『ゲゲゲ忌2020』に見た、そのユニークな魅力と可能性~後編~

『ゲゲゲの鬼太郎』『悪魔くん』『河童の三平』『総員玉砕せよ‼』など数々の名作で知られ、2015年にこの世を去った漫画家の水木しげるさん。東京都調布市では、その命日である11月30日を『ゲゲゲ忌』と名付けるとともに、生前の功績を称えるさまざまな催しを毎年11月下旬に開催してきた。

5回目となる今年は、新型コロナウイルス蔓延という予期せぬ事態に直面することとなった。だが、感染予防に最大限留意しつつも、結果的には11月21日(土)~11月30日(月)という、例年と変わらぬ10日間にわたって実施され、常連参加者である筆者としてもホッと胸をなで下ろす気持ちだった。

前編に引き続き、今回の『ゲゲゲ忌2020』の魅力をご紹介するとともに、5回目を迎えたことで、『ゲゲゲ忌』が新たな可能性とユニークな特色を持ち始めている点についても触れてみたいと思う。
(取材・文・写真:原口正宏/リスト制作委員会)
▲『ゲゲゲ忌2020』のメインビジュアル。

『ゲゲゲ忌2020』後半戦となる11月28~30日の夜は、いずれも『ゲゲゲの鬼太郎』第6期をターゲットにしたもので、そのうち28、29日は「鳥取コラボデー」と銘打たれた内容。水木さんが幼・少年期を過ごした鳥取県境港市が犬山まなの父方の故郷として登場するが、今回はまなが夏休みに叔父の家に遊びに行って事件に出くわす第16、17、65、66話という硬軟取り混ぜたエピソードが上映された。

ゲストは鬼太郎役・沢城みゆきさん(29日)、ねずみ男役・古川登志夫さん(30日)、ねこ娘役・庄司宇芽香さん(28、30日)、犬山まな役・藤井ゆきよさん(28、29日)、そして初参加の一反もめん役・山口勝平さん(30日)。29日は野沢雅子さんがビデオ出演した。また、まなの叔父・庄司のモデルでもある水木しげる記念館館長・庄司行男さんもはるばる鳥取から来京。21・22日の昼間に調布駅前広場で行われた「鳥取県PRステージ&グリーティング」に登壇したほか、サプライズゲストとして翌週の「鳥取コラボデー」両日にも飛び入り参加した。さらに、第65話のダジャレ好きな野沢雅史知事のモデルとなった鳥取県知事・平井伸治さんが鳥取県庁ビルの屋上から鬼太郎コスプレ姿でコメントする映像も上映。何が飛び出すかわからない進行に、改めてイベントスタッフの並々ならぬエンタテインメント精神を垣間見る思いだった。
▲11月21日(土)と29日(日)の昼の部では、上映の間に第6期・鬼太郎ファミリーによるキャラクターショーが開催。妖怪の名前当てクイズやダンス、写真撮影などが行われた。

30日のトークでは、初参加の山口勝平さんにまつわる数々の逸話が披露された。同じ博多出身である永富大地プロデューサーと山口さんが、本来は鹿児島県の妖怪である一反もめんに博多弁をしゃべらせることにしたこと。水木プロダクションにも理解をいただき、毎回、永富プロデューサーがシナリオの博多弁チェックをしていたこと。また、山口さんの名アドリブ「コットン承知!」誕生のいきさつや、同じく山口さんが明かすレジェンド・野沢雅子さんについての微笑ましいエピソードなど、スタッフやキャストの楽しい交流が伝わってくる話題が目白押しだった。

千秋楽となるこの日は、水木さんのご命日『ゲゲゲ忌』当日でもあり、奥様の武良布枝さんからのお手紙が会場に届いた。庄司宇芽香さんが、涙をこらえるように全文を代読する姿が心に残った。

(C)水木プロ (C)水木プロ・東映アニメーション

■第6期放送終了後初の開催となった「ゲゲゲ忌」の意義と今後への期待
『ゲゲゲ忌2020」』開催は、企画運営スタッフの信念と決断が実現させた新たなる一歩だった。何故なら、2018年以降、東映アニメーションが同イベントに協力してきた背景には、紛れもなく『ゲゲゲの鬼太郎』第6期放送という後押しが関係していたからだ。第6期の放送終了後、初めての開催となった今回の『ゲゲゲ忌2020』で、コロナ禍ということもあり、上映&トークを中止する選択肢は十分に考えられたと思う。そこを、勇気を持って敢行した(しかも無事に千秋楽を迎えられた)ことは、『ゲゲゲ忌』の第2ステージへの道を拓いたとも感じている。

2018年以降、『ゲゲゲ忌』に加わった新たな魅力である「上映&トーク」という要素。それは、6期だけでなく、1期から5期までの歴代『ゲゲゲの鬼太郎』に公平な光を当て、それぞれの作品に敬意を持って接したことがとても重要である。そして、スタッフとキャスト両方のゲストを各期別に招き、当時の逸話を話してもらうだけでなく、的確な台詞を配したオリジナルシナリオをもとに掛け合い芝居をしてもらうコーナーを用意したこと。それは、小さい頃に最初に出会ったアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』の時代へとタイムスリップするような感覚を、参加したファンそれぞれに与えたことだろう。だからこそ、第6期が終了したことは大きな障害にならなかったのだ。

第6期もまた第1~5期と等しく、ある世代にとっての『ゲゲゲの鬼太郎』原体験となり、今後、公平な時間軸の一つに組み込まれていくことが想像出来る。この「公平性」を実現し得たのは、上映&トークイベントを先頭に立って切り盛りしてきた永富プロデューサーの裁量に負うところが大きい、と考える。今回の『ゲゲゲ忌2020』では、別作品の準備で多忙な永富プロデューサーの意向をアシスタントの高見暁プロデューサーが的確に引き継ぎ、イベントプロデューサーとして実務を全うした。

今まで、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』が放送終了すると、次の期が始まるまでには厳然とした空白期間が置かれていた。ところが、今回は少し様子が違う。この「ゲゲゲ忌」の年次開催が今後も続けば、いつか生まれるだろう第7期の企画内容、第6期との因果関係などには、これまでにない新たなチャレンジが誘発される可能性がある。そんな興味を抱けるのは、それだけ「ゲゲゲ忌」という試みが明確かつユニークなスタイルをもち、しかも成功を収めているからだ。

水木しげるさんが手掛けた一つの原作漫画をもとに、6種類のアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』が生み出された。キャラクターデザインもキャスティングも異なる。シナリオや演出にも、それぞれの時代性が色濃く反映されている。にも関わらず、オープニング主題歌は同じ原曲が使われており、最低限のイメージの統一は保たれている。しかも、そこには不思議と明確な優劣はない。それぞれの期にはそれぞれのファンがいて、何年経っても愛着を持ち続けている。各期のアニメ版は、原作漫画の子として血のつながりを持ち、世界観の「かすがい」で結び合っている。漫画原作に基づく日本のTVアニメ史の中で、こんな共存が行われている作品は極めて特異なのではないだろうか。そこには、全シリーズを東映動画(東映アニメーション)という一社が製作してきた、ということも鍵になっているように思う。

そんな『ゲゲゲの鬼太郎』ならではの特異性があるからこそ、『ゲゲゲ忌』もまたイベントとしてユニークな存在になり得る。コロナ禍がいつ終息するか予断を許さないが、スタッフの皆さんには是非、挫けずに来年以降も『ゲゲゲ忌』を継続していってほしい、と切に願う。

(C)水木プロ (C)水木プロ・東映アニメーション

当記事はアニメージュプラスの提供記事です。

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