アメリカのバイデン政権でどうなる?


マネ―スクエアのチーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話しします。今回は、米大統領選挙について語っていただきます。

アメリカ大統領選はバイデン氏が勝ったようです。「ようです」としたのは、結果が公式に確定したわけではないからです。バイデン氏が当選に必要な270人以上の選挙人を獲得したと主要メディアが発表したのはあくまで非公式です。トランプ陣営はいくつかの州で訴訟を起こしており、それらの決着もついていません。
○トランプ逆転の可能性はゼロ⁉

バイデン氏の獲得選挙人数が270人ギリギリか、それをわずかに上回る程度であれば、12月14日の選挙人投票で1人、あるいはごく少数の選挙人が裏切って投票用紙にバイデン氏以外の名前を書けば、選挙人数が足りずに下院で決着をつけることになったはずです。

その場合、各州1票ずつなので、下院議員が53人のカリフォルニア州も、同1人のアラスカ州も1票です。そして、共和党が単独支配する、あるいは過半数を占める州が民主党の州の数を上回るので、トランプ氏に有利になるはずでした。

もっとも、バイデン氏の獲得選挙人数は300人を超えそうな勢いなので、そうした事態はあまり現実的ではなくなりました。
○トリプル・ブルーの可能性は低い

バイデン氏が今最も気にしているのは上院の行方かもしれません。11日時点で上院の議席は民主党48対共和党50。残り2つの議席はいずれもジョージア州で、過半数の票を得た候補がいなかったので、来年1月5日に決選投票が実施されます。

現時点でいずれも共和党候補がリードしているようですが、仮に民主党が2つとも取れば、議席は50対50のタイになります。その場合、上院議長を務める副大統領が最終投票権を持つので、民主党がかろうじて上院をコントロールすることになります。もっとも、その可能性は相当に低そうです。

民主党は下院で議席を減らしており、バイデン氏の人気が高まって議会の民主党候補にとっても追い風になるというコートテール効果はほとんどなかったようです。

民主党が、政権、上院、下院の3つを制するトリプル・ブルーとなれば、民主党のアジェンダは実現が比較的容易だったかもしれません。しかし、法案審議で下院と同等の力を持つ上院を共和党が制すれば、民主党の政策、とりわけリベラル色の強いものはほとんど日の目をみないでしょう。
○ミドルクラスの再生

バイデン氏が選挙キャンペーンで標榜したのは、「わが国のバックボーン(基盤・基幹)であるミドルクラス(中間所得層)を再生する」です。

具体的には、労働者や労働組合の権利保障、所得格差の是正、雇用保険の創設、共和党が廃止に躍起になったオバマケア(医療保険制度改革)の保全・拡充、など。

バイデン氏は党内左派の支持を得るために2つの新しい政策も提案しました。メディケア(公的医療保険)の対象年齢の引き下げ、そして公立大学に通う貧困学生の学生ローンの減免です。

その他に、交通網の整備、温室効果ガスの抑制(パリ協定への復帰)などのインフラ投資を約束。そして、上述した政策の財源として、富裕層や大企業向けを中心に増税を行う意向です。
○国際自由主義

バイデン氏は上院の外交委員長も務めた国際派で、国際自由主義の信奉者です。アメリカが民主主義を掲げて世界のリーダー役を果たすべきだと考えています。2003年のイラクへの武力行使に際して、バイデン氏は民主党の方針に反して賛成を表明しました。また、バイデン氏は移民の受け入れに積極的であり、トランプ氏と真逆の立場です。
○コロナ対策

当選確実となってバイデン氏が最初に行ったのが、コロナ対策タスクフォースの立ち上げでした。トランプ政権のコロナ対策が不十分だと有権者が判断したことがバイデン氏の最大の勝因だったでしょう。したがって、バイデン氏はコロナ終息に向けて積極的に行動するとみられます。
○バイデン政権で何が実現するか

共和党が上院で過半数を維持すれば、バイデン政権の民主党寄りの政策は制約を受けます。中低所得層を支援する政策はある程度実現するでしょうが、富裕層や企業に負担を強いる政策は日の目を見ないかもしれません。そうであれば、株式市場はポジティブに反応するでしょう(=リスクオン要因)。

ただし、歳出が増える一方で、(増税などで)歳入が増えなければ、財政赤字は拡大(国債発行額は増加)します。それは長期金利の上昇要因であり、短期的には米ドルの上昇要因となりえますが、いずれ米ドルの信認低下をもたらしそうです(85年プラザ合意の再来?)。また、党派的な対立が過度に強まって「分断された政府」「何もできない政府」になると、株価にとっては悪い状況ではないかもしれませんが、やはり米ドルの信認低下につながりそうです。
○バイデン政権の最初の試金石は?

バイデン氏が指名する閣僚候補は上院による承認を必要とします。そこで、共和党議員全員が反対すれば、閣僚人事は前に進みません。

注目されるのは、ウォーレン氏やサンダース氏が重要ポストにつくか。とりわけ、民主党リベラル派が待望するウォーレン氏が財務長官になれば、富裕層・企業増税、大手金融機関やIT企業の分割などが進められる可能性があります。

バイデン氏がリベラル派を閣僚候補に指名するのか、共和党が制するとみられる上院がそれらを拒否するのか。バイデン政権の進む方向を考える上で、閣僚人事が最初の重要な試金石になりそうです。

西田明弘(マネースクエア) マネースクエア チーフエコノミスト。日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などを経て、2012年にマネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。「投資家教育(アカデミア)」に力を入れている同社のWEBサイトでレポートを配信(一部は口座をお持ちの方限定で公開)する他、投資家のための動画配信サイト「M2TV」でマーケットを解説。 この著者の記事一覧はこちら

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