話題のBL『チェリまほ』は相手を思いやる優しさに包まれた人間ドラマだ

クランクイン!

 テレビ東京の深夜ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(毎週木曜25時)、通称『チェリまほ』が、話数を重ねるごとに評判を集め、満足度も高めている。累計80万部突破の同名コミックを原作としたラブコメだが、一見したタイトルの印象や、いわゆるBLものでもあることから、取っ掛かりは観る人を選ぶかもしれない。しかし切なく温かな恋愛ものであり、葛藤を抱えたキャラクターたちを丁寧に描いた人間ドラマになっている。

■童貞30歳主人公と、イケメン同期の純な恋

ネガティブ思考に陥りがちな、冴えないサラリーマンの安達清(赤楚衛二)は、童貞のまま30歳を迎えたことで、都市伝説と言われていた「触れた人の心が読める魔法」を手に入れてしまう。そして、社内指折りの爽やかイケメンで仕事もできる完璧男の同期・黒沢優一(町田啓太)の心の声を聞くことに。そこにあふれていたのは、熱く激しい安達への恋心だった…。

物語は第6話ラストに前半の山場を迎え、ついに黒沢が安達に「俺、お前のこと、好きなんだ」と告白。19日に放送された第7話では、なぜ黒沢が安達を好きになったのかが描かれた。

■安達の清い心と、黒沢の優しさ

安達清と黒沢優一、2人の性格はまさに名前が語っている。安達は、自己評価を下げがちなところはあるが、人を“清く”澄んだ心で見ることができる。初回で黒沢にマフラーを巻かれながら、彼の自分への思いを聞いたときも、「俺のこと、こんなに見ててくれる奴がいるなんて、思ってもみなかった」と受け止められた。

つまり「魔法」を持つ以前から、安達はフラットな目を持っていたのだ。だからこそ第4話で、恋愛に興味がない同僚女性の藤崎さん(佐藤玲)が、「やっぱり安達くん好きだなあ、私」「きっと私が恋愛に興味ないって言っても、そうなんですかって気にも留めない、はず」と思ったのだろう。ちなみに、この、普通を演じて頑張っている藤崎さんの視点が描かれたことも本作の支持を広げた。

安達は魔法を手にしたあとも、その力に困惑こそすれ、決して乱用はしない。能動的に使ったとしても、それは取引先の社長がご機嫌斜めで黒沢が困っていたとき(第5話)に、その理由を知って助けようとしたときくらい。むしろ魔法を得たことで、ネガティブさから一歩抜け出始めた安達を観た視聴者は、魔法を持ったのが安達で良かったと思える。

そして黒沢の「優しさ」。器用に見えて、心の中は常に大揺れの黒沢は、ひそかに安達への妄想を暴走させたりもするが、それでも常に「好きになってごめん」という思いを抱えており、決して、強引に迫ったりはしない。

そんな2人に共通する、人を思いやる温かさ。恋とは、相手を思うことに見えて、どうしても自分本位になりがちな感情だ。自己愛から、他人を傷つけもする。しかし安達と黒沢は、あくまでも相手のことを第一に思いやる。恋する相手に対してなのだから、当たり前じゃないかと思いそうだが、こうした“思いやり”は、とても貴重な行為なのだと、2人を見て気付く。その真摯(しんし)さに羨ましさを覚えるほどに。

■赤楚衛二と町田啓太だから生まれた心地よいバランス

安達を演じる赤楚は、1994年生まれの26歳。10代の頃から地元でモデル、タレントとして活動した後、2015年から俳優としての活動をスタートした。アマゾンプライムビデオ『仮面ライダーアマゾンズ』に出演した2017年に、『仮面ライダービルド』で万丈龍我/仮面ライダークローズを務め、2つの『仮面ライダー』シリーズに出演を果たす。昨年は、ドラマ『ねぇ先生、知らないの?』(MBSほか)で馬場ふみかとダブル主演を務め、フジテレビヤングシナリオ大賞受賞の単発ドラマ『パニックコマーシャル』でも主演を務めた。

そして、今年は咲坂伊緒原作、三木孝浩監督の映画『思い、思われ、ふり、ふられ』で浜辺美波、北村匠海、福本莉子と並び立ち、進路に悩む高校生をまっすぐに演じて印象を残した。『チェリまほ』は初の単独主演ドラマであり、ライダークローズとして「今の俺は負ける気がしねえ!」と叫んでいた茶髪の赤楚とは別人で、濡れた子犬のような瞳でキュンキュンさせる。

黒沢役の町田は1990年生まれの30歳で、劇団EXILEオーディションに合格して10年になる。LDH色の濃い『HiGH&LOW』シリーズや『PRINCE OF LEGEND』に出演するほか、志尊淳演じるトランスジェンダーのヒロインを支えていくまっすぐで気のいい親友を演じた『女子的生活』(NHK総合)、有村架純演じる聖の婚約者という当て馬ポジションを見事に演じた『中学聖日記』(TBS系)、 “ドロキュン”ドラマとして話題をさらった『ギルティ~この恋は罪ですか?~』(読売テレビ・日本テレビ)などで印象を残してきた。

今年だけでも、映画『前田建設ファンタジー営業部』でのスマートのスの字も浮かばないような発掘オタクの社員や、12月にNetflixで配信開始の『今際の国のアリス』での主人公アリスの親友・苅部など、演じる役の幅が実に広い。『チェリまほ』では完全に黒沢として立っており、安達への思いは本物だと信じられる。

そんな黒沢がついつい観察し、ほほ笑んでしまう安達の愛らしさを、赤楚が体現する。純でちょっとネガティブで、ドギマギ、ときにバタバタしつつも、相手のことを思う気持ちへ着地する安達を嫌味なく見せる赤楚、そして見た目がいいがゆえの苦しみや、安達への焦がれる思いと、それを隠そうとする葛藤を、ふとした“ため”や、瞳の奥にそっと滲ませる町田。それぞれがハマっているだけでなく、彼らの取り合わせも、この上なく心地よい調和を生み、互いを引き立てている。

■海外でも高評価 物語は終盤へ

エレベーターでの密着や、ガラの悪いお兄ちゃんたちが現れるピンチ、真剣な告白シーンなど、ときめかせの王道シーンが満載なのも本作の魅力。そして映画『ヒロイン失格』(2015)や『センセイ君主』(2018)など、モノローグを基盤としたラブコメを得意とし、笑いの中にもキャラクターたちの心情にきちんと寄り添ってみせる吉田恵里香の脚本が、コミックから実写へ見事に昇華させ、映画『チア男子!!』(2019)で長編デビューを飾った新進気鋭の風間太樹監督が、彼らの心の機微をすくい取るように、優しく美しく、彼らの姿を映し出していく。

本作は日本だけでなく、海外からも高い注目を浴びている。タイのBLドラマブームも手伝って、タイやベトナムなど、海外ファンからSNSに「感動した」「安達がかわいい」「キュンキュンする」と多くの反響が届いており、第7話は、ツイッタートレンド世界5位を記録。タイ、フィリピン、ベトナムなどで展開される映像配信サービスWeTVでの配信も決定した。

終盤に向け加速する『チェリまほ』。26日放送の第8話では、実はこちらも魔法使い化している、恋愛小説家で安達の親友の柘植(浅香航大)と、宅配業者のお兄ちゃん綿矢(ゆうたろう)のエピソードが描かれることもあり、そういえばBLものだったと改めて気づくが、前半の積み重ねから、視聴者は、本作の制作陣はこの先も平たい演出はしないと信頼している。日常の出来事に、一喜一憂しながら生活する彼らの日々に、時にキュンキュンし、時に共感し、時に羨ましさを覚えながら、安達と黒沢、そして彼らの周囲の人々の物語を最後まで見守りたい。(文:望月ふみ)

当記事はクランクイン!の提供記事です。

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