『鬼滅の刃』のコラボイラストは作者が描いてる? 炭治郎たちが探検家やSLを運転

日刊SPA!

 本屋に入れば鬼滅、コンビニに入っても鬼滅、駅やイベントスペースでも鬼滅、温泉施設でも鬼滅――。街を埋め尽くす国民的ヒット作『鬼滅の刃』はコラボ商品や関連グッズ。主人公・炭治郎や禰豆子たちが様々な“商品や売り子”になり、確実に日本経済を押し上げているといっても過言ではない。

作品内では時に全身血まみれで鬼と激闘を繰り広げていたが、コラボで見かける彼らはお正月を楽しんでいたり、探検家姿、湯上がり姿に音楽家に駅員だったり……。これらのコラボイラストは誰が書いているのだろうか? いくら連載が終わったとはいえ吾峠呼世晴先生がひとつひとつ書いているとはさすがに思えない。

ならばアシスタント? それともアニメ制作会社? そんなコラボ商品で使われるイラストが書かれる流れについて、週刊漫画誌との関わりが深いフリーランス編集者Aさんに話を聞くことができた。

◆コラボイラスト、誰が書いている?

――コラボイラストですが、誰が書いてるんですか? 連載も終わったし吾峠先生が書いてるとか……?

「作者本人が書くことはほとんどないです。作者は漫画をちゃんと書くのが仕事だし、出版社も作者に書かせるのが仕事。まず連載中に書くことはありえないです。『鬼滅の刃』は連載も終わっていますけど、さすがにないです」

――週刊連載中に、余計な仕事入れられないですもんね。

「高額の広告案件でも作者本人が書かせるのは難しい。ただ、“大物アーティストが歌う自作のアニメ主題歌のCDジャケット”みたいな本人の作品と関連性が高い仕事とか、あと作者本人と強いコネがあったり、生まれ故郷の自治体関連など、先生自身にやる気がある場合は可能性ありますね」

――では、今街に溢れてる『鬼滅の刃』コラボなどのイラストは、どういう流れで書かれるんですか?

「もし出版社に『作品とコラボしたいんですけど』って話がきたら、まず『版権窓口のアニメ会社に連絡してください』って伝えられます。『鬼滅の刃』ならアニプレックス、『ワンピース』なら東映アニメーションですね。そこで許可が降りたら、いわゆる制作委員会に話がいきます。そこでOKが出たら、実際に書くことになるのはアニメの制作を行っている会社ですね」

――『鬼滅の刃』でいえばUfotableですね。

「はい。そうだと思います」

――では、その中であのイラストを書いてる人は誰なんですか?

「アニメ制作会社でも序列があります。アニメ作品のキャラクターデザインを担当した人が描くオファーがきますが、このクラスはもう次の仕事してる場合も多く、スケジュールはまず押さえられない。となると次は作画監督。その人が忙しい場合は原画書いてた人、という流れで、空いてる人が書く形になると思います」

――では実際の『鬼滅』のアニメに携わってる人ではあるんですね。

「基本そうだと思います。広告仕事はギャラも良かったりするので、キャラデザインの人もフリーランスだったりするとやりたがると思うんですけど、なかなかそうはいかない。実際は原画担当の人がやることが多いと思いますね。ただ『鬼滅』なんかはこれだけコラボがあるから、下請けとかいろんな人が描いてるかもしれないです」

◆出来れば先生のチェックはない方がありがたい

――コラボ商品では、あんまりイメージと違いすぎるとファンから引かれそうですが、そういう線引きはどの段階でなされるんでしょう。

「最初に話を持ってきたクライアント、広告代理店、製作委員会の間で、入れてほしい要素を考慮して、ある程度ラフなデザインを考えてます。そこと絵書く人の間で、ラフ画出てきて、色をつけて、とやりとりしていく感じです」

――製作委員会でチェックするのはわかりましたが、先生ご本人はチェックしてるんですか?

「まず出版社側のチェックとしては、例えば集英社では大きな作品に関しては作品の内容を担当する編集と、メディア担当の編集とふたりついてるんですが、彼ら編集を中心として監修を行います。そこから先生の希望があれば先生本人のチェックは行ってると思いますが、そこは先生によりですね。『チェックしたい』って先生が言えば、させないわけにいかないですけど、見たいってことはこだわりが強いわけなので、そうなるとコラボ自体の締切が厳しくなってしまうので……。そこはこだわりない方が企業としてはありがたいですよね(笑)」

――それは確かに。

「あと集英社なら『ライツ事業部』という版権を担当する部署もあるので、そこのチェックもあるはずです」

――そうした何重ものチェックがあった上で広告や商品パッケージとして世間に出されるんですね。

「そうしたイラストは基本的にはアニメ制作会社が書くパターンがほとんどですけど、中には商品とのコラボでそっちに寄せなきゃいけないパターンもありますよね。最近ヒットしたものだと、『鬼滅』と『ビックリマンチョコ』のコラボとか。ああいうのはコラボ先がイラストを書いて、それをチェックする形だと思いますね」

◆コラボ価格では業界内ナンバーワンは間違いない

――では、ぶっちゃけ聞きたいんですがコラボの金額ってどんなもんですか?

「さすがにそれはもう規模がデカすぎていくらとは言えないですけど(笑)。こういうコラボってたとえば吉野家でやったら松屋やすき家では出来ないわけじゃないですか? 『1業種ではコラボは1社』というのが決まってるので、選ぶとしたら当然いちばん大きい額のところに決めるので、各業種もっとも大きい予算のところが選ばれてると思います」

――なるほど、各業種の最大の広告予算は取ってそうですね。

「でも例えば吉野家が『ワンピース』コラボしてて、じゃあ次に『鬼滅』も、というのは現実的に難しいと思いますね。ビッグタイトルのコラボは大手1社に集中せずある程度バランスよくお願いしてるところはあるはずなので、そういうタイミングの当たり外れはあると思いますね」

過去の人気漫画のコラボに比べてもその多さはズバ抜けている『鬼滅の刃』。Aさんによると「現在もコラボの引き合いの数が凄すぎて対応しきれてないらしい」とのこと。この多さはさすがに食傷気味という声も聞かれるが、このコロナ禍を明るく照らしているのは間違いない。

原作は終わってもアニメ版がしばらく続くことを考えると、このコラボイラストが今後どんなバリエーションを見せていくか、さらにコラボ界の大先輩・ハローキティを越えることができるか? この先が楽しみだ。

(取材・文/大坪ケムタ)

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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