームでした。

高須:マジですか!?

浦沢:「三つ目がとおる」(講談社)と「ブラック・ジャック」(秋田書店)を連載していた頃は、どっちも週刊誌なんですよ。なので、月に8本も締め切りがあった訳です。それに加えて「MW」(小学館)、「火の鳥」(KADOKAWA)、「ブッダ」(潮出版社)、「ユニコ」(小学館)も同じ時期に描いていたんですよ。しかも、その合間に講演会もやっていました。

高須:すごい! 漫画を描くスピードが速いってことですか?

浦沢:べらぼうに速いです。しかし、手塚先生より速かったのは石ノ森章太郎先生でした。

高須:やっぱりレジェンドはすごいですね。

浦沢:ただ、どちらも60歳で亡くなっているんですよね。そして、僕は今60歳です(笑)。

高須:わー! ほどよくやらないとダメですよ!

<番組概要>
番組名:空想メディア
放送日時:毎週日曜 25:00~25:29
パーソナリティ:高須光聖
番組公式Facebook:https://www.facebook.com/QUUSOOMEDIA/

当記事はTOKYO FM+の提供記事です。

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