『アーヤと魔女』の舞台は「楽しい」と「汚い」が共存する作業部屋

『アーヤと魔女』の背景を担当した武内裕季さんは、本作が初めてのスタジオジブリでの仕事となった。宮崎吾朗監督の抱える世界のイメージを具現化する仕事は、いかなる形で進められていったのだろうか。

――武内さんは、具体的にどのようなお仕事をされていたのですか。

武内 私は美術デザインをメインでやっていました。「魔女の家」の外観や作業部屋、マンドレークの部屋などのデザインを描いたあと、CGで作った背景に、フォトショップでのレタッチで、ディティールを加えたり、絵として背景画に仕上げる事を制作期間全体を通してやっていました。

――では、イメージボードなども手がけられていた?

武内 イメージボードは吾朗さんですね。私はそれを基にして美術デザインを描きました。自分の作業で困ったら、吾朗さんのイメージボードを見て立ち戻っていたので、地図か羅針盤の様なものでしたね。ディティールなんかも緻密に描かれているので、吾朗さんがボツにしているものからも引っ張ってきたりしました。

――実作業に入るにあたり、吾朗監督からオーダーなどはありましたか。

武内 作業部屋を描くに当たって、ただ汚いばかりだとつまらなくなる、「汚い」と「楽しい」が共存してて、なおかつ「仕事場として生きている部屋」というのを大事にやってほしい、というオーダーをいただきました。それは、ずっと最後まで強く意識していたところです。

――魔法で使ういろいろなものが置いてある棚も、細部まで細かく描かれていますよね。置いてあるものを決めていくのも結構大変だったんじゃないかと思うんですが。

武内 魔法の工房と聞くと、実験器具なんかがきれいに揃って、ラベリングされた瓶に材料が入っていて……なんていうイメージがあるじゃないですか。吾朗さんと(監督補佐の)郡司さんによると、ベラ・ヤーガの呪文作りの材料は自然の素材、例えば種やハーブ、動物の一部みたいな素材で、それを生活してる中で出てきた瓶や空き缶なんかに入れて置いている感じにしたい、というコンセプトだったんです。その話を聞いて、イギリスの蚤の市の雑貨の写真を集めたり、色が楽しくて地域の特色が出ているものを探して、イメージをつなぎ合わせたりして行きました。作業量は膨大でしたが、作業部屋にどう落とし込んでいくかを考えるのは、ワクワクして楽しかったです。

――作業部屋の描写はすごい密度でびっくりしました。

武内 アーヤたちのバックで見える場所ですし、このお話は「恐ろしい敵」みたいなものがあまり出てこないので、危険なイメージも加味したほうがいいなと思って。押し寄せてくる背景、になる事を意識して物量を入れていきました。

――確かに圧迫感、威圧感がありますよね。

武内 ありがとうございます、そう思ってもらえたら嬉しいです。

――イギリスにもロケハンに行かれたんですよね。特に印象に残っている場所はありますか。

武内 コッツウォルズに行った時、着いたのが深夜だったんですが、次の日起きたら晴天で明るくて日本とは空気感が違っていたんです。イギリスの植物って葉が薄くて、緑がキラキラしていて、芝生の朝露も輝いていて、感動しました。その日は1日ぶらぶら散歩して過ごしました。羊や馬が放牧されているところや、丘がつながって遠くまで続いているところ、日本とは違って、パンみたいな形で低い位置を流れる雲などを見られました。まるで絵本の中にいるみたいでした。それは写真などで説明されても伝わりにくいものだったので、実際に見られてよかったなと思いました。
(C)2020 NHK, NEP, Studio Ghibli

当記事はアニメージュプラスの提供記事です。

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