金髪モヒカンの27歳がつくば市議に。「勝手につくば大使」は、なぜ当選できたのか

日刊SPA!

 今年10月、茨城県つくば市に「金髪モヒカン」の市議が誕生した。彼の名前は、「勝手につくば大使」こと小村政文氏(27)。その風貌から当選後、テレビにもたびたび取り上げられ、Twitterではトレンド入りもした。「なんでこんな若者が市議に当選?」という声もあるかもしれない。

その理由を探りに、つくばまで本人に会いに行ってきた。

◆金髪モヒカンの青年が選挙に立候補した理由

勝手につくば大使(以下、大使)は、筑波大学在学中の2015年から、市の公認を得ずに「勝手に」大使としての活動を開始した。活動内容は主にフリーペーパーの発行(現在は第5号を制作中)と市の魅力を伝えるブログの運営。ブログは自ら現場に赴き取材をするというスタイルで、すでに約700記事を配信している。もはや狂気といっても過言ではない。

さらに大使の狂気は、その活動費をすべてアルバイト代でまかなってきたという点にある。3年前に日刊SPA!で配信された記事『収入は3年間で2万円、茨城限定の有名ブロガー「勝手につくば大使」の過酷すぎる生活に密着』でお伝えしているように、相当な苦労人だ。その金にならずともめげずにコツコツ活動してきた姿を、つくば市民は5年間ずっと見てきている。

◆街を歩けば「大使!」と声がかかる

大使がこれまで関わってきたつくば市民の数と信頼の厚さは計り知れない。街を歩けば、「大使!」と市民から声をかけられる。大使のブログを見ながら、「今日はつくばで何をしようかな」と予定を立てる市民も多い。全国的にはまだ無名ではあるが、つくば市というフィールド内では驚異的な知名度を誇るのだ。市議会議員選挙への立候補は、むしろ「満を持して」という感じがあるが、その動機は一体は何だったのだろうか。

「私は名前の通り、これまで“勝手に”大使としての活動を続けてきました。議員になることで勝手にできていたことができなくなるという不安もあります。しかし、どんな制約があるかわからないうえに、議員にならないとできないことが山ほどあるんじゃないかと考えました。これまでの大使としての活動に、議員としての活動もプラスすることで、さらにつくばを理解することができる。つくばのために自分ができることは何か、それが見えてくると思っています」

◆とにかく金がない大使の選挙活動

3年前の時点で、収入は3年間で2万円。活動費はもっぱらアルバイト代で……という大使の万年の悩みは、「とにかく金がない!」ということ。一般的な市議会議員選挙の費用は200~800万円と言われているが、いったい大使はどのようにして費用を用意したのだろうか。

「選挙活動に合計31万円しか使っていません。1万円はガソリン代、残りの30万円は供託金(のちに返還される)です。週6日、アルバイト先の居酒屋で死ぬほど働いて必死に貯めました。選挙カーやウグイス代など、一定数の票を取れば行政が出してくれますが、私は自家用車のつくば号(ナンバーが298)1台です。小さい頃から選挙カーというものがうるさくて嫌いでした。選挙カーで大声を出しながら街を回れば票を入れてくれると思っているなんて、市民を舐めるなと幼心ながらに感じていたんです」

◆つくば愛を叫び、2401票で当選

ショッピングモールや交差点などに立ちながら、大使はひたすら演説をした。朝は始発から、駅の前でおじぎだけ続けた。初日はなかなか言葉が出なくたどたどしかったが、「とりあえずやってみよう」という気持ちで立ち続けた。すると自然に、つくばに対する愛が言葉として出てくるようになった。「俺はつくばが好きなんだ! つくばの人たちに恩返しがしたい。ぜひ投票してくださいお願いします!」そう叫び続けると、車から手を振ってくれる人が増えてきた。

「当然ですが、選挙なんて初めての経験なので手ごたえというものがまったくわかりませんでした。手を振ってくれる人はいるけども、わざわざ投票所まで行って“勝手につくば大使”と書いてくれる人なんて、よっぽどじゃないといないのではないか。ふたを開けてみたら30票しか取れずに最下位落選なんてぜんぜんある。そんな得票数だったら、供託金は返ってこないし、ポスター代もビラ代も自腹になる。80万円以上の借金を背負ってまたさらに沈む……」

開票日はひとり家で震えながら、つくば市のホームページをひたすら更新していたという。結果は2401票で堂々の当選(定数28人中、19番目の当選)。現実だと思えず、力が抜けてパタリとそのまま眠りについた。

◆地獄のアルバイト生活からも脱出

当選してからは、毎日勉強の日々だという。政治や経済に関する基礎的な勉強、地方議員と行政の関わり、議員必携。また、過去の議事録や過去の資料を読み込み、つくばが抱える問題点を洗い出している最中だ。しかしながら、議員としてはもちろん、政治に関しても初心者である。4年間の議員生活を、大使はどのように過ごしていくのだろうか。

「普段、市議会議員がどんな活動をしているかって、市民は知らないと思うんです。当選した自分ですら知らないくらいですから。議員は何をしているのか、議会で何が決まったのか、市民は何が利用できるのか、議会の見える化を、主にYouTubeを使って私が進めていきます。本来、市議会議員は市民と行政を繋ぐ役割。まずは自分がその存在になることです」

もちろん、「勝手につくば大使」としての活動も続けていく。その活動はすべてつくばのためであり、つくば市議としての活動にも直結するからだ。これからは、議員報酬として月に手取り24万円程度が大使の手元に渡る。ついに地獄のアルバイト生活からも脱出ということになる。

「議員報酬はつくば市民の税金から支払われているものなので、これまでのアルバイト代とは意味合いも意識も変わってきます。いよいよ、つくばに生かされている、つくばがあってこその自分という気持ちになってくる。これまで応援してくれた市民の方々に、恩返しをする番です。アルバイトに費やしていた時間をすべてつくばのために割くことができる。そう考えると、武者震いがするほど楽しみで仕方がありません」

◆目標は「つくば大使館の設立」!

3年前の取材時に大使が掲げていた目標は、「勝手につくば大使1本で食っていけるようになること」だった。悪く言えば、自分本位の目標でもあった。では、現在の大使としての目標は何なのだろうか。

「大使館の設立です。つくば市には個性的な作り主、素晴らしい商品がたくさんありますが、つくば市は広く、作り主と市民が繋がっていない。地元名産品のアンテナショップをつくり、つくばの産業を支える一役を担いたいです」

金髪モヒカンの青年がつくば市議に当選したのは、「勝手につくば大使」がつくば市にとってなくてはならない存在であると、市民が確信したからにほかならない。<取材・文/國友公司>

【國友公司】

元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ