AV女優&作家の鈴木涼美「“エロい女性”は記憶に残らない」の真意は?

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変化を見せる、2020年代の色香論。語ってくれたのは、作家の鈴木涼美さん。色香とは、人を惹きつけ、魅了する力のこと。それは人と人とのコミュニケーションの中に生まれ、存在するものだ、と鈴木さんは語ります。
■ “弱さや未熟が色香”の時代は終焉。会えない世界でその概念は変化する。

「色香を感じる第一歩は、“記憶に残る人であること”だと思うんです。下品な喩えですが、例えば、かつてはエロ本、今だとエロ動画などを見て男性は自慰行為をするわけですが、そこで目にした“エロい女性”が記憶に残るかといったら、たぶん残らないでしょう。それはたぶん、“記号としてのエロ”であり、即物的なもの。一方、色香というのはもっとメモラブルな何かで、相手と関わる中で生まれ、そして感じるもの。特に現代においては、人や社会に対して心や態度が開いているコミュニケーション上手な人のほうが、相手の記憶に刻まれ、ふと“あの人って…”と心をドキッとさせる確率が高くなっている気がしています」

色気や色香=性欲という公式はもちろん成り立つが、決してそれだけではなく、色気の解釈が広がっている、とも。

「かつて色気といえば、それのみ、という時代もあり、その一方で女性にとっては、人としての魅力と色気がイコールにならないことが、長年のジレンマでした。日本の男性が求める女性像は、学歴があったり、才能があったり、仕事ができるといった女性の真逆、つまり弱くて未熟なほうが色っぽいと考える、という事実は、今でも根強くあります。つまり今までの日本の女性は、人としての成長を取るか、色気を取るか、その選択を迫られていたんです。ただようやく社会が成熟し、才能や自信を持つことが人としての魅力を作り、結果的にそれが色香に繋がるという考え方に、女性主体で是正されつつあるのを、徐々にですが感じます。仕事か色気かの二択ではなく、好きな生き方をし、自分らしい色香を持つ。日本の女性が少しずつでもそう思えるようになったのは、大きな進歩です」

弱さに色気を感じるということ自体は、2020年の今も変わらない。でも弱いだけでは、もはや武器にはならない。

「以前から、弱さが人としての隙になり、“守ってあげたい”と思わせ人を惹きつける、といわれますが、できない、わからないというような“100%の無垢や未熟さ”に色気を感じる人は、大人の社会では減ってきている。それよりも、強い女性や、社会的にある程度の地位にいるような人が見せる“完璧じゃない何か”のような弱さこそが、これからは色気として作用すると思います」

色香は、形ではない空気のような存在。目に見えないゆえに感じ取るものといわれるが、コロナ禍で人と直接会う機会が減る中、その概念にも変化が?

「家に籠もれば籠もるほど、社会に開いている部分が減りますし、電話やメール、ビデオ会議などを通じたコミュニケーションでは、“雰囲気や空気による伝播”は皆無なので、すべてを言葉で判断するしかない。この状況が続くとしたら、言葉の力を持っている人がコミュニケーション上手になりますし、結果、色香を感じさせられるのでは、と思います」

すずき・すずみ 1983年生まれ、東京都出身。AV女優、新聞社勤務を経て作家デビュー。著書に『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』(小社刊)などが。

※『anan』2020年11月25日号より。イラスト・micca

(by anan編集部)

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