【年末年始特別企画】小説家・BKBのショート小説『タイミング』特別公開




BKBでおなじみバイク川崎バイク。
先日、作品投稿サイト「note」で大反響を呼んだBKBの超短編小説が書籍化されたというニュースをお届けしていました。
書籍は早々に重版も決定。Amazon売れ筋ランキングでも8月18日(火)になんと売上トップという好成績をおさめるなど、大人気となっています。

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話題の50作品



(C)ヨシモトブックス
出典: ラフ&ピース ニュースマガジン

作品投稿サイト「note」で大反響を呼んだ「すぐ読めて、もう一度読み返したくなる」というBKBのショートショート(超短編小説)。
作家デビュー作となる本書には、SNS上でも話題沸騰の表題作ほか、noteに投稿された作品を厳選。さらに書き下ろし5作を加えた全50作品が収録されています。
なんと著者であるBKBによるセルフレビュー付き。
恋愛、ミステリー、SF……思わず涙してしまう感動作からクスッと笑えるブラックコメディまで、多彩なジャンルで魅せる大どんでん返しの連続。
読者の予想を裏切り続ける小気味よく、ついつい読み返したくなってしまうストーリーが盛りだくさんの一冊となっています。
今回は年末年始のおうち時間に皆さんに読んで頂けるよう、50本のうち2本を特別公開!
BKBは「歴史に刻まれるであろう大変な2020年でした。今はゆっくり信号待ちしましょう。そしてお暇だったらBKB(爆読してみてください、この、ブック)」とコメントを寄せています。

『タイミング』


「おお……! すごい! すごいすごい!」
男は大して珍しくもない繁華街のど真ん中で辺りを見回しては、写真を撮り、また見回す。
傍から見れば、まるで海外から来た観光客のそれだ。まあ、同じ日本人でも、地方から都心に旅行に来たおのぼりさんならそういった行動に出ることはままあるが、男のそれは常軌を逸していた。というのも、とにかく興奮していた。鼻息の荒いのなんの。

「こりゃすげえ! へ~! これもいいね! 渋いよ! くーーー!」

まるで、生まれて初めてその世界を見たかのようなテンション。それもそのはず。
男は未来からやってきた、いわゆるタイムトラベラーだった。タイムマシンが作られたはるか未来から来た男は、初めて目にする、過去の知らない街並みに酔いしれていた。

「これがカブキチョウってやつか! 噂に聞いてた通りの派手さと、ほどよい汚さ‼ いいねえ!」

確かに時代が違えば、どんな場所も最上の観光スポットと化すだろう。江戸時代、石器時代、恐竜時代、どこも想像しただけで魅力が満ちあふれている。

そして、未来では一般化したこのタイムトラベルには、いくつかのルールがあった。
想像にたやすい通り、未来ではほとんどの人間がタイムトラベルを希望し、タイムマシン搭乗は数年後まで予約がいっぱい。そんな状況を少しでも緩和するために国が設けたルール。

①滞在する時代の歴史を変えるような、過度な関わりをもってはいけない
②何も持ち帰ってはいけない
③滞在時間は12時間
④過去にしか行くことはできない
⑤一生で一度しかタイムリープはできない

なるほど先の四つのルールはさもありなんだが、五つ目の〝一生で一度しか〟というのが、このトラベルの良くも悪くも最大の肝だった。
トラベラーにとって、このルールが一番頭を悩ませるポイントとなった。一生で一度しか行けないのなら、どこに? 少し考えたくらいでは、答えは出そうもない。
マーライオンも、万里の長城も、オーロラも、時間旅行にはかなわないのだ。
男も例に漏れず、悩んで悩んで悩んで、この時代を選んだ。
仲間内には「もっと過去のほうがおもしろくない?」「なんでその時代に?」などと、しばしば揶揄された。
だが男は、どうしても、この時代に魅力を感じていたのだ。こればっかりは個人の価値観なのだから仕方がない。
男のテンションもやや落ち着いてきた頃、妙な違和感を覚える。

「…なんでこんなに人が少ないんだ?」

自分が調べていたカブキチョウとは違う。24時間バカみたいににぎわい、ゴミはそこら中に捨てられ、キャッチノオニーサンという生き物が、うようよいると聞いていた。

「…うーん、今日がたまたまなのかな……」

2020年の5月を選んだ、男のタイミングの悪さだった。

だが、何も知らないはるか未来から来た男は、なんとかこの時代を楽しみたいあまり、歩いていた若い男に声をかけてしまう。
「あの~、すみません。今日って何か、みんな休みなんですか……? お店とかもほとんど開いてないようですし……?」
声をかけられた若い男は、こいつは何を言ってるんだと一瞬目を丸くするも、明らかに妙ないでたちの質問者とあまり関わってはいけないと察し、早口で答える。
「いや当たり前でしょ。コロナなんだから」
若い男はそう告げると、足早に去っていった。

残された未来から来た男は、不思議そうにつぶやく。
「…コロナってあの? なんでコロナくらいで…? うーん……」
疑問を解決できる賢(さか)しさを、男は持ち合わせていなかった。
にぎわっていないのは仕方ないと諦め、せめて楽しもうと残された時間を様々な場所で費やし、やや不完全燃焼気味ではあったが、男は満足げに未来に帰っていった。

そして、タイムトラベルのルールの二つ目を男は破ったが、幸い、はるか未来ではさほど問題にはならなかった。

書籍概要


『BKBショートショート小説集 電話をしてるふり』


(C)ヨシモトブックス
出典: ラフ&ピース ニュースマガジン

発売日:8月12日
価格:定価1,200円+税
ページ:256ページ
版型:四六版 並製
発行:ヨシモトブックス
発売:株式会社ワニブックス
ISBN:978-4-8470-9946-5 C0095
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