スケールは小さく、密度はアップ:PS5注目タイトル『Spider-Man: Miles Morales』レビュー

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Image: Sony/Insomniac Games

マイルズというキャラクターへの深い理解と愛に詰まった作品。

あまりの人気で手に入らないことでも話題のPlayStation 5の期待のローンチタイトルとなる『Spider-Man: Miles Morales(スパイダーマン:マイルズ・モラレス)』。今回はGizmodoに掲載されたJames Whitbrookによる同作のレビューをご紹介いたします。果たしてその評価はいかに……!

(ちなみに、ストーリーにもそれなりに踏み込んだ内容ですのでお気をつけください)


『Marvel’s Spider-Man』はオープンワールドゲームというジャンルの中で、とにかく凄いコミック的な物語を作り出した作品。スパイダーマンを史上最高のコミックのヒーロー足らしめている彼が持つ(スパイダーマンとピーター・パーカーの)二重性を理解して愛し、自信を持って持って描ききっていました。

そしてその続編となる『Spider-Man: Miles Morales』では、そんな彼のスパイダー仲間であるマイルズが主人公で、共通点こそあれど、一体なにがマイルズを独自のヒーローにしているのか、しっかりと理解して作られています。

事件のスケールは小さくって、ゲームは引き締まった


今週発売となるPlayStation 5(とPlayStation 4)向けに発売となる『Miles Morales』は、インソムニアックが手掛けた前作を遊んだ人は既視感を覚えることでしょう。クリスマスという設定で、雪や素敵なデコレーションがいっぱいですが、同じニューヨークのマップで遊ぶこととなり、大部分で、前作同様にウェブでスイングしながら悪いやつらをパンチして回ることになります。しかし、物語を紡いでいく映画のようなストーリーミッションを交えながらオープンワールドで遊ぶのに必要なスイングは減ることになるでしょう。プレイ時間は前作が15時間~20時間だったのに対し、今作は10~15時間くらいですからね。

ただ、この既視感は『Miles Morales』を古臭くしてはおらず、基礎となるゲームがあるというだけなのです。そして前作同様、特にこのジャンルに新しい要素を持ち込むというわけではないですが、ウェブスイングは変わらず楽しく、マイルズが持つ生体電気を使った「ヴェノム・パワー」のおかげで、ガジェットを駆使するピーターと比べ敵の大群をぶっ飛ばすパワー型なキャラクターとなっており、戦闘も楽しくなっています。

アンロックできるコスチュームやコミックからのイースターエッグ(ピーターよりもマイルズのほうがコミックでの歴史が短いので少なくはなっているけど)探しも楽しいし、フォトモードも依然として楽しく、写真を撮るのが好き、特にスパイダーマンの写真を取るのが好きなら、ずっとプレイしちゃうことでしょう。
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Image: Sony/Insomniac Games

ただ、前作の基本型に調整が入っていないというわけでもなく、前作でもあったような鳩を追いかけたり、戦闘と移動系(そしてマイルズ独自のパワーのおかげで登場するステルス要素)のチャレンジ、ギャングの隠れ家、秘密基地などの要素は、マイルズのキャラクターに合うよう調整されています。

それは主にサイドミッションを依頼するキャラクターが変わっていたり、その規模が小さくなっているというようなシンプルな変更なのですが、ピーターと比べてマイルズはより狭い範囲のストリートレベルで活躍するキャラクターなので、マッチしているのです。

もちろん、マイルズの庭はニューヨーク全体ですが、彼は街全体を巻き込むマフィアの裏稼業を止めたり、大惨事を防いだりするというよりは、近所の人の小さなお願いを聞いてあげるという方が性に合っているキャラクターです。前作で議論を呼んだニューヨーク市警との関係もほとんど取り除かれ(訳注:前作のゲーム内で、警察はプライベートを侵害するレベルのハイテクな監視システムを構築しており、スパイダーマンはその修理を助けるという展開だったなど色々と描写を疑問視する声が上がった)、犯罪ミッションはマイルズの親友のガンケが開発したコミュニティソースのアプリから受ける形に変わっています。

とはいえ、窃盗事件やカーチェイス、麻薬の押収といったものがランダムに起こるだけで、なぜマイルズがピーターのようなレベルで警察と協力をするのをためらうのかという理由を語るところまでには踏み込めていません。
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Image: Sony/Insomniac Games

その面では失敗していているかもしれませんが、今作の変更や改良はあらゆるレベルでマイルズ・モラレスもピーターと同じくスパイダーマンだけど独立した個人であり、ピーターとは大きく異るタイプの人々と共に生きていて、自分の周囲の世界とより密接な関係を築いているんだという主題を描くことに集約しています。

しかし、今作が描く身近な世界がこのゲームの価格相応には感じにくいかもしれません。ストーリーは短く、サイドミッションやコレクション要素は減っています。もちろん、このゲームは50ドルで、一般的なAAAタイトルと比べて10ドル位安く、ソニーが次世代機の第一弾のゲームに設定している価格からは20ドル位安いわけですが、やれることが減っているのは事実。

ただ、その結果として同じようなミッションの洪水に飲まれてしまう感覚は減り、ゲームがクライマックスに到達する頃にコンプリートのためにやらなきゃならないタスクがマップいっぱいに戻って来てため息ついちゃうなんてことは起こらないでしょう。構造的な視点からムダを排除することで、今作での体験をより引き締まったものにしています。

そしてスケールが小さくなったことで、このゲームがスタンドアローンとして売られる価値を持たせている最も優れた部分である、ストーリーを際立せていると言えるでしょう。

前作同様、今作を作ったチームはこのスパイダー系ヒーローの物語で、交友関係や個人が抱える葛藤のドラマや、スーパーパワーを持ったものたちの行動に影響を受ける日常、スパイダーマンとしての義務と、人間としての義務の二重性を描き、誰もが共感できる魅力的なものにしました。

そして、スパイダーマンは何十年にも渡るコミックスの中で(時には多元宇宙を越えて様々な男女、時にはハムに)引き継がれていったものであるということをしっかりと理解した上で、その中でマイルズ・モラレスというキャラクターが、ただのピーター・パーカー2.0ではなく、その殿堂に並ぶ独立したヒーローであるゆえんは何なのか、ということも理解したものを作り出しています。

ヒーローと人間、2面のドラマで盛り上がるストーリー


【編注:以下からストーリーのネタバレ成分が増えます。ご注意を】
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Image: Sony/Insomniac Games

前作『Marvel’s Spider-Man』で、マイルズがピーターと似たようなパワーを得ていることが判明するエンディングから1年後という設定で、マイルズはスパイダーマンとしてピーターの弟子となり、前作のような大事件は起こらなそうなところからスタートします。(顔が変わったことが依然として気になってしまう)ピーターは、かつての恩師で悲しき悪の道へと堕ちてしまったオットー・オクタヴィアスと対決しニューヨークを救ったものの、メリー・ジェーン・ワトソンの海外取材に同行するため若き教え子に街の平和を託すことになるという流れ。スパイダーメンの一年間の活動が突如として終わり、ニューヨークにはあまり馴染みがない方のスパイダーマンが一人残された...というわけです。

序盤、マイルズは前作での父ジェファーソン・デイヴィスの死後に母リオと移り住むことになった馴染みあるハーレムで活動することにし、自分の正体を隠しながらハーレムの親愛なる隣人・スパイダーマンとしてクリスマスの休みの間、地域の人たちの小さな依頼をこなしていきます。そして、母のリオは故郷であるハーレムで市議に立候補し、再生可能エネルギーの実験のために危険で大きなパワープラントを近所のど真ん中に建てようとするエネルギー企業のロクソンに立ち向かっていきます。 
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Image: Sony/Insomniac Games

この対立構造は主人公が住むコミュニティを巧みに表現していて面白く、サイドクエストもマイルズが依頼主のことをよく知っているというだけじゃなく、依頼する側も新スパイダーマンが近所に住んでいるということで、より魅力的なものにしています。そしてジェントリフィケーション(地域の富裕化)や資本主義の問題点、地域社会活動と企業の利益の衝突といったテーマを上手に使い、ニューヨーク全体を危機に陥れない形で危機を描くことを可能にしています。

しかし、そこからロクソンとマイルズが、アンダーグラウンドと呼ばれるハイテク犯罪組織とそれを率いる今作では独創的な発想で描かれるコミックでお馴染みの小悪党「ティンカラー」という共通の敵に立ち向かうこととなる...ところが今作の最大のドラマとなっています。

このストーリーに合わせるために大部分が作り直されたティンカラーは、彼の愛する人々を危機に陥れ、まだ新人なヒーローの壁となりながらも、ピーターの影を感じるような巨大な敵だったり、破滅をもたらしてくるような脅威ではないという塩梅で、今作で描かれるマイルズの苦悩のテンポを変える完璧なポイントとなっています。そして、ヒーローとしてのマイルズと彼の個人の交友関係がおり混ざっていくことで、他のキャラクターたちとの関係が効いてきてとっ散らかりながらも興味深い骨のあるドラマとなっていきます。
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Image: Sony/Insomniac Games

そしてそのドラマの中で、マイルズはピーター・パーカーのように家族や友達を自分のヒーロー活動から完全に遠ざけているわけではないという決定的な違いも描かれます。ピーターのスパイダーマンとしての生活は痛々しいほどに孤独で、彼の秘密を誰かが知るかもしれないという所が最大のドラマとなりますが、マイルズの場合は身近に彼がスパイダーマンであることを知っている人がいます(ガンケなど)。そしてピーターはメイおばさんや恋人のメリー・ジェーンが秘密を見つけてしまわないか心配をするがあまり、時に彼らを頼ることができませんが、マイルズには家族がいます。

言い換えればこれは、マイルズには自分が抱える苦悩や、勝利を分かち合う多くの仲間がいるというだけでなく、マイルズの世界とハーレムがロクソンとティンカラーの戦いに巻き込まれていくストーリーが進むにつれて、マイルズと友人、家族たちがスーパーヒーローのぶん殴り合いと同じくらいの熱いドラマをもたらしてくれるのです。

ピーターとオクタヴィアスの対立は、ゲームのユニバースの中で(コミックや映画とは異なり)彼らは親密な関係だったという”ひねり”を加えたことでより面白いものとなりました。一方、マイルズの場合はコミックの段階でそういったドラマが彼のストーリーの中にすでにあるので、そうした”ひねり”は必要なく、今作はこのスパイダーマンの最高のストーリーの基礎には親密な関係にこそあると理解しているマイルズへのラブレターのようなゲームとなっていて、感情を揺さぶられる最高潮は、スーパーパワーを駆使したスペクタクル(もあるけど)ではなく、説得力のある人物描写とドラマチックな緊張感によってもたらされます。
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Image: Sony/Insomniac Games

前作からの既視感を覚えるゲームではありながら、そういった面においてマーベルのゲームとして新鮮なだけでなく、前作以上に力強くかっちりとした作品に仕上がっていると言えるでしょう。

スケールが小さくなったからといって、やることがなくなったり、プレイヤーを描く幅が減るというわけではなく、小さくなったことを普通のスパイダーマンではなくマイルズ・モラレスのストーリーを作る上で一体何が重要なのかというところを掘り下げることに活かしています。

前作と似たようなトリックをスパンデックスの袖に隠しているかもしれませんが、今作はなぜマイルズがピーターと同じ脚光を浴びるべきであるということをしっかりと理解したストーリーを描くことが出来ています。

『Spider-Man: Miles Morales』は2020年11月12日発売予定。このレビューのためにPlayStation 4版のソフトが提供されました。

当記事はギズモード・ジャパンの提供記事です。

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