異なる文化・背景をもつため対立しがちな家族……少年が手作り料理で絆をつなぐ! 『エイブのキッチンストーリー』監督インタビュー

ガジェット通信



少年が手作り料理で家族の絆をつなぐ感動作『エイブのキッチンストーリー』が現在公開中。「ストレンジャー・シングス」シリーズのノア・シュナップ演じるエイブが、異なる文化を背景にもつため対立しがちな家族を、手作り料理でつなげようと奮闘するヒューマンドラマです。

本作を手がけたフェルナンド・グロスタイン・アンドラーデ監督にインタビューを敢行! 作品作りのこだわりを伺いました。


『エイブのキッチンストーリー』

YouTuberや雑誌記者などの顔を持つブラジル人映画監督、フェルナンド・グロスタイン・アンドラーデが、自身の半生を基にした作品。食べ物、そして料理が大好きな12歳のエイブ(ノア・シュナップ)は親が選んだ料理のサマーキャンプをサボって、フードフェスで出会ったブラジル人料理人チコの元で修業を開始!初めはゴミ捨て、食器洗いからはじまり、徐々にステップアップ!その過程で見せるエイブの笑顔に心はほんわか。そして複雑な家族関係に困惑しながらも自分らしい方法で解決しようと奮闘する姿には胸が熱くなる。ニューヨーク・ブルックリンを舞台に、世界各地の美味しい料理とリズミカルな音楽に心躍る作品だ。




――本作を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

フェルナンド監督:両親はお互い再婚同士で、兄もバックグラウンドの違う人と結婚をしていたので、自分自身が多様な背景を持った人たちに囲まれていたことは大きな理由の一つです。そして、幼くして実父を亡くした僕を育ててくれた兄から甥っ子のためにユダヤ教徒のお祭りのDVDを作って欲しいと頼まれたことをきっかけに、映画を作ろうと思いました。この作品は甥が生まれた時に作り始めて完成まで13年かかったので、タイミングよく彼のバル・ミツバのタイミングに合いました。

甥や皆さんには映画を通じて、「周りがこうあってほしい、という希望にこたえるのではなくあるがままでいてほしい」というメッセージをこめました。

そして、いざ映画を作る時に心配だったのは、いろんな宗教間の問題や紛争が世界的に起きていることでした。友人からもらった、「Thou Art That: Transforming Religious Metaphor(汝、芸術)」(ジョセフ・キャンベル著書)には、宗教を文字通り捉えることが問題につながり、宗教をメタファーとして捉えることができればよりパワフルなものになると書いてあります。例えば、「約束の地」が実際の場所であると思うと、その場所へ何としても行かなくては思ってしまうかもしれない。しかし、概念として捉えることができれば、その場にたどり着くためにどのように自分を高められるだろうか、という考え方に切り替えることができる。だから、この映画を通して僕がやりたかったことは、いろんな文化・背景・伝統を持った人々と調和を持って共に生きるという物語を作ることです。言い換えれば、宗教を持って人を憎むのではなく、宗教を愛するための武器として使うという物語を作ることが発端でした。



甥っ子や新しい世代の人々のために、ファミリーコンテンツではあるけど、特別な意味を持った作品にしたかった。ブラジルにもファミリーコンテンツはあるが、とてもシンプルな作りで子供を見下しているような印象です。でも子供達だって複雑なことはわかります。尊敬、調和、共感、思いやり、他のアイデンティティーを持った人と、憎しみではなく愛情を持って共に生きるということを教えてくれる、そんな物語を作りたかったのです。

――初の英語作品で苦労したこと、面白い気づきなどございましたら教えてください。

フェルナンド監督:やはりブラジル人の自分が英語で映画を作ることはすごい怖いことではあります。発展途上国から先進国のアメリカに来て作るわけだから、まず、僕たちにも映画を作れるんだ!と言うことは1つの大きなチャレンジですし、僕たちも劣っているわけではない、同等なんだと思ってもらう、そういう考えで映画を作るいうのは更に大きなチャレンジでした。ときには僕たちはポルトガル語を話すのに、スペイン語で話しかけられたり、あまり尊重されていないように感じる瞬間もありましたが、本当に心の広いやさしい方にはたくさん出会うことができ、同等な関係を築ける人にも出会いました。大きな発見は、英語で映画を作ることが僕たちにもできるんだってこと自体ですね。出来上がった作品がサンダンス映画祭に選出された時も外国語映画枠ではなく、アメリカ映画と競う枠でした。ブラジル出身の人が英語で映画を作るなんて難しいよね、と思われているのが普通であれば、それに挑戦できたことが最高だと思うし、ラテンアメリカで作るのと同じエネルギーでニューヨークでも作れることを証明できたんじゃないかな!



――お料理がとても美しく描かれていましたが、レストランに取材したことはありますか?

フェルナンド監督:この作品が出来上がるまでの13年間、ずっと食べ物に関してリサーチをしていました。ロンドン、ブラジル、アメリカ、そして中東、と。中東はパレスチナとイスラエルに実際に行ってレストランや色々な食べ物を生産している人たち、市場関係者らをインタビューしました。そのインタビューした過程はドキュメンタリーとして今後世に出す予定です。

一番印象に残っているのは「Maqluba」。パレスチナの伝統的な料理で、ソースとお肉とお米と砕いたナッツが入っていて、それらを器に層にして盛って、最後に逆さにするとソースが全体にかかるようになっているんだ。他のパレスチナ料理はイスラエルやレバノンにもあるんだけど、この料理だけはパレスチナにしかないんだよ。

――主演にノアさんを起用した理由、演技の面でお願いした点を教えてください。

フェルナンド監督:ノアはやはり「ストレンジャー・シングス」シリーズでの仕事ぶりが素晴らしいと思いました。それに加え、すごく集中力があり、カメラに向かって自分の心からコミュニケーションをしているところがすごくパワフルな役者だと思ったからです。

彼にお願いしたことは、常にエイブというキャラクターを自分の中に生かしてほしい、ということ。それをベースにどんどんアドリブも入れていってくれていいからね。と言いました。自分の魂をキャラクターとつなげて、キャラクターを表現してほしいとお願いしました。その1つにエイブの誕生日のシーンでろうそくの立っていないケーキを目の前にして、エイブにお母さんが「ろうそくの火を消してもらいましょう」と言いますが、そこでは彼がアドリブで演じています。

――監督が映画を作り続ける一番のモチベーションは何ですか?

フェルナンド監督:光が当たってないものに光を当てたいと思って映画を作り続けています。『Quebrando o Tabu(原題)』は麻薬戦争に関してのドキュメンタリーですが、今はただ罰するというだけになっていて、それにより刑務所が過剰収容で問題になっている。だからまず教育面から薬物戦争と向き合えないかということを描いています。『エイブのキッチンスト―リー』では宗教によって生まれる「憎しみ」に光を当てたいと思って作りました。そして、人が自分のアイデンティティ-を持つのがいかに重要なのか、というのを描いています。そして上の世代の方々や社会がありのままの人々を受け入れなければいけないんじゃないか。というのを描けたんじゃないかと思います。そうやって何かに光を当てていきたいと思っています。



――最後に、これから映画をご覧になる方に一番注目してほしい点を教えてください!

フェルナンド監督:この映画は一つのチャンスだと思います。それぞれ年齢や背景の違う人々が映画をみてオープンな対話をするきっかけになる作品になればいいな、と思います。この作品にはタイプの違うの色々な人にわかってもらえるジョークが入っていて、中東の政治状況を知っている方がわかるもの、知らない方が楽しんでもらえるものなど組み合わさっていますので、観終わったあと、アイデンティティーやフードカルチャー、中東の紛争について対話をしてもらいたいです。今私たちが住んでいるのはすこしダークな時代なので、人にいいものを与えるのは難しくなってきてはいると思いますが、そういう会話につながればいいと思っています。本当に日本で公開されるのは表現できないくらいうれしく思っています。最初の作品が日本で撮影したドキュメンタリー作品でしたので自ら日本に行って皆さんに作品を見せられないのが、ちょっと残念ですが、本当に自分にとっては重要な国です。また状況がよくなれば日本で作品をつくりたいと思っています。それほど日本はマジカルな国だと思っています!

――日本についてその様に言っていただいて嬉しいです。貴重なお話をどうもありがとうございました!

【動画】映画『エイブのキッチンストーリー』予告編

https://www.youtube.com/watch?v=FJDGPF5Ur5k



―― 表現する人、つくる人応援メディア 『ガジェット通信(GetNews)』

当記事はガジェット通信の提供記事です。

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