日本の学校教育と校則がもたらした、日本経済への大きな損失/鴻上尚史

日刊SPA!

―[連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史>]―

◆最近ハマったスマホゲームと、おすすめの本

新年、あけましておめでたいといいですねえ。今年こそは、めでたい年にしたいと思いますねえ。

お正月はどうすごしましたか?と書きながら、この原稿は、じつは去年の12月22日に書いているのですが、仕事もしないで、スマホのゲームにハマッた正月になったかもしれないと、未来の自分に怯えています。

「Toon Blast」って、パズルゲームです。知ってます?

これがじつに良くできたゲームなのです。普通、こういうタイプのゲームは、レベルが上がっていくと課金しないとクリアできないシステムになっているわけです。金、使えよ~という狙いですね。

でも、この「Toon Blast」は、レベルが上がっても必死にがんばれば、課金なしでもいけるんです。そこがじつに素敵です。

実際に、僕は、今、レベル1から始めて、3400まで来てます。いや、だから、パズルを3400回、クリアしたってことですね。気が遠くなりますね。

最近のスマホは、勝手に「どれぐらいゲームをやってたか?」を教えてくれるわけで、週平均3時間45分、昨日は5時間15分と出た時は、「俺は何をやっているんだあ!」と自分を責めました。

いや、仕事もしてるんですよ。してるんですけど、仕事の合間に「Toon Blast」をしてるんじゃなくて、「Toon Blast」の合間に仕事をちょっとしてる感じですね。

◆君らのためと説明できない校則は全部、パワハラ

さらにその合間に、『還暦からの底力―歴史・人・旅に学ぶ生き方(出口治明著 講談社現代新書)』という本を読みました。

タイトルは還暦の人向けなんですけど、全然、還暦限定ではなくて、興味深いものでした。

もともと出口さんの学校関係者への「皆さんの学校に校則があるでしょう。それを1条ずつ読んでください。そして、生徒がどんな屁理屈を言ってきても、自信を持って、『君らのためになるから、こういう規則がある』と説明できない校則は全部、パワハラです。自信を持って理由を説明できない校則は、全部やめなさい」という言葉を知って、「おおっ!」と思ったのが始まりです。

◆世界のトップ企業ランクに日本企業は0

出口さんは、ライフネット生命を始めたビジネスマンですが、今は、立命館APU学長に就任しています。

この本の中で、1989年(平成元年)に世界の(時価総額)トップ企業20社中14社がランクインしていた日本企業は、2019年には0になり、最高はトヨタの39位になっているという現状がまず紹介されています。

さらに、ユニコーン企業と呼ばれる「未上場で評価額が10億ドル以上のベンチャー企業」は、2019年7月末段階で世界に380社あり、そのうちアメリカが200社弱、中国が100社弱で全体の8割を占め、日本はわずか3社だけだというデータも紹介されています。

そして、これらの原因は、つまるところ日本経済が活性化していないからで、その分析と対策が書かれています。

これがじつに面白いです。

◆日本の学校教育と校則がもたらした弊害とは

日本の高度成長期は製造業によって牽引されてきたと言います。

製造業の工場モデルに必要とされる特性は、「素直で我慢強く、協調性があって空気が読めて、上司のいうことをよく聞く」人間像です。

製造業が日本経済の中心だった時は、学校教育がこういう人間像を目指したのは、ビジネス的視点ではうなづけるわけです。

が、いまや製造業がGDPに占める割合はおよそ20%、雇用の割合にいたっては17%です。

そして、世界経済は、GAFAを代表とするサービス産業が牽引しているわけです。

いつまでも、「ただ従順な人間像」を作り続けている場合ではない、それは日本経済の大きな損失だと出口さんは言うのです。

ユニコーンを生むキーワードは、「女性・ダイバーシティ・高学歴」だとします。

そして、日本の典型的なビジネスマンの「飯・風呂・寝る」ではなく、これから大切なものは「人・本・旅」だと言うのです。日本の短期暗記主義の学校教育と校則が若者の探究心や創造力を奪ったと思っている僕にはとても有意義な本でした。お勧めです。

―[連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史>]―

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