『アーヤと魔女』美術にこだわる宮崎吾朗監督の知識と粘りに脱帽

『アーヤと魔女』背景・武内裕季さんのインタビュー後編は、美術デザインに込められたキャラクター像、そして宮崎吾朗監督の仕事の姿勢に迫る内容に。「もう一度機会があるならこの現場に戻りたい」という現場の熱気は、いかなるものか。

――美術デザインの中には、やはりそれぞれのキャラクターのイメージが反映されていたりするのでしょうか。

武内 ベラ・ヤーガの作業部屋やマンドレークの部屋は、その部屋の持ち主の内面を自分なりに考えながらデザインに取り入れました。ベラ・ヤーガは一見強い女性に見えるんですが、部屋の乱雑ぶりに様々な過去を引きずっている弱い部分もあるんじゃないかなと思えたし、そこに共感もしながら描いていました。

あと、マンドレークのことは絵コンテを読んでもあまり深くは理解できず……部屋を描きながら、ずっと「この人、こんな部屋で大丈夫なのかな?」って(笑)。でも自分のことが好きすぎて、さらに自分の殻に籠って過去にすがって生きている印象です。

――乱雑さと閉塞感を感じる部屋に、前に進めていない二人の立場が表現されている?

武内 そうなんです。そこにアーヤが入ってきて、どんどん新しい風が吹き込まれる、ということだと思うんです。

――吾朗監督との仕事はいかがでしたか。

武内 もともと建設コンサルタントの仕事をされていた方だから、(美術に関して)細部までこだわりがあるんですね。
例えば家の窓枠とか梁の木材の合わせ方は絶対チェックされるし、モデラーさんにドアの木材の木目の方向についてオーダーされているのを見たときは、最初は「ちょっと大変かも」って思ったんです(笑)。でも、この監督と仕事をすれば、絶対自分の実になるし、アーティストとしても成長できる、そう感じました。

しかも、吾朗さんは自分の頭の中に絵コンテで描いたもののディティールが入っているので。聞けば答えてくれるし、ぱっと本を開いて「ここにある」とか教えてくれる。単純に一緒に仕事をするっていうのが楽しかったのもありますが、言ってることが最初から最後までブレないリーダーとして居てくれたので、仕事相手として貴重な人に出会えたと思っています。

驚いたのが、吾朗さんがマンドレークの持っている新聞のモックアップ(模型)を自分で描いて作っていた時があって。多分、その時、それができるスタッフがいなかったんだと思うんですけど、「そんな地味で目立たない、それでいてめちゃくちゃ面倒くさい仕事を監督自らがやるんだ」と衝撃を受けたんです。

作品を完成させるためには、自分の仕事の範囲を自分で狭めるのではなく、やれる事は何でもやる。吾朗さんからそれを学び、気持ちを切り替えたのを覚えています。

――ちなみに、ジブリ作品では何が好きですか。

武内 私は『ハウルの動く城』が好きなんですが、今回「魔女の家」の作業部屋は、ハウルの寝室やバスルームも意識していました。魔法をモチーフにした作品が世に出たら、絶対に比べられる気がしたんです。……でも作品のメインとなる場所なので、絶対見劣りしない様に絵にしよう、負けたくない!って思って作っていました。あまり言わないようにしていたんですけれど(笑)。
(C)2020 NHK, NEP, Studio Ghibli

当記事はアニメージュプラスの提供記事です。

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