伊藤沙莉「エゴサーチは原動力でしかない」批判コメントにも負けない理由

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人は非日常の空間にいると解放的になることがありますが、今回ご紹介する映画『ホテルローヤル』の舞台となるのはラブホテル。本作は、そのなかで繰り広げられるさまざまな人間模様が見事に描かれている作品となっています。そこで、その裏側についてこちらの方にお話をうかがってきました。
写真・大内香織(伊藤沙莉)

■ 女優の伊藤沙莉さん

【映画、ときどき私】 vol. 340

現在、映画やドラマ、CMなどで大活躍を見せている伊藤さん。劇中では、両親に見捨てられて居場所をなくした“自称ホームレス女子高生”のまりあを演じています。今回は、作品の見どころだけでなく、長いキャリアのなかで味わった苦悩やコンプレックスとの向き合い方などについても語っていただきました。

―本作は久しぶりの女子高生役だったと思いますが、演じてみていかがでしたか?

伊藤さん
 感慨深かったですね。というのも、実は「制服を着ているきみしか想像できないから、大人の役なんて来ないよ」と過去に言われたことが原因で、女子高生役はやりたくないと思っていた時期が長いことあったんです。でも、最近になっていろいろな役やらせていただけるようになってから、また制服も着たいなと。童顔なのでまだいけるんじゃないかなと思っていました(笑)。

そんなときに、武正晴監督から「きみに決めていた女子高生の役がある」とお話をいただいたのがこの作品。ただ、「最初に考えていたときから、2、3年経ってしまって、きみも年を取ったから心配だ」と言われたんですけど、「ギリギリオッケー!」ということで大丈夫になりました。

―実際に、制服に袖を通してみて思うこともありましたか?

伊藤さん
 今後何があるかわかりませんが、自分のなかでひとつの区切りになった感覚はありました。自分が女子高生を演じるのは、これが最後の作品になるんだろうなと。でも、それがこの作品で、そしてこの役どころで締められてよかったなと思いました。あまりにうれしくて、制服姿のままめちゃくちゃ写真を撮りましたよ(笑)。

■ 普段とは違う武正晴監督の演出がおもしろかった

―観ている側としては、まだあと数年は女子高生役も演じられると思いましたが……。

伊藤さん
 いやいや、ギリでしたね。衣装の制服を着た状態で、メイクをする前の朝一番の顔を鏡で見たとき「大丈夫?」みたいな感じでしたから。ちょっとまずいなと思って、ロケ先の北海道でマッサージできるところを慌てて探して、死にもの狂いでマッサージしたくらいです。

―(笑)。では、現役のときと大人になってから演じる女子高生とでは、違いを感じることもありましたか?

伊藤さん
 今回のほうが、昔に比べて俯瞰で見ている感じはあったかもしれないですね。「ああ、こんな感じだったな」みたいになぞる時間が多かったというか。武監督の演出でおもしろかったのは、何も考えていないような感じを出すために「ずっと口開けてて」と言われたことと、あとは「余計なことをして」と言われたことですね。

―余計なことというのは?

伊藤さん
 ただ廊下を歩くのでも、全部のものに触ってほしいと。それによって、ラブホに初めて来た感じやちょっと能天気な女子高生の様子、そしてまりあが抱える寂しさも表れていると思います。普段、お芝居をするときには余計なことはしないようにしようと心がけているので、逆におもしろかったです。

―さすが武監督ですね。そもそもなぜこの役を伊藤さんに演じてほしいと思っていらっしゃったのかは、お聞きになりましたか?

伊藤さん
 監督が言っていたのは、まりあが発するのっぺりとした感じの「せんせーい」というセリフが私の声で聞こえたし、聞きたかったと。そう言っていただいたときは、うれしかったですね。

■ つい最近まで自分の声がコンプレックスだった

―伊藤さんと言えば、やはりその声が非常に魅力的ですが、コンプレックスだった時期もあったとか。

伊藤さん
 小学校3年生でこのお仕事を始めてから、オーディションでは声で覚えてもらえることが多かったので、最初はどちらかというと“武器”だと思っていました。そんなとき、毎回オーディションに呼んでくださるんですけど、いつも最後で落とすアニメーションの監督から、4回目くらいのときに「特徴的でも個性的でもないし、つまらない声だね」と言われてしまったんです。

そこで声を全否定されたと感じてしまい、「武器でも何でもないし、かわいくもないし、歌える歌も少ないし……」みたいなことが一気に自分のなかで湧きあがってしまって、自分の声が大嫌いになってしまいました。こんな声、必要ないなと。なので、しばらくは声を褒めてもらっても、「それしか特徴がなくてごめんなさい」くらいひねくれてました(笑)。

―いまは、そのコンプレックスとどのように向き合っていますか?

伊藤さん
 つい最近まで嫌いなままでしたが、アニメやナレーションといった声のお仕事をいただけるようになったおかげで、ポジティブに受け止められるようになりました。実際、「うまいか下手か」よりも「好きか嫌いか」が大きいと思うんですよね。これはお芝居に限らず、人に対しても言えることだと思いますが。

いまは、どんどんひねくれたのがぐちゃっとなって逆にまっすぐになった感じなので、素直に「ありがとうございます」と言えるようになりました。否定されたことも、すべて私のなかでは整理がついていることです。私も認めるところは認めないとかっこ悪いですから。

■ 感動したのは、こだわりが詰まったラブホテルの部屋

―かっこいいですね。ちなみに、童顔と言われることに関しては、いかがですか?

伊藤さん
 それについては幅広い役ができるので、逆に武器かなと思っています。というのも、童顔って1周回ってけっこうおばさんに見えるときがあるんですよ。最近も、30代半ばに間違えられたことがありましたしね……。「そんなバカな!」と思うんですけど、童顔って意外と幅広いんだなと最近は感じています。

―女子高生もできることを考えれば、確かに幅広いです。あと、今回の舞台はラブホテルでしたが、室内の様子を体験されてみて、どのような感じでしたか?

伊藤さん
 釧路にある実際のホテルで撮っている部分とセットの部分がありましたが、そこにいるだけで役になれるような場所を作り上げてくれた監督と美術部さんたちのこだわりには、本当に感動しました。

ただ、お風呂の扉が全部ガラスだったので、「お風呂に入ろうかな」って言うシーンでは、「え!? 全部丸見えじゃん!」ってなりましたけどね。さすがラブホなだけに、すごいエッチだなって思いました(笑)。

―(笑)。このところますます存在感を増していますが、ブレイクの実感は?

伊藤さん
 最近は、フワフワしていて夢見心地みたいな感覚ですね。いつも次のお仕事が決まっていないことが多かったので、撮影が終わる頃にスタッフさんから「次は何やるの?」と聞かれるのが前は大嫌いだったんです。そういった経験もあって、いまは次が決まっていることがうれしくて仕方がないんですよ。

―そういう喜びも原動力につながっているのでしょうか?

伊藤さん
 そうですね。この先もそれが当たり前にはならないと思います。時間はかかりましたけど、「みなさん、私を視界に入れてくれてありがとう!」という感じです(笑)。

■ 神社でお参りをすると心が洗われる

―伊藤さんといえば、エゴサーチをよくされることでも知られていますが、最近もされていますか?

伊藤さん
 めっちゃしていますよ(笑)。癖なんでしょうね。怖いことに、気がついたらいつの間にか携帯でエゴサーチしてたりすることもありますから……。なので、最近は携帯から離れる時間を意識して作るようにしています。

―コメントの内容によって、気持ちが左右されることはないですか?

伊藤さん
 ひどいことを書かれていても、もはや何も感じないですね。注射みたいに、最初はチクッとするけど、入ってしまえばこっちのもんみたいな(笑)。小学生のときからエゴサーチデビューしているので、もはや悟りの境地と言えるかもしれません。いまでは、原動力にしかならない感じです。

―すごい境地ですね。では、伊藤さんにとって息抜きになるお気に入りの場所などがあれば、教えてください。

伊藤さん
 神社ですね。私はウォーキングを兼ねて散歩をよくするんですが、そのときに近所の神社に寄って、お参りをして毎日おみくじを買って帰ります。もともと神社が大好きで、旅行先でも必ず行っていたんですけど、家の近所の神社にも行くべきだと言われてから行くようになりました。お参りをすると、心が洗われるんですよね。

―オススメのストレス発散法といえば、何ですか?

伊藤さん
 おうちでカラオケです。最近アプリを入れて、マイクを2本買ったので、家でかなり本格的なカラオケを楽しめるようになりました。男の人の曲とか、“病みソング”が多めですけど、ひとりでも、友達を呼んでもできるので、“スナック伊藤”ができています(笑)。

■ かっこいい女性になるために心臓を鍛えている

―楽しそうですね。ちなみに、これまでずっと同居されていたお兄さんが最近引っ越されたようですが、生活に変化はありますか?

伊藤さん
 確かに最初はちょっと寂しかったですけど、兄はどれだけ洗濯物を出してたんだと思うくらい家事が断然楽になりました。おじさんをひとり飼うのは大変だなと(笑)。でも、久しぶりに家に遊びに来たりすると、「あー、好きだなぁ」って思うんですけど、たまに来てはカーペットを汚して帰るので、やっぱりしばらくは来ないでほしいです。

―仲の良さが伝わってきます。また、インスタではファンのみなさんの質問に答える「質疑応答」をされることもあり、回答が秀逸でおもしろいですが、逆に伊藤さんが誰かに相談してみたいことは?

伊藤さん
 恋愛マスターみたいな人に、恋愛の仕方を教えてほしいですね(笑)。私の場合、普段からこんな感じなので、飲み友達とかマブダチみたいな感じに思われちゃうことが多くて。どうやって恋愛に持ち込んでいるのかとか、恋愛の“フラグ”の立て方がわかったら楽しそうだなって思います。

―ぜひ、それは聞きたいですね。それでは最後に、今後どのような女性になっていきたいかについて教えてください。

伊藤さん
 かっこいい人になりたいですね。そのために、いまはできないことをあえてやってみたり、やったことのない仕事に挑戦したりして、大抵のことにはビクビクしないような心臓に鍛えているところです。

そうしたら、昔に比べて新しいことにチャレンジするときも、自分にはできないと思い込んでいたことをするときも、怖がらなくなりました。それは自信にもつながるので、これからもそんなふうに経験値を増やしながら、どっしりしていけたらいいなと思います。

■ インタビューを終えてみて……。

以前からずっと取材したいと思っていた女優さんのひとりだった伊藤さん。喜びと興奮を内に秘めながらお話を聞いていましたが、こんなにも笑わせてもらった取材はないのではと思うほど、頭の回転の速い伊藤さんの話術にすっかり魅了されてしまいました。さまざまな“武器”を持つ伊藤さんの今後が楽しみでしかないです。今回で最後になるかもしれない制服姿は、ぜひお見逃しなく!

■ 新しい世界を切り拓く“光”を肌で感じる!

誰のなかにもある葛藤や孤独、そして欲望。普段は胸の奥にしまい込んでいたとしても、非日常の空間のなかでは、すべてをさらけ出して素直に向き合えるはず。劇場をあとにする頃、あなたの心も裸にされているかも。
写真・大内香織(伊藤沙莉) 取材、文・志村昌美
■ ストーリー

北海道の釧路湿原を望む高台にあるラブホテル『ホテルローヤル』。経営者のひとり娘である雅代は、受験に失敗したのち、居心地の悪さを感じながらも実家を手伝っていた。そして、甲斐性のない父に代わり、半ば諦めるようにホテルを継ぐこととなる。

そんなホテルにやってくるのは、子育てと親の介護に追われる生活を送る夫婦や行き場を失った女子高生と妻に裏切られた教師など。誰もが“非日常”を求めていた。ところが、ホテルの一室である事件が起こり、ホテルはマスコミの標的とされてしまうことに……。

■ 心に届く予告編はこちら!



■ 作品情報

『ホテルローヤル』11月13日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー配給:ファントム・フィルム(C)桜木紫乃/集英社 (C)2020映画「ホテルローヤル」製作委員会

ヘアメイク:AIKOスタイリスト:吉田あかねオールインワン ¥30,000 チュールリブニット ¥20,000(以上アンスリード/アンスリード青山店 電話03-3409-5503)

当記事はananwebの提供記事です。

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