ザ・モアイズユー「絶対にこの3人で歌い続けていくって決めました」 迷い、見失い、見つめ直した先に見えたものとはーー有観客ワンマン・東京公演をレポート

SPICE

ザ・モアイズユー 有観客ワンマンライブ
2020.12.21 下北沢SHELTER


9月から4ヶ月連続で配信シングルを発表したザ・モアイズユー。彼ららしい耳に残るメロディを紡ぎながらも新たな試みにトライし、それぞれ異なった方向性を打ち出した4曲になっていて、なかにはライブという空間を強く意識した楽曲もあった。それを生で早く聴ける日が来るといいのだが、ご時世的になかなか難しいかもしれない……と思っていたのだが、バンドは大阪と東京にて待望の有観客ワンマンライブを開催することを急遽発表。このレポートでは、12月21日に下北沢SHELTERで行なわれたライブの模様をお届けする。ちなみに、これが現体制になって東京での初の単独公演だ。

SEが流れる中、Dr.オザキリョウ、Ba.以登田豪、そしてGt.本多真央の順でステージに登場。拍手で迎えられた3人は楽器を手に取った後、ドラム台の前に集まり、円陣を組み持ち場に戻ると、オザキが躍動感たっぷりにドラムを叩き出した。その高揚感を引き上げていくようにギターとベースもそこに加わり、興奮がピークに達したとき、本多が力強くかき鳴らしたのは「fake」。ど頭からパワフルなバンドサウンドを一気に走らせていく。間髪入れずに突入した「何度でも」も、一音一音に込められた気合いがとにかく凄まじく、彼らがこの日のステージに賭けている想いがビシビシ伝わってくる。
ザ・モアイズユー
ザ・モアイズユー

ザ・モアイズユーの音楽は、一聴すると、メロディアスであり、そこに乗せられている言葉を大切にしていることがわかるのだが、それでいて、各楽器隊の主張が非常に強いところもポイントのひとつ。ボトムをしっかりと支えながらも、ときに耳に残るフレーズをぶち込んでくる以登田のベースも、身体の芯から突き上げてくる強烈なビートを繰り出すオザキのドラムも、時折がなり気味に声を張り上げつつ、高揚感を煽る印象的なフレーズはきっちりと弾く本多の歌とギターも、とにかく熱い。「旅は続く」では、ライブハウスの壁をぶち破っていきそうなほどの雄大な景色をたった3人で描き出したり、「久し振りの曲をやります!」とコールして始まった「Tonight」では、以登田が「行こうぜ!」と叫んだりと、エモーショナルな展開にひたすら興奮されられた。

それだけでなく、この季節になんともふさわしい「雪の降る街」では、センチメンタルな空気でフロアを優しく包み込んだりと、様々な顔を見せてくれる。また、曲はもちろんのこと、その繋ぎ方も実に絶妙。親密で温かな空気が漂うセッションから始まった「トーキョー・トレイン」や、そのタイトルのごとく、「花火」では、儚くも美しく幻想的な始まりから、スムーズかつドラマティックに曲へ入っていく。彼らの曲を聴いていると、そこに描かれている物語や景色が自然と頭に思い浮かんでくるのだが、目の前で演奏されていることによる生々しさや、曲の雰囲気をより増幅させていく繋ぎによって、その光景がより鮮明なものとして目の前に立ち上がってきた。
ザ・モアイズユー
ザ・モアイズユー

連続配信シングルの楽曲達は、セットリストの要になる部分で登場。うだつがあがらない日常に伸びやかなメロディでエールを送る「環状線」ではフロアから手が上がり、「悲しみが消える頃」では、とてつもない喪失感がフロアに押し寄せていく。音源のインタビューで“やさぐれ感”というワードが出ていた「19」は、勇ましく突き進んでいく3人の音がとにかくスリリング。キレキレの演奏を見せつけていた。そして、この曲のラストには〈このままで終わるなんて思っていないよ〉という一節があるのだが──そのフレーズは、いまの彼らの想いをそのまま表しているようにも思えた。

新型コロナウイルスが猛威を振るい、多くの人たちが様々な傷を負った2020年。例外に漏れることなく、ザ・モアイズユーもその打撃を受けた。5~6月に予定していた全国ツアーは、当初は延期のアナウンスがされていたが、収束の見通しが立たないことから全公演中止に。また、結果的に4ヶ月連続配信という形になり、楽曲のアレンジを詰める期間が生まれることにはなったのだが、本来であればこれらの曲は1枚のEPとして発表する予定で、制作も一時ストップしてしまっていたと、以前インタビューで話してくれた。

ザ・モアイズユー
ザ・モアイズユー

この日のMCで、本多は「音楽をやっている人間として、何をしたらいいのか、正直何回も見失いました。バンドをやっていく意味、自分の道を疑って過ごす日が、何回もあった」と、その当時のことを振り返っていた。しかし、そんな迷いが頭をよぎるたびに、自分とバンドこれまで辿ってきた道を見つめ直していたそうだ。音楽を初めて好きになった日のこと、バンドを始めたときのこと、自分たちの音楽を求めてくれる人たちのこと。そうやって自分を奮い立たせてきたと、静かに、それでいて力強い声で話す。

本多「こんなところで、こんなことで終わってたまるか。絶対に。今日来られなかった人たちが、大手を振ってライブハウスに遊びに来て、音楽を、モアイズユーを観てもらえるその日まで、絶対にこの3人で歌い続けていくって決めました。絶対に、春は来ると信じて、一曲やります」
ザ・モアイズユー
ザ・モアイズユー

柔らかなタッチでギターを爪弾き、歌い始めたのは「桜の花びら」だった。目を閉じ、万感の思いを込めてスロウナンバーを歌い上げる本多に寄り添うように、以登田もオザキも音を重ねていく。〈夢破れて足を止めた時 心の花が枯れたなら 今日のことを思い出してよ〉。その言葉をフロアだけでなく、自分に言い聞かせるように歌うその姿に、胸が熱くなった。そして3人は、「涙よりはやく」で再び駆け出していく。力強く音を放つ中、〈このまま僕らが壊れてしまう前に その涙より早く走れ〉と声を張り上げる本多は、「届いてるか!? これからも歌わせてください! ラスト1曲歌って帰ります!」と絶叫。この日のラストナンバーとなった「すれ違い」になだれ込んで行った。今回の連続配信の幕開けを飾った曲でもあり、当初予定していたEPの表題曲として考えていたこの曲は、彼ららしいセンチメンタルなメロディを擁しながらも、冒頭で記したように、ライブを強く想定して制作されたこともあって、凄まじい爆発力。今抱えている想いのすべてを吐き出すようにアグレッシヴな演奏を繰り広げるその様は、ロックバンド以外の何者でもなかった。
ザ・モアイズユー
ザ・モアイズユー

「まだまだやりたいことがたくさんある」。今の想いを淀みない言葉で伝えていた3人は、アンコールで「光の先には」を披露。「俺たちが何を歌って、どんなステージに向かって進んでいくのか、ずっと見せ続けられたらと思います」と、自分たちのこれからを宣言した彼らが、一体どんな道を歩んでいくのか。その先を、純粋に、心の底から楽しみにさせられたライブだった。

Text by山口哲生 Photo by mao

当記事はSPICEの提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ