コロナ禍で苦境にある“夜の街”を応援 玉袋筋太郎が語るスナックの魅力とは

しらべぇ




11月30日、全日本スナック連盟が、「玉ちゃんの“夜の街”応援プロジェクト」を開始した。

このプロジェクトは、コロナ禍で苦境に立たされている“夜の街”を救うべく、ナイトシーンにおける新型コロナウイルス感染拡大予防の啓蒙と、市場の活性化を目指すための取組である。

しらべぇ取材班では今回、全日本スナック連盟の会長であり、自身もスナックを経営する、お笑いコンビ・浅草キッドの玉袋筋太郎に「スナック玉ちゃん 赤坂本店」にてインタビューを実施。同プロジェクトを発足した理由や、スナックという場所の魅力について話を聞いた。

画像をもっと見る

■みんな座して死を待つだけ




―――まだまだコロナの猛威が収まらず、今回のプロジェクトが発足されたときとは、夜の街を取り巻く状況もまた変わってきました。

玉袋:1月11日まで時短要請が延長されたということもあり、ますます夜の街を応援しないといけないな、と思いました。年始休みの店も多いだろうから、そこに(時短要請を)合わせたのはわかる。わかるけど、12月のこの時期(取材は12月中ば)はね…。

GO TOトラベルが一斉に中止になったわけですが、GO TOナイトはなかった。鼻から除外されていることを考えると、今回の時短営業が勝負の3週間なんて言ってるけど、うちらの業界は勝負の10ヶ月近くになってるわけよ。

これはね大変。この勝負は長い。まだまだ先が見えない。応援しないといけない。そうなると、旗を振るのは誰だ、と。だって、この状況だと、みんな座して死を待つだけだからね。なかったものにされそうな業界じゃない?

なかったものにされそうな業界なんだけど、夜の街がなくなっちゃうと、バランスが崩れるというのか、三輪車のバイクの一輪が外れるようなものだから、経済全体も走れなくなると思うわけ。

その中で必死に頑張っている人たちがいるし、悪者扱いされがちだけど、自分たちで感染予防対策を前からやってるんです。それを徹底して、土俵際いっぱい、本当は土俵際を割ってるんだけど、勝負あった、って言われてるけど、物言いをつけようという気持ちです。


関連記事:「長谷川京子からご報告」 YouTubeに投稿された動画に反響相次ぐ

■沈没船だけど、応援したい


―――プロジェクトのホームページには、全国の感染予防対策を講じているスナックの例が紹介されていますよね。玉さんのスナックも、空気清浄機が設置されていたり、アクリル板が立てられていたり、対策を徹底していることがうかがえます。

玉袋:ちゃんとやってるんだ、っていうことは言っていかないと。確かに、(業界は)沈没船だよ? 沈没船だけど、本寸法でやってて沈んでいっちゃう人がいるっていうのは、悔しいじゃない。そこはね、自分とこも含めて、応援したい。

昼の飲食店とかも含めて、今、全て焼け野原だと思ってる。でも、敗戦後の復興もそうだけど、残った人たちがもう一度立ち上がろうっていうパワーが日本人のDNAに染み付いてるし、すごいと思うんですよ。

だから、負けそうな人の心にも火をつけたい。「火をつける」って言うとややこしいけど、頑張ってください、って。馬鹿なことかもしれないよ? クラスターが発生してるような場所だから、そんなのいらない、っていう人もいるわけじゃん。

実際にそういう事例もあったけど、失敗があったところもそれを反省して頑張ろうとしてるって聞くし、それなら、うちも他のスナックも徹底して一緒に頑張ろうって。

タイタニックでズルしたみたいに、ズルしてる人もいるかもしれないよ。でも、目くじら立てる必要はないな、って。沈むときは沈むから。


■売上は前年比6割減




―――「“夜の街”応援プロジェクト」では、スナックの魅力を伝えるYouTubeチャンネルも開設されました。

「スナックが高度経済成長期を支えた」とおっしゃっている動画を見させていただいたのですが、ちょうど『島耕作』シリーズを読んでいたので、すごく頷きました(笑)。

玉袋:島耕作に出てくるママたちは、すごいネゴシエーション力だよね(笑)。でも、本当に、夜の街があるから、経済が回ってると思うよ。

今じゃ少なくなっちゃったけど、赤坂界隈にも昔、料亭があったことを考えると、政治もそうじゃないかな。だから、(夜の街が)このまま滅びていくっていうのはね。

ちょうどこの前、自分のお店の一期から四期の売り上げを見直してみたんだけど、まあすごい。前年比で見ると、(売上が)60%落ちなのよ。未払金もあるし、ギリギリだね。コロナが流行り出す前に内装を変えちゃってさ(笑)。

■行きつけの町中華でも




―――すごいバッドタイミング…。でも、こんな世界になるなんて誰も予想できなかったわけで、きっと、同じようなお店もたくさんありますよね。

玉袋:夫婦でやってる、行きつけの町中華があってさ、コロナ禍で持ち帰りを始めたりしてたんだけど、そのご主人が病気で入院しちゃって。なくなってほしくないけど、もう店も閉めちゃうのかな、って思ってたわけよ。

そしたら、2ヶ月くらいして、マスターも術後で大変だけど、また店を再開して。フランクに話せる間柄のご夫婦だから聞いたんだよ、「もしかして店がなくなっちゃうんじゃないかと思った。縁起でもないことだけどよ」って。

じゃあさ、マスターが「俺だって辞めたいけど、病気とコロナの前に厨房機器を全部入れ替えたんだよ。そのローンがあるから、ここを辞めるときは俺が死ぬときだ」って、言うわけ。シャレっぽく言ってるんだけど、それって突き刺さる言葉だよね。

個人の飲食店もだけど、スナックとかクラブとかも独立独歩でやってるところが多いから、命削ってやってるってことがわかる。


■お涙頂戴が目的ではない




―――売上がそこまで落ち込んだということは、常連さんもやっぱり来なくなってしまったということでしょうか?

玉袋:常連さんたちも「行きたい」って言ってくれてたんだけど、会社からもお達しがあったらしくて、ドンと来なくなっちゃったね。人って人情ってものがあるから、そういうときに行けなくなると、そのあとも行きづらくなっちゃうんだよ。

でも、自粛要請が解除になって、「カムバックサーモン」「恥ずかしながら帰って参りました」つって、また戻ってきてくれる人もいたんだけど、またこうなるとね。抑止することは大事なんだけど、他の大事なものも失っちゃうんじゃないかって思うんだよね。


―――先ほど感染防止対策の話をお聞かせいただいたのですが、玉さんのスナックはお店に入れる人数も少なくしているんですよね。

玉袋:集客は50%、30人入るところを15人までにしました。スナックに来るお客さんも選球眼じゃないけど、対策やってないから行きたくないな、って選ぶ時代になってる。ちゃんとやってるかどうかで、成績は変わってくると思いますよ。

俺は芸人で「いいじゃねえか」って気質だけど、うちがもし(感染予防対策を)やってなかったら、お客さんはもう来てないと思うよ。やってて、マイナス60%っていうのは最後のギリギリの線だろうね。

売上で一生懸命やってることがわかると思うから、数値で出したらいいと思いますよ。どの店もそれはもっと発信していってもいいかもしれないと思います。

勘違いしてほしくないのが、このプロジェクトはお涙頂戴じゃないんですよ。商売なんて波の荒れがあるところで、景気が底をつくことなんていくらでもある。行列ができていた有名ラーメン屋も潰れるしね。

ただ、今回のことで、底だと思っていたところより深い、未曾有の底があるってことがわかった。ダイオウイカを発見したくらいのことですよ。ダイオウイカが発見されたら嬉しいけど、こっちは大赤字だからね。

■商いは人を喜ばせることだから




―――玉さんは緊急事態宣言中はどのようなことを考えられていましたか? 状況が状況だけに、ネガティブな方向にしか物事を考えられなくなった人も多いかと思います。

玉袋:落ちちゃうよね。俺も落ちた。タレントの仕事もガクッとなくなっちゃったしさ。考えてみたら、俺の芸能界の仕事って三密を仕事にしてたわけよ。それに気づかせてもらったから、最初はこの野郎、って思ってたけど、まずは感謝だね。

その密を取り返そうって気持ちになった。寝て起きてを繰り返していくうちに、目くじら立てることでもない、前向きにやるしかないよって。商売をやってる人は、その中でも笑っていこうっていう気質はあるんじゃないかな。

商いって、人を喜ばせることだから。そうじゃねえと、サービス業なんてできねえよ。だって、個人でやってるスナックのママだってさ、大儲けしたくてやってるわけじゃないもん。

自分の家族が食えて、子供たちが学校に行けたらって、身の丈にあってやってる商売で、お客さんに赤字覚悟で過剰なサービスもしちゃうんだよ。それが商売人だもんね。挫けられないよ。


■スナックは若者向き?




―――気づき、で言うと、今回、玉さんの動画を見て、スナックの魅力にとても惹きつけられました。28才の自分にはまだ早いと思っていたのですが、今は行ってみたくて仕方ないです。

玉袋:俺、スナックって、すごく若者向けだと思うんだけどな~。犯罪を犯さない『グランド・セフト・オート』(犯罪を中心にしたゲームソフト)くらいオープンでフリーなスペースがあって、そこで酒を飲んで、ミッションを攻略していくようなゲームだと思うと、すごく楽しいと思う。

今、こういう時期だから、若い人がお客さんで来てくれたら、なおさら歓迎するよ。もちろん、ルールを守ってさ。俺だって53才だけど、スナック業界で言ったらまだ青二歳だから。

自分の親もこういう商売をやってたし、若い頃から、この世界を面白いと思ってたんですよ。どこかの名店がなくなる、って言ったら、そこに馴染みのない人たちが集まることがあるじゃん? スナックも業界的に駆け込み需要があると思う。

一度立ち寄ってもらえたら、これは残さないとダメだ、っていう気持ちが芽生えてくれたら嬉しいよね。でも、頼むから来てくれ、ってわけじゃないよ(笑)? 無理矢理こっちこい、って言ったら、それこそ昭和の嫌な因習になるわけじゃん。

フリーで入れて面白い、日本発祥の世界があるんだぜ、ってことを知ってほしい。パワースポットブームがあったけど、それと一緒だな、って思う。パワースポットは心で受け止めるものが多いかもしれないけど、スナックは目で見て感じられるから、絶対に楽しいと思ってもらえると思う。

■スナック通いで基礎体力ができた


―――玉さんが最初にスナックと出会ったのは、どのようなきっかけだったのですか?

玉袋:赤提灯で一緒に飲んだ親父と意気投合して、もう一軒行こうぜ、って連れていってもらったのがスナックだったんだよ。巻き込まれだけ(笑)。

嫌だな、って思う人が8割、9割だと思うけど、俺はそこに巻き込まれてみよう、夜に流されてみよう、っていうのが面白かったんだよね。性に合った。ノンフィクションのドラマの主人公になれるというか、ゲームの世界に入っていけるというか。

当時は給料も15万円くらいで、赤提灯で一週間に一回、一杯飲めるくらいだったけど、20代前半くらいで浅草のスナックのおじさんたちと一緒に飲めたのは、いい経験になってると思うよ。

プロレスラーで言うところの、スクワット1000回やり続けて基礎体力ができた、みたいな。


■今がチャンスだから




―――今の若者は交際費にお金をかけられない、なんて話もありましたが、玉さんは当時、同じようなお財布事情にも関わらず、飲み歩いていたんですね(笑)。

玉袋:俺のほうがキツかったんじゃない(笑)? でも、俺の場合、赤提灯とかスナックで、人の話が聞けるのが面白いなって思ったの。

テレビで特集されるのって、成功した人だけじゃん? だけど、そういうところで飲んでるおじさんの話を聞くと、俺の中では、葉加瀬太郎が流れるわけよ。あの頃はまだ『情熱大陸』もやってないから、気持ちで言えばね(笑)。

だから、逆張りで考えると、今はそのチャンスだからさ、ぜひとも若い人にはスナックに来てほしいな、って思うんだよね。

■ピンチだけど、夜の街はなくならない




―――逆張り、と言うと、コロナでスナックがなくなってしまう恐れもある状況だから、ということでしょうか?

玉袋:とか言いながら、この商売はなくならねえのさ。やべえのはやべえけど(笑)。


―――今後の夜の街がどうなっていくのか、玉さんの予想を最後に聞かせていただこうと思っていたのですが、夜の街はなくならない、と?

玉袋:うん、なくならない。夜の街って受け皿がでっけえからさ。俺の体感で自分の中の実数はじいてみるとさ、離婚してスナックで働き始めた人が多いのよ。アルバイトレディから始めて、そこから何年か勤めて、自分の店を持って、子供を養って。

今は人件費が削減されて、減らすわけじゃない? そのセーフティネットは、こういうところにあると思うの。上手く回ってるわけだよ。それが全部できてて、社会が成り立ってると思ってる。

何回も言うけど、危ないは危ないのよ。でも、なくなったらどうなるんだよ、って。それこそSFのさ、秩序のなくなった近未来になってしまうんじゃないかって思うんだよ。

同情商売にはしたくないけど、ただ、夜の街の底力っていうのを個人個人のスナックで見せて、信用を取り戻していけたら、って思うよ。まあ、もともと、夜の商売に信用なんてないんだけどね(笑)。

・合わせて読みたい→成城石井で見つけた“丸ごと食べられるカニ”が最高 「フタを開けたら…」

(取材・文/しらべぇ編集部・野瀬 研人

当記事はしらべぇの提供記事です。

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ