2020年大晦日の第71回紅白歌合戦の出場歌手が、11月16日に発表されました。コロナ禍での無観客開催となった今年は、10組が初出場を果たします。30-40代読者からすると「実はよく知らない…」という出場者もいるのでは。
というわけで、ここからはフレッシュなニューカマーについて、少し予習しておきましょう。
◆①瑛人:「香水」が大ヒット
今年を代表するアーティストといえば、この人。TikTokから火が付き、アーティストのカバーはもちろん、お笑いコンビ「チョコレートプラネット」によるモノマネ動画もバズりまくる社会現象になりました。
注目は、ドルチェ&ガッバーナという固有名詞。本人も、歌えなかったら別のフレーズを「寝ずに考える」と不安そうでしたが、NHKからは問題なしとお墨付きが出て、まずは一安心。MVのトリッキーな踊りも、ぜひナマで観たい!
ところで、改めて「香水」を聴くと、風邪でもひいていたのかなと思うほどの鼻声。このムズムズ具合も気になります。
◆②櫻坂46:10月に欅坂から改名したばかり
一昨年の“失神パフォーマンス”(※)が話題になった欅坂46。そこから複数メンバーの脱退などを経て、今回櫻坂46として再び紅白に戻ってきました。12月9日にはファーストシングル「Nobody’s fault」のリリースも控えています。
グループ名とメンバーは変わっても、楽曲のシリアス路線は健在。“AKBとの違いがよくわからん”とお嘆きのアラフォー世代でも、なんとなく雰囲気で気づくはず。時代の閉塞感に抗う若い女性という構図が、妙にヒリヒリするんだよなぁ。
※2018年、紅白でのパフォーマンス中に、メンバー数名が過呼吸のような症状で倒れた事件
◆③JUJU:デビュー17年目での初出場
意外にも今回が初出場となるJUJU。「奇跡を望むなら…」(2007年)や「やさしさで溢れるように」(2009年)などのスマッシュヒットの他に、「ラヴ・イズ・オーヴァー」(オリジナルは欧陽菲菲)や「奏」(オリジナルはスキマスイッチ)などのカバーにも定評がある実力派ボーカリストです。
歌手活動の他にも、『世界はほしいモノにあふれてる』(NHK)で三浦春馬(享年30)とのMCで見せた軽妙なトークが好評を博しました。
となると、三浦さんを思わせる演出があるのか気になってしまいますよね。NHKの判断に注目が集まります。
◆④東京事変:来年の五輪イヤーに向けて景気づけ
椎名林檎としては7回の出場経験はあるものの、グループとしては今回が初となりました。東京オリンピックパラリンピックの式典プランニングチームの一員でもある椎名林檎ですから、仕掛けを用意してくれるかもしれません。
そんな東京事変ですが、今年の2月29日、新型コロナの感染拡大が懸念されていたなか、ライブを決行したことで炎上してしまったこともありました。椎名林檎なら、何か考えてくれているはず。
◆⑤NiziU:日本発K-POPガールズグループ
日本のソニーミュージックと韓国のJYPによる共同プロジェクト「虹プロジェクト」のオーディションから生まれた、9人組ガールズグループNiziU(ニジュー)。ドキュメンタリータッチで公開されたオーディションやレッスンの様子にどハマリするファンが続出し、プロデューサーのJ.Y.パークの名言に、ビジネスパーソンも注目するほどの社会現象となりました。
プレデビュー曲の「Make you happy」は、ストリーミングの累計再生回数1億回を突破。そして12月2日には待望のデビューシングル「Step and a step」のリリースと、ますます勢いに乗っていきそう。
ちゃんとご飯食べて、寝る時間はあるんでしょうか。おっさんは心配です。
◆⑥SixTONES、⑦Snow Man:ジャニーズ期待の新星
昨年はジャニー喜多川氏(享年87)の追悼コーナーに出演した彼らが、今年はそれぞれ単独のアーティストとして出場します。
同じジャニーズ所属ながら、“VS”という対決する形でデビューした両者、略して“ストスノ”。SixTONES(ストーンズ)はYOSHIKIが手掛けたバラード「Imitation Rain」、Snow Manはクールでダンサブルな「D.D.」と、グループの個性がよくわかる楽曲が印象的でした。
◆⑧BABYMETAL:海外のメタルファンも熱狂
ようやく、満を持して、と言うべきでしょうか。海外のロックフェスで、ヘビメタファンの大男たちをヘッドバンギングさせ、昨年10月に発売されたアルバム『METAL GALAXY』も米ビルボードアルバム総合チャートで13位にランクイン。BABYMETAL(ベビーメタル)が、ついに紅白で初パフォーマンスを披露します。体の小さなアイドルとメタルという取り合わせの妙はもちろん、“神バンド”の超絶テクも見逃せません。
いつか同じ事務所のPerfumeと“テクノメタル”でコラボしてくれないかな。
◆⑨milet:桑田佳祐も絶賛のシンガーソングライター
昨年3月リリースのデビューシングル「inside you」が11の配信サイトで1位を記録し、一躍注目を集めた女性シンガーソングライター、milet(ミレイ)。桑田佳祐も自身のラジオ番組で、この曲を2019年のベストシングルに選んだそう。
少しひしゃげた声の出し方が特徴的で、いそうでいなかったタイプのボーカリストかもしれません。今みたいにサウンドスケープ的なスケール感を生かした曲とは別に、古いジャズとか歌謡曲のカバーも聞いてみたいと思いました。
「石狩挽歌」なんてどうでしょう。北原milet。
◆⑩特別企画枠:GReeeeN 朝ドラ『エール』の主題歌を担当
現在放送中の朝ドラ『エール』の主題歌「星影のエール」を歌う、男性4人組ボーカルグループ、GReeeeN(グリーン)。メンバー全員が歯科医師の免許を持ち、顔も名前も一切公表しないという異色のグループです。
すでに「愛唄」(2007年)や「キセキ」(2008年)の大ヒットを持ち、最近ではMisiaとメンバーのHIDEのコラボ曲「アイノカタチ feat. HIDE(GReeeeN)」も話題を呼びました。
顔を出さずに、どうやってステージに立つのでしょう? 中国の体操選手みたいに防護服とか。
エンタメにとっては受難の一年だった2020年。初出場の10組には、思いっきり暴れて、鬱憤を晴らしてもらいましょう。
<文/音楽批評・石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)