Adobe MAX 2020直前! 世界に挑戦する日本人クリエイター、福田愛子さんに聞く「Photoshop Camera」の裏話


アドビは10月20日~22日(米国時間)に、クリエイター向けのグローバルイベント「Adobe MAX 2020」をオンラインで無料開催する。同イベントでは例年、数多くのクリエイターが参加するセッションが開催されるほか、アドビの新製品アップデートなどが発表されてきた。

2019年にお披露目され、2020年6月にリリースされたスマートフォン向けのカメラアプリ「Adobe Photoshop Camera」もそのひとつだ。

AIを用いて撮影した写真に、「レンズ」と呼ばれるエフェクトをリアルタイムに適用し、遊び心あふれる作品が楽しめる「Adobe Photoshop Camera」。その最大の特徴が、人気アーティストやクリエイターとのコラボレーションによる、ほかにはないアーティスティックなレンズの数々だ。

8月には米国のシンガー・ソングライター、ビリー・アイリッシュの新曲リリースにあわせ、彼女のオリジナルレンズを用いた投稿を募るイベントも開催された。ほかにも数多くのアーティスト、クリエイターがレンズ制作に参画していて、日本人のクリエイターも活躍している。そのひとり、イラストレーターの福田愛子さんを取材した。

──「カメラのエフェクトをデザインする」という話を最初に聞いたとき、どのように思われましたか?

福田さん:純粋に面白いなと思いました。これまでは一方通行だった作品に、ほかの人が撮った写真がミックスされるっていうのが、コラボレーションみたいな感じで、すごく面白いって思ったんですね。

また何か新しい表現になるんじゃないかという、期待もありました。以前「Adobe Creative Residency」(注:アドビのクリエイター向けキャリア支援プログラム)で「バーチャルガーデン」という、植物園のようなイラストの中に自分が入リ込めるという、ARを使った作品を発表したんです。

でもそのときは映像で見てもらうだけで、実際に体験してもらうところまではできなかった。「Adobe Photoshop Camera」では多くの人に、実際に私のイラスト空間の中に入る体験をしてもらえるので、それは本当にうれしく思っています。

──取り組んでみて難しかったところや、苦労されたところはありますか?

福田さん:自分の作品を世に出すとなると、クオリティも含めて表現の細かいところまでこだわりたくなってしまうんですよね。今回もリリースしてみたら被写体のコントラストが思っていたより強くて、そういうところは難しいなと思いました。

実は手を加えようかとも思ったんですが、ユーザーのみなさんが自分でコントラストを調整して楽しんでいる様子を見て、考えが変わりました。敢えて手を加えないことで、みなさんのクリエイティビティの余白ができるというか、そういう面白さもあるんだなと。あとは植物や蝶を動かすモーショングラフィックスも、今回の大きなチャレンジでしたね。自然に見えるようにゆらゆら動かすのが難しかったです。

──自分では想定していなかったような、意外な使われ方はありましたか?

福田さん:SNSのプロフィール写真などに使ってもらえるように、「レンズ」は人物のバストアップ撮影を想定して作ったんですが、リリースしてみるとペットの写真に使ってくれていたり、水中で撮った写真に使ってくれていたりと、いろんな発見がありました。

水中のものなんて、まるで水の中に植物園があるような表現になっていて、自分では予想もしていなかったものでした。Photoshopでは自分のクリエイティビティによって、現実の写真を非現実世界にできますが、「Adobe Photoshop Camera」も同じ。そこがほかのカメラフィルターアプリとは違うと改めて思ったし、他の人のそういう作品を見ることで、自分の中にあった概念も拡張されたように思います。

──「Adobe Photoshop Camera」を通じて、グローバルに作品を発表できたことでの変化はありましたか?

福田さん:実は私の「レンズ」を使ってくださっているユーザーさんの8割が海外の方なんです。リリースしてから、インスタグラムのフォロワーが増えたりといったこともありました。

これはやってみて初めてわかったことですが、「Adobe Photoshop Camera」を通じて、世界の人に知ってもらえたということはあると思います。世界中のユーザーさんからポジティブな反応をいただけて、純粋にすごくうれしく思っています。

──今回の取り組みが、今後の福田さんの作品に影響を与えたところはありますか?

福田さん:いろいろあると思います。たとえばモーショングラフィックスで作品を動かせるようになったので、今度はそれは生かして、スマホをかざすとARでイラストが動き出すといった作品にも挑戦しています。

私自身は色鉛筆を使ったグラデーションも、iPadとApple Pencilを使った点描も、アナログとデジタルのどちらの表現も好きなので、できれば両方を組み合わせたい。もともと手で触れられる本などの紙媒体が好きなので、紙とARを組み合わせた表現方法にも可能性を感じています。

自分の中にはすでにこういうものを作りたいというゴールが見えているので、そこに向かってアナログ、デジタルとも、いろいろな表現に挑戦しているところです。

──次にどういう「レンズ」を作ってみたいという構想があれば教えてください。

福田さん:モーショングラフィックスを使ったAR表現に加えて、自分のイラストを3Dにすることにも挑戦したいと思っています。たとえば建物の3Dイラストを配置して街を作るとか。自分のイラストが3Dのモチーフになって、それがまた「Adobe Photoshop Camera」に組み込まれるというのも、いつかやってみたいですね。

今コロナ禍で思うように外に出られないということがあると思うので、私の「レンズ」を通じてどこかに行った気になるとか、仮想空間でちょっと気分転換をしてもらえるような、そういう作品を届けられたらうれしいですね。

なお、福田さんは「Adobe MAX 2020」の個別チャットイベント「Creators Talk Meet Up」に、モデレーターとして出演予定。本人に直接話を聞ける貴重な機会なので、ぜひチェックしたい。

著者 : 太田百合子 おおたゆりこ テックライター、エディター。インターネット黎明期よりWebディレクションやインターネット関連のフリーペーパー、情報誌の立ち上げに携わる。以降パソコン、携帯電話、スマートフォンからウェアラブルデバイス、IoT機器まで、身近なデジタルガジェットと、それら通じて利用できる様々なサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。 この著者の記事一覧はこちら

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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