谷村美月が劇団Patchと共演する音楽朗読劇『マインド・リマインド~I am…~』で意識するものとは

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関西を拠点に活動する劇団Patchが、結成8周年を記念して、関西のテレビ局・カンテレとコラボする舞台『マインド・リマインド~I am…~』。近未来を舞台に、ある音楽によって記憶が呼び覚まされていく者たちの姿を描くラブ・サスペンスだ。同作のなかで、劇団Patchの面々が演じる男性から疑惑を向けられる恋人に扮するのが、女優・谷村美月だ。谷村は、入山法子とダブルキャストでこの役柄を務める。2002年にNHK連続テレビ小説『まんてん』でデビューし、初出演でヒロインを務め2005年に公開された映画『カナリア』での名演から「天才少女」と呼ばれるようになった谷村。現在では、日本屈指の実力派俳優として監督、演出家たちからの信頼も厚い。今回はそんな谷村に、劇団Patchとの共演について話を訊いた。

谷村美月
谷村美月

ーー10月28日(水)に劇団Patchの皆さんと記者会見に臨まれましたが、メンバーの印象はいかがでしたか。

個別でお話をすると明るい印象を受けるんですけど、全員集まっているときは意外と落ち着いていらっしゃるんです。記者会見も緊張されていたのかもしれないですが、私が「では、みなさんで盛り上げていきましょう!」と言っちゃうくらい。普段、そんな言葉を発するタイプでもないのに(笑)。

ーーハハハ(笑)。ちなみに今作に興味を持ったポイントはどういうところですか。

実はもともと、別の企画をカンテレさんからいただいていたんです。前向きにお引き受けしたかったのですが、新型コロナの状況もあって結局、無くなってしまって。そんなとき、この舞台のお話が届きました。一旦はカンテレさんとお仕事ができなくなったから、やっぱり心残りもありましたし、もちろん作品の内容も面白そうだったので「出たい」となりました。

ーー「カンテレと仕事がしたい」、という気持ちが強かったんですね

そうですね。あと、大阪で制作されて東京にも持って行く舞台に出たことがなかったのも、決め手かもしれません。大阪出身の私にとってそれは一番大切にしたい部分なんです。

ーーたとえば大阪らしさが出ているドラマ『大阪環状線 ひと駅ごとの愛物語』シリーズ(2016年~)や、山下敦弘監督と組んだ奇作とも言える『谷村美月17歳、京都着。恋が色づくその前に』(2007年)など、これまでもカンテレ制作の出演作はいくつかあります。そのなかで2012年『ポプラの秋』は、今回の舞台の演出担当・木村淳さんが手がけていらっしゃいますね。

木村さんはすごく信頼できる演出家さんです。木村さんの言葉には嘘がないし、私自身、言われたことに対して素直に反応できる。役者としては、そのとき自分がどのように指示を受け入れることができるかどうか、それが大切なことの一つだと考えています。

ーーなるほど。

一方で、木村さんがおっしゃられたことに対して、当時の自分の状況では難しいと感じたこともありました。「もう少し時間をください」と思った記憶があります。

ーーそれはどういう部分で時間を要したんですか。

『ポプラの秋』は、精神的に落ち込んでいるときに身内の不幸も重なるという、とても難しい役でした。その当時、現実の私は、ひとりの人間として「小さいなかにでも楽しさを見つけていこう」と考えていた時期だったので、馴染むのに時間がかかったんだと思います。

ーーそういうことってあるんですね。

「私はちょっと不器用なのかな」と思いました。ほかの役者さんはそういうところは線を引いてストレートにできちゃったりするけど、私は役と現実が重なりすぎてしまうときがあります。実際、映画やドラマの撮影にしても、ロケかスタジオかだけでも気持ちが左右されちゃいます。

ーーそれは興味深いお話ですね。

自分は根本的には映画の人間なのかなと感じました。私が経験した映画は、セットよりもロケが多かったんですよね。家のなかのシーンでも、実際に部屋を借りて撮影をする。それに慣れているところがあります。でもドラマは、スタジオのセットを使うことが多い。考え方をどこかで切り替えていかなきゃいけないんですけど、演技をする場所が違うだけで気持ちが変化するんです。

ーーそれこそ映画と舞台では大きく変わってきますよね。

舞台は振る舞い方、立ち方もまったく違いますし、それまでの経験が舞台上に出ます。役者として、人間としての生き方があらわれるので、そういう意味では舞台は怖いです。人間性が誤魔化せないので。
谷村美月
谷村美月

ーーただ先日、演出の木村淳さんにインタビューをおこなった際、「劇団Patchにとって、年齢が近い谷村さんがすごいことをやれば、きっと悔しいはず。劇団Patchからそういう悔しさを引き出したい」とお話をしていました。谷村さん自身、同世代の役者が多い現場で悔しさや嫉妬心を持った経験はありますか。

10代の頃、学園モノが続いていたときは特に強くありました。学園モノは回によって、一人の子がフィーチャーされることが多いんです。そういうとき「自分もこんなに撮影を頑張っているのに……」と悔しくなります。別の役者さんが中心になっている台本を読んで、自分はどういうふうにやれば良いんだろうと考え込んだり。

ーー谷村さんはそういうことに無関心というか、クールだと思っていました。

ただ、それで落ち込むことはないんです。気持ちに火がつきます。自分のなかで「谷村美月はダメだから使えない」と言われているような気がして、闘争心が湧くんです。それをキッカケに、いろんなこだわりが出てきますね。

ーー谷村さんがそういう人間味を口に出すことって少ない気がします。インタビューでご自身でもおっしゃっていましたけど、「谷村美月はミステリアス」と言われることが多いじゃないですか。そういう役柄も多くて、例えば映画『サルベージ・マイス』(2011年)でも「ミステリアスな女性」という設定でしたし。今回も恋人から疑惑を持たれる女性役という、謎めいた要素を持っています。

ミステリアスなイメージは、ドラマ『14才の母 愛するために 生まれてきた』(2006)の役から来ているのかもしれません。10代の頃は学校に行っても「ミステリアス」と言われていましたから。

ーーミステリアスと呼ばれることに違和感はありますか?

いえ、むしろその言葉に安心感を覚えているんです。ミステリアスと思われている方が楽です。学生時代って、ちょっと無理をしてでも集団にいなきゃいけないことって、あるじゃないですか。ただ、それがストレスになる人も多いはず。私はミステリアスと言われることで、どこかに属さずに済んだというか。心が疲れたときにひとりでいても、変に思われない。だから、ミステリアスは楽で良いんです。

ーーすごくおもしろい解釈ですね。そんな谷村さんが、劇団Patchとコラボしてどういう一面が見えてくるか楽しみです。

早速、新たな発見があるんです。劇団Patchの中山(義紘)さんは同じ1990年生まれなんですけど、同い年の人とこんなに素早く話せたことはなかったんです。仕事とはいえこんなにオープンに話せている自分が不思議でした。あと中山さんは、年下のメンバーの皆さんとの接し方もすごい。あれだけ穏やかでいられることに、びっくりしました。私なんか、年下の兄弟とか、何かあったらすぐに「おい!」とケンカしちゃいますから(笑)。これから、劇団Patchのみなさんのことを観察していきたいです。
谷村美月
谷村美月

取材・文=田辺ユウキ 撮影=田浦ボン

当記事はSPICEの提供記事です。

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