『上野耕平のサックス道!』がSeasonⅡに突入! 第1回コンサートレポート

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サクソフォン奏者の上野耕平が2020年9月30日(水)、浜離宮朝日ホール(東京都中央区)で『上野耕平のサックス道! SeasonⅡ Vol.1』と題したコンサートを開いた。新型コロナウイルスの影響で、5月から延期になっていた同公演。ゆったりと身体に響く音色は、生で音楽を楽しむ素晴らしさを再認識させてくれた。

開場したホールに、人が吸い込まれていく。「コンサートに来るのは半年ぶりよ」。客席から嬉しそうに話す女性たちの声が聞こえてきた。静かな会場に響くピアノの調律音。期待と緊張が広がっていく。

ピアニストの山中惇史とともに上野が舞台に姿を見せた。再会を喜ぶファンの拍手に、はにかんだような笑顔。ジョリヴェの『幻想即興曲』で幕を開けたステージは、ミステリアスな空気に包まれていた。




「本来だったら5月に開催だったのですが、延期になりまして。今日、無事に開催できてうれしいです」。上野の思いに観客が拍手で応える。「前半はピアノとサクソフォンのための曲を。後半はベートーヴェン、シューベルトの楽曲をサクソフォンとピアノで表現していきます。全く違う趣向を楽しんで欲しい」と話すと、デビューアルバム『アドルフに告ぐ』に収録して以来、あまり演奏していないという、クレストンの『ソナタ』を披露。「第1楽章は、リズム遊びを。第2楽章は嘆き悲しむ様子、第3楽章はとにかくリズム」と話した通り、その歌声で情景を変えていく。



回転するようなリズムと変拍子、美しいメロディーで魅了した二人。「サクソフォンの千倍ぐらい音数があって、とても難しい」と演奏を振り返った山中は、「クレストンはピアノを弾けなかったんじゃないかと思うくらい、無理ばかり書いてある」とこぼし、観客を笑わせた。




笑い声に包まれた客席を見詰めた上野は、「今日は、みなさん僕の(名前が入った)Tシャツを着て下さっていてうれしいんです!」と告白。続けて「人生初めてのグッズですから、これを着て山手線を一周するとかやってみたい」と鉄道好きの一面をのぞかせていた。

前半のラストに演奏した「ファジーバード・ソナタ」は、上野が師事した須川展也のために吉松隆が書き下ろしたもの。「僕が生まれる1年前(1991年)にできたんです。第1楽章 はRun,Bird、第2楽章はSing,Bird、最後はFly,birdからなる曲で、いろいろな場面が想像できます」と説明。ポルタメントやさまざまなタンギングを駆使した表現は、時間や場所を越えていく。


譜面には「アドリブ」と書かれた部分もあり、互いの手を探りながら自らの表現で観客を揺らしていく。近づいたり、離れたり。信じた道を貫くように響くピアノとサクソフォンの音は、滑るように飛ぶ二羽の鳥の姿が浮かんだ。




20分の休憩を挟んだ後半は、バリトンサックスを手にした上野が再登壇。チェロとピアノのためにベートーヴェンが作曲した「魔笛の主題による7つの変奏曲 Wo0.46」をバリトンの重厚な歌声で聴かせた。本編の最後にはシューベルトの「アルペジョーネ・ソナタ イ短調 D.821」を選曲。全身を大きく揺らして生み出していく、美しい祈りの旋律。繊細で情感豊かな表現で会場を圧倒した。


大きな拍手で迎えられたアンコールでは、山中と共にグッズ販売されている〝上野Tシャツ〟を着て登場。「(ライブなどの)配信も良いけれど、こうしてみなさんと共有できることがうれしい」と上野。コンサートのタイトルを『SeasonⅡ』と変え、その初回として見せたステージについて、「来年以降に上野耕平がやっていく、新しいシリーズの布石を見せることができた」と自信を見せていた。


2時間近い公演のラストには、ビゼーの「カルメン・ファンタジー」から「花の歌」を選んだ。山中がサクソフォンとピアノ版に編曲したというこの作品で、冷めなることがない愛を歌い上げ、ドラマティックに秋の夜を締めくくった。





取材・文=Ayano Nishimura 撮影=福岡諒祠

当記事はSPICEの提供記事です。

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