裏カジノで「ヤバい……」と思う瞬間は帰り際。数年前のインカジ事情

日刊SPA!

―[負け犬の遠吠え]―

ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。

それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。

「マニラのカジノで破滅」したnoteで有名になったTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載も22回。

今回は、たまにニュースになる国内カジノのお話です。

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◆どの繁華街にもインターネットカジノ

「そんなに一撃カマしたいなら裏カジノ行けよ」

「インカジ連れて行こうか?」

今の活動を続けてきて何度も言われてきた。毎回白々しく知らないフリをしたり気の無い返事をするのは別に法律に違反しているからとかじゃない。行く気が無いからだ。そもそも、貧困ビジネスが横行している昨今、こんなに愚かで金欠に苦しんでいるギャンブル中毒の僕に届かないわけがない。最近は全然ギャンブルをしてないのでもうただの貧乏人かもしれないが。とにかく、蛇は獲物を見逃さないから蛇と呼ばれる。

インターネットカジノというものがある。僕の認識では裏カジノ・インターネットカジノ・オンラインカジノの理解はこうだ。

裏カジノ:国内のどこかに物件を持っていて、中にディーラーもいるしテーブルも置いてある。実際のカジノと同じように遊べる。

インターネットカジノ(インカジ):国内のどこかに物件を持っていて、中には受付とパソコンが置いてある。パソコン上でカジノゲームができ、その勝ち負けに応じて後から換金することができる。

オンラインカジノ:どこからでもアクセスできるインターネット上のカジノゲームサイト。クレジットカード等で入金をして遊ぶことができる。最近だと仮想通貨として出金することもある。

◆初めて行ったのは20歳のとき

僕は法律にあまり詳しくないので何がどこから明確にアウトかはわからないが、20歳くらいの時に金がなさすぎてインカジに行ったことがある。字面だけだとバカみたいなヤバイ矛盾にしか見えないが、甘言に溶かされた当時の僕は「金がないからインカジに行った」。

まだ貧乏になりたてで借金もしてなかったので、今日の3,000円を憂いて心臓をギュッと掴まれたような不安に襲われていた時期だ。今でこそ金がなければどこかから借りればとりあえず凌げるのを知っているが、そもそも借金をする発想を持たなかった。

田舎の高校生が受験戦略を知らないまま浪人のために上京し、予備校で眼から鱗が落ちるほどのコツを掴んで衝撃を受けたように、僕も初めての借金で世界が広がった。知ってるか知らないか、経験をしてるかしてないか。この差は超える前には気づかないし、超えた後には忘れてしまう。不思議だ。

とにかく金がないから何かをしなければならない、そう思って呆けたまま街を歩いていた。不安を抱えすぎると人は歩く。

◆競馬場で見る客のようなキャッチが入口

日が沈み、街頭に照らされて地面の模様がくっきりと見えてくる頃には繁華街にいた。いつもはカツアゲが怖くてあまり近づいたことのない場所だったが、金を持っていないと不思議と怖くなかった。どれだけ脅されても奪われるものがないと思ったからだろう。キャッチに声をかけられても「1円も持ってないんです」と答えられる。

キャバクラ、ガールズバー、居酒屋……どれもあまり興味はない。酒は好きだが、すぐそばに他人がいる状況は嫌いだった。酒を飲んでいたら尚更だ。僕は酒癖が良い方なので、酔って大声を出したり大袈裟に動いてみたりする人間を心底嫌っていた。酒癖は、良い方が必ず損をする。世界中の酒癖が良い人たちのことを思うと尚更、あけすけに酔っぱらう人間が嫌いだった。イジメはされた方が強く覚えているし、介抱はした方が忘れないものだ。

貧乏人特有の、金がなくてもいいだろうという恨み言を頭で唱え続けて繁華街の奥に進んでいくと、「お兄さんカジノ行かない?」と声をかけられる。競馬場で見るようなおっさんだった。カジノ、という聴き慣れない言葉に思わず頭が上がる。

「カジノ、あるんですか」

「インカジだけどね。初回サビもあるよ」

「僕お金持ってないんですけど」

「初めてならそれでいいよ」

まるでそれを知ってるのは普通、みたいに声をかけてきた。当時は気づかなかったが、普通の人間が何を知ってて何を知らないかを把握できないのは夜の街の人間にありがちな特徴だ。彼らは店のことを箱と言うし、執行猶予を弁当と言うし、インカムをつけた人間にはとりあえず挨拶をする。ある地点から文化が、人が、常識が切り替わる。

◆身分確認に学生証を見せる

無一文の僕に身分証があるか確認してきたので、返納前の学生証を見せた。退学の手続きを済ませた後だったが、年度が切り替わるまでは使っていいと学事に言われていたので携帯していた。

学生証を一瞥するとおっさんはどこかに電話をかけた。「サビつけるってよ」とまたわからないことを言い、僕をどこかへ連れて行く。

おっさんの後ろを歩きながらずっとドキドキしていた。きっと、いや絶対に悪いことなんだろう。でも金が無いからどうでもよかった。世間的にまあまあな大学を辞めた僕は、「勉強ができるのにこれから悪いことをする自分」に酔っていた。ちなみに借金まみれの今ならわかるが、大学を卒業できない人間はそんなに賢くない。思慮深さや我慢強さもまた「知」であるからだ。

道がわからないと通らないような道を進み、知らない鉄扉の前で立ち止まる。扉に名前が書いていないのは人の家だけだと思っていたので少し戸惑う。

「カメラを見て」

と言われて扉の上を指差される。鉄扉上の方に監視カメラがあり、数秒目を合わせていると扉が開いた。と思ったらもう一枚扉があり、その奥から坊主の男が現れる。

「いらっしゃいませ」

首にタトゥーを入れている人も敬語は使うんだな。と思った。

◆帰り際に初めて「やばいな」と思う

中に入ると今まで見たことのない間取りが広がっていた。入ってすぐのところにカウンターがあり、壁際に1台ずつ仕切られた古いパソコンが並んでいて、みんなが黙ったまま画面にかじりついている。中央の開いたスペースには焦げ茶のソファーが並んでいて、その近くには漫画棚があった。「ウシジマくん」と「新宿スワン」だけが知っている漫画だった。

ソファーに座るように促され、気づくとキャッチのおっさんはいなくなっていた。別に知り合いでもなんでもないし、信用もしていなかったのに、いなくなると途端に不安になる。首にタトゥーが入った男が丁寧に説明をしてくれたが、首のタトゥーの中に塗り潰された星があるのを見つけ、ジョナサン・ジョースターのことをずっと考えていた。

3,000円分のポイントがもらえて飲食は無料。次回から金を持ってくれば帰る時にポイントと交換でき、使った金額に応じてポイントのサービスがある、そんな感じの説明だった。

店内の環境のすべてにビビっていたので、説明は聞き返さずに烏龍茶と炒飯だけ頼んで椅子に座った。パソコンのディスプレイの左下には300ptと書いてあり、画面にはカジノゲームのアイコンがいくつか書いてあった。どうやってゲームを開くのかもわからない。とりあえず遊んでいるフリをしながら飯だけ食べてしまおう。ポイントがなくなっているのに居座ったら怒られるかもしれない。

喉が乾いていたので烏龍茶を飲み干し、炒飯を食べ、また喉が乾いたので烏龍茶を頼んだ。三個くらいのアプリを開き、ルールもわからないゲームたちの上でマウスポインタを滑らせる。食い終わってしまうと早く帰りたくなり、とりあえず適当なゲームを開き、わけのわからないまま300ptがなくなった。今思えばルーレットの1点に3,000円賭けていたので、当たっていれば9万円以上勝っていただろう。

ポイントがなくなったことを店員に告げると、すんなりと帰してくれた。帰り際に学生証を手渡され、その時に初めて「ヤバイな」と思った。

◆インカジは客もがっつり違法

外に出ると少し足が震えていた。携帯を一回も開いていないことに気付き、時間を確認すると、おっさんと会ってから1時間も経っていなかった。何事もなかったように家路につき、その日はすぐに眠った。

その2年後くらいに僕は合法のアミューズメントカジノでディーラーとして働き始め、日本におけるカジノの立ち位置と法律について少し学ぶことになる。

ちなみに現行犯で捕まることがほとんどだが、インカジは客側もがっつり違法らしい。みんなは行くことがないだろうが、法律は「ここから先は罪だよ」と事前に教えてくれるものではないから、気をつけて人生を送って欲しい。

ついでと言ってはなんだが、この話は全てフィクションです。

〈文/犬〉

―[負け犬の遠吠え]―

【犬】

フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。

Twitter→@slave_of_girls

note→ギャンブル依存症

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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