伊之助たちはなぜ目覚められた?『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』で原作を抑えていると分かる秘密!

 

2020年10月16日(金)の公開からたちまち大ヒットとなった『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。日本の映画史上においても異例中の異例というスピードで興行収入を上げていることでも話題となっています。

さて、そんな本作は物語の大筋は、ほとんど原作漫画『鬼滅の刃』を踏襲したものとなっています。しかし、映画では語られていない要素も実はいくつか存在するのはご存知でしょうか。

今回はそんな『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』内では語られていなかった“原作を読んでいると分かる”秘密をいくつかご紹介します。

 

原作に忠実なアニメ版と原作との違い

まず、そもそも原作の漫画『鬼滅の刃』とアニメの『鬼滅の刃』の違いについて説明しておきます。

アニメ『鬼滅の刃』は、その物語の大筋をかなり原作に忠実に描いています。作品によっては、アニメ化に伴いオリジナルキャラクターを登場させたり、独自の設定を盛り込んだりといったテコ入れをすることも少なくありません。しかし『鬼滅の刃』はそういったアニメオリジナルの要素は採用せず、原作に忠実なアニメ化に臨んでいます。

その一方でアニメ化の際に注力されているのが、アクションといった動画の部分や、迫力のある音楽といった漫画にはない要素に関してです。

主人公・竈門炭次郎の水の呼吸をはじめとした、特徴的なタッチのエフェクトを採用した点などはアニメだからこそ映える演出。浮世絵のような水流が流れるビジュアルはアニメ独自の発明でした。

また、音楽制作についても独特な作り方をしている作品でもあります。本来は、あらかじめ制作しておいた楽曲を流用していくことの多いアニメのBGMですが、『鬼滅の刃』では完成された映像に合わせてかかる楽曲を制作するなど、TVアニメよりも映画で使われることの多い手法で音楽を当てはめている作品です。

このように、ストーリー自体はそのままに、アニメだからこそ活かせる部分をふんだんに演出していくのがアニメ『鬼滅の刃』の特徴でした。

しかし、実はもう一点。原作漫画とアニメでの違いがあります。それは、漫画ではテロップやモノローグが多様されていたり、コミックスでは話の話の間、エピソードの補填や豆知識などが掲載されています。アニメでは予告のパートなどで“大正こそこそ話”のコーナーのような形で再現されているのですが、ナレーターがいない作品ということで、いくつかアニメでのみ説明されていない要素なども複数存在します。

今回紹介するのはそういった原作では説明されているものの、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の映画内では説明されていないいくつかのことを紹介します。

 

※以下、ネタバレを含みます。ご了承の上お読みください

 

 

炭次郎の夢に出てきた父親の正体は?

上弦の壱「魘夢」によって夢に閉じ込められてしまった炭次郎。どうにか目覚める方法がないかと、画策するわけですが、川では自分自身が水の中に引き摺り込んできたり、突如、妹の禰豆子の箱が現れたり、さらには父が現れ助言をして消えていくといった現象が起こっています。禰豆子の思いや、父の不思議な力のようにも受け取れるシーンですが、この現象に関しては原作漫画ではしっかり説明がされています。

夢に登場したあれらの幻のような存在は、炭次郎自身の本能の警告だったというのです。

原作では、テロップで現象について説明がされており、あれは「すでに気づいているはずの“小さな手がかり”を炭次郎が理解できていないため、本人や父の姿を借りて出現し、警告したとされています。

未知なるパワーとして流されてもおかしくない場面でしたが、実はしっかり具体的な発生理由は明らかになっていたのですね。

 


劇場版の前半部分が盛り込まれている原作『鬼滅の刃』第7巻(吾峠呼世晴)

 

善逸や伊之助の無意識領域に本人が居たのはなぜ?

作中では独特の夢のシステムについて描かれていました。夢は、夢を見ているものを中心に展開されていて、その夢の外側には無意識の領域があり、その無意識の領域に“精神の核”が存在し、これを破壊すると、持ち主は廃人になるということで、魘夢に利用された人々は、錐を使って壊そうと画策しました。

ここまでは映画でもしっかり説明されていた部分なのですが、説明がされていない部分で、なぜか我妻善逸と嘴平伊之助の無意識領域には、いるはずのない本人が存在するという謎が描かれていました。実はこの現象についても、原作漫画ではしっかり説明がされています。

無意識領域は、普通は誰もいないものなのですが、「意識の強いもの=異常に我が強い人」は無意識領域に人が存在するようです。あれだけ我が強そうな炎柱・煉獄杏寿郎すら無意識領域にいなかったのに、見事、無意識領域の自分に核を守らせた善逸や伊之助は、脅威的な我の強さであることがわかりますよね。(しかも伊之助は、本人の理想の猪の姿でした)

一方で炭次郎の無意識領域も独特。炭次郎自身は無意識領域には存在しませんでしたが、炭次郎のみ光る小人が複数人存在していました。原作では彼らのことを“優しさの化身”として紹介しています。善逸や伊之助の無意識領域に居た存在とは、少し毛色が違うようですが、彼ら小人の存在は、炭次郎が人一倍他人に対する優しさの思いが強いことを感じさせてくれますよね。

光る小人に関しては、映画で映像化されていない部分がありまして、炭次郎の夢の中に入った青年が、炭次郎が目覚めたことで現実世界に引き戻される場面が省略されています。実は、引き戻される際に、青年は小人を一人掴んで離さなかったことで、青年の心に炭次郎の心の一部が宿ることになります。これにより青年は、結核で生まれた害意を無くし、改心したわけです。

 

眠っていたはずの煉獄はなぜ動くことができたのか?

精神の核を攻撃されそうになった煉獄杏寿郎。しかし、とっさに夢の中に入ってきていた女性の首を掴むことで、それを食い止めることに成功しました。なぜ煉獄はあんなことが出来たのでしょうか。実はそれも原作漫画では描かれています。

通常であれば、魘夢の術に落ちている間は、意識と肉体が完全に切り離された状態で夢に閉じ込められているため、身体を動かすことは出来ません。しかし、煉獄は本能で精神の核が破壊されたら戦闘不能になることを察知し、女性を食い止めることが出来たそうです。

映画ではこう着状態が続いていましたが、現実からの圧力を受けた女性は、苦しみから夢の中でも動けず、一方の杏寿郎も人を殺すわけにはいかなかったため、それ以上の圧力を与えることが出来なかったようです。

鬼狩りの人々は術に落ちていても、殺気を敏感に察知し、術を破る可能性があると警戒して魘夢はわざわざ精神の核を攻撃しようと考えていたようですが、この煉獄の行動を思うと、その判断は正解でしたね。

もし眠っているからといって、魘夢が煉獄に近づいた時には、その殺気で術を破ることに成功していたかもしれません。

 

炭次郎がもしロープを切ってしまっていたらこうなった

自力で目覚めることに成功した炭次郎でしたが、その直後に自分の腕にロープが巻かれていたことに気づきました。他の眠っている仲間たちも、そのロープで知らない人たちと繋がっていることを発見した炭治郎、不審に思い一度はそのロープを刀で断ち切ろうとするのですが、「よくない気がする」という理由で斬るのをやめ、禰豆子に燃やしてもらうことにします。

もしここで炭次郎が、ロープを刀で斬ってしまっていたら……については原作漫画では説明されています。

もし、ロープを刀で斬ってしまっていたら、夢の主人でないものは永遠に意識が戻らなかったそうです。つまり、炭次郎たちの夢に侵入してきた人たちは、まさに命拾いをしていたわけですね。

このように他人の夢に入ることはリスクも多く、そのほかにも夢はその持ち主の意識が強いため、共鳴して影響を受ける場合などもあるそうです。魘夢が直々に夢の中に入ってこないのもそれが理由で、夢の中に入るというのはそれぐらい危険の大きい行為だったのですね。

人知れず命を救っていたところに、炭次郎の察しの良さを感じるわけですが、後々杏寿郎が誰も死なせないことに奮闘していたことを思うと、あそこでロープを斬らなかったことは非常に意味が大きいでしょう。

 

伊之助達が目覚めたのは、禰豆子が切符を燃やしたおかげ

炭次郎が自力で目覚めた一方で、伊之助や杏寿郎が目覚める場面は具体的には描かれていません。どちらかというといつの間にか起きているという表現が近いです。この点については実は、原作漫画でも、しっかり描写されているわけではありません。ただし、コミックスを読むと、話と話の間の空きページの“大正コソコソ補足話”として説明がされています。

伊之助や善逸、杏寿郎が目覚めたのは禰豆子が、血鬼術のきっかけとなる切符を燃やしたことがきっかけ。言葉として説明はされていないのですが、彼らが目覚める直前に、しっかり禰豆子が彼らを燃やしているという場面が挟まれています。あのシーンで切符が無効になったわけですね。

ちなみに善逸は、血鬼術が解けても寝ていたままだったのが特徴的。切符を燃やした影響を受けていないように見えますが、夢の影響を受けなくなったおかげで、雷の呼吸が使えたとも言えるでしょう。

 


劇場版の後半部分が盛り込まれている原作『鬼滅の刃』第8巻(吾峠呼世晴)

 

映画が面白かった人は原作をチェックしてみるのもおすすめ

このように、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』ではかなり忠実に原作の展開を再現している一方で、やはり、映像化するには難しい要素などもあり、惜しくも漏れてしまう内容などもあったわけです。これこそ漫画と映像のフォーマットの違いが現れているところで、表現方法の違いを知るという点でも、『鬼滅の刃』は最適な題材だと言えるでしょう。

映画を気に入ったという人は、ぜひこれを機に原作単行本などを購入して、映画を追体験してみるのもアリ。今回の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は原作コミックの7巻と8巻にあたるエピソードが盛り込まれています。さすがに全巻読むのは大変という人は、ピンポイントに今回の映画のエピソードだけでもチェックしてみるのも良いのではないでしょうか。

漫画だからこそ気づけたり、そうだったのか!と知れる内容もあるのもまた面白いところです。

 

作品概要

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編

原作:吾峠呼世晴
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス

主なキャスト
竈門炭治郎:花江夏樹
竈門禰豆子:鬼頭明里
我妻善逸:下野紘
嘴平伊之助:松岡禎丞
煉獄杏寿郎:日野聡
魘夢(下弦の壱):平川大輔

公式サイト:https://kimetsu.com/anime/

(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

WRITER

  • ネジムラ89
  •        

  • 缶バッジ販売専門店「カンバーバッチ」のオーナー兼アニメ映画ライター。アニメ映画情報マガジン「読むと アニメ映画 知識が結構増えるラブレター」をnoteにて配信中。その他いろんなとこでアニメ映画話を執筆中。古今東西関係なくアニメ映画を中心とした有益な情報を多くの人に提供できるようにやっていきます。

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