「アホ!」はDV? 気づきにくい“言葉の暴力”を元当事者夫婦が語る

女子SPA!

 こんにちは、恋愛ジャーナリストの おおしまりえです。

◆増加傾向にあるDV問題

近年相談件数も増えている配偶者からのDV(ドメスティックバイオレンス)被害。(内閣府男女共同参画局「配偶者からの暴力に関するデータ」より)

DVという言葉を耳にしたとき、私たちは「ボコボコになるまで妻を殴る」とか「ものすごい酒乱でダメ男がすること」といった、極端なイメージを持ちがちです。しかし、DVやモラハラといった親しい人へ向けられる暴力の類は、本来とても判断が難しく、かつ被害を訴えにくい構造をしているといいます。

また最近は男性から女性へのDVだけでなく、女性から男性へというパターンも増えている問題。幸せなパートナーシップを築くためにも、改めて知っておきたい話です。今回は自身も過去にDVやモラハラの当事者である、中川拓さん、亜衣子さん夫婦に話を聞きました。お二人は現在、一般社団法人エフエフピーを設立し、DVやモラハラの相談対応や回復プログラムを提供しています。

◆「モラハラはDVより軽い」多くの人に広まる誤った理解

冒頭でも書いた通り、DVやモラハラというと、かなり極端な例を想像しがちです。ですが実際に起きている問題のほとんどは、「これってそうなの?」と判断に迷う事案ばかりといいます。まずはDVやモラハラの定義について、改めて教えてもらいました。

「最初にお伝えしたいのですが、私たちは『モラハラ』という言葉を使いません。なぜなら、モラハラは身体的・物理的な危害はないけれど、精神的な暴力により相手を傷つけ支配していくものです。つまりモラハラは、れっきとしたDVであると考えます。

よく『怪我がないからモラハラの方が軽い』『うちはモラハラっぽいけどDVではない』といった解釈をされる方もいますが、全くそんなことはありません。根本的な仕組みは同じですから、その点は皆さんに理解していただきたいです」(拓さん)

モラハラの当事者は、どちらも最初は「相手の口がちょっと悪いだけ」「身内だからこそのコミュニケーション」といった解釈をします。しかし、精神的に受け手が傷ついていれば、それはれっきとしたDVといえるのです。

◆「アホ!」はDVになる?

「DVの定義として大事なのは、殴るや罵声を浴びせるといった“行為”がポイントではありません。2人の関係性に『支配とコントロールがあるかないか』が、判断のポイントになります」(拓さん)

「対等なパートナーシップは本来、夫と妻がそれぞれの車に乗り、個々に運転している状態です。しかしDV当事者の夫婦というのは、妻(被害者)の車の助手席に夫(加害者)が乗り込み、妻の運転にあーだこーだと指示を出すようなもの。妻が右にハンドルを切りたいのに、夫はそうさせない。次第に妻は『右に行きたい』と言うことが出来なくなり、考えることすらしなくなっていく。こういった日常行為に支配とコントロールのある関係がDVの基本構造です」(拓さん)

DVは出身地域の特性や個人の性格の差、言い方など、受け手やシチュエーション次第の部分も大きいからこそ、判断に難しいという指摘もします。例えば「アホ!」という言葉は、地域によっては親しみを表す表現の1つとして使われている場合もあります。とはいえ、その一言で傷つく人がいるのも事実。大切なのは、受け手がどう感じているかなのです。

◆「お前のため」は俺のため

個人差によって解釈が大きく変わるDV。被害者としては「自分たちの関係はおかしいのではないか…」と、確認し、適切な対処を望んでいます。中川さんは「当事者同士の解決は危険ですし、難しい部分はあります」と前置きした上で、気づきにくいDVの実例を3つ教えてくださいました。

1:お前のため

「『お前のために言ってるんだぞ!』という枕ことばが付いた主張は、ほぼDVと考えて良いでしょう。この一言を添えるだけで、言われた方は『私が悪いのかな』と納得してしまいます。でも冷静に考えると、それはお前(被害者)のためではなく、支配してコントロールするために言っているんです」(亜衣子さん)

・◯◯が俺を怒らせてるんだぞ

・◯◯がもっと良くなってほしいから言ってるんだ

・出されたご飯に点数をつける

・掃除したあと、出来てない部分を見つけてネチネチ指摘

類似例として、上記のような表現も、相手のことを考えている風を装ったDVです。料理や掃除をはじめとしたあらゆることへのダメ出しも、「お前がもっと出来るようになるために言ってあげている」と主張してきます。これって結構会社でも聞こえる一言ですから、気をつけたいところです。

◆意外と気が付かないDV事例も

2:ホウ・レン・ソウを徹底

「報告を常に求めるのは、仕事では当たり前ですよね。でも家庭内に持ち込むとそうではないケースが多いです。自分も過去には妻に徹底させていたのですが、ホウ・レン・ソウを強要することは完全に相手を信頼してない証拠です。全部把握して自分が安心できる状態になりたい。ある種の依存状態のあらわれといえます」(拓さん)

もちろんお互い負担なくやれているケースもあるので、全部が全部ダメということではないそうです。しかし、受け手がしんどいと感じる束縛や心配、ヤキモチの類は精神的なDVに加えて良いといいます。

3:相手に即答を求める

「『で、お前はどうなんだ?』『なんか言えよ』といった、圧力強めに即答を求める行為は、DVです。結果として理詰めで責めて相手を追い詰め、反論できないところに持っていくのが目的です」(拓さん)

こういった理詰めの最終目的は「お前はバカだ」といった精神的なDVに着地させることや、「俺は正しい」という上下関係を見せつけることだったりします。強めに責められたら、被害者側はフリーズして答えられなくなるケースがほとんど。つまりこういったコミュニケーションは、実はコミュニケーションでも何でもないのです。

◆DVは身近に存在する可能性も

皆さんはこういった行為をされた経験はあるでしょうか。ちなみに筆者は、された経験もあるし、自分がしていた経験もあるかも……という、両面での危機感にヒヤッとなりました。

DVは思った以上に身近なところにある。まずは認識を再定義しながら、適切な専門機関などを頼りつつ、対処をしていければと思います。

【話を聞いた方】

一般社団法人 エフエフピー

代表 中川拓さん、亜衣子さん

選択理論心理学をベースに人間関係修復の手伝いをする一般社団法人。過去のDV加害者/被害者の関係を乗り越えた夫婦が実践するDV加害者更生プログラムはおそらく日本唯一? オンラインと対面の両方でプログラムや面談を実施している。

<取材・文・イラスト/おおおしまりえ>

【おおしまりえ】

水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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