角川春樹 監督作「みをつくし料理帖」はいつか映画化したかった

アサ芸プラス


●ゲスト:角川春樹(かどかわ・はるき) 1942年、富山県生まれ。65年、角川書店入社。横溝正史のミステリー小説を手がけ、ブームを起こす。75年、角川書店の社長に就任。76年、映画製作に乗り出し、「犬神家の一族」「人間の証明」「時をかける少女」など数多くのヒット作を生み出す。95年、出版社「角川春樹事務所」設立。05年より、映画製作に復帰、「男たちの大和/YAMATO」「椿三十郎」「神様のパズル」などを製作。09年、11年ぶりの監督作「笑う警官」公開。10月16日、自身最後の監督作という映画「みをつくし料理帖」公開。

「人間の証明」「時をかける少女」など数々のヒット作を手がけてきた角川春樹氏が、10年ぶりにメガホンを取った「みをつくし料理帖」。「これが最後の監督作になる」と、みずから宣言する作品はいかに製作されたのか。映画界の暴れん坊とテレビ界の暴れん坊が激突!

テリー 今回の監督作「みをつくし料理帖」にはびっくりしましたよ。こんなに穏やかな、女の子2人の友情物語を角川さんが撮ったのかって。何か心境の変化があったんですか。

角川 前に(テリーのラジオに出た時に)歌手のASUKAを紹介したでしょう。彼女と10年前に結婚して、子供が生まれたら、今まで持っていた価値観がだんだん変わってきたんですね。自分よりも大切な存在があるんだなぁと初めて気づいて。

テリー へぇ。

角川 このコロナ騒動でも実感したしね。2カ月間、家で妻が作った料理を食べてると、子供と向き合う時間も増えるし。まぁ、この映画を撮ったのはコロナ騒動の前だったんだけどね。

テリー じゃあ、新しい家族ができて、穏やかな気持ちが生まれてきたと。

角川 そうだね。

テリー 今までさんざんヤンチャしてきた、あの角川さんが(笑)。

角川 アハハ。ユーミン(松任谷由実、この映画の主題歌を作詞・作曲)にも同じようなコメントをもらったよ。「愛すべき、はちゃめちゃな角川春樹さん。(中略)人生の最終章で、こんなにも丁寧なやさしさに昇華されていることに、今は感動しています」って(笑)。

テリー やっぱり角川さんのことをよく知ってる人ほど、この映画には驚くんですよ。ずっと「これが最後の監督作品だ」とおっしゃってますけど、なぜこの小説だったんですか?

角川 かれこれ12年前かな。その時、高田郁さんの時代小説は別の出版社から1冊だけ「出世花」というのが出ていて、1万5000部刷って、500部しか売れなかったんだよ。実は、そのうち本人が200冊買って、うちの事務所で200冊買ったんだけどね。

テリー ということは100冊しか売れなかった。

角川 そう。で、私は「今度、この作家に書かせるから」って、その200冊を本屋さんにバラまいたの。高田さんは出版社から「あなたの本は売れません」と言われて、落ち込んで、宝塚に戻って執筆を断念しちゃった頃でね。

テリー あらら、なんでまた。

角川 一に舞台が「江戸」ではなく八王子だったこと、二に「チャンバラ」がなく剣豪が出てこないこと、三に「捕物帳」じゃないこと。その3つが時代小説の定番だったんですね。でも、それは別の人が書けばいいから、高田さんには料理を題材に人情小説を書いてもらおうと、うちの編集者に行かせたんですよ。

テリー それで生まれたのが「みをつくし料理帖」。

角川 だいたい時代小説の読者は、50代か60代の男性なんですよ。ところが、書店の文庫本の担当には女性が多くて、彼女たちに時代小説は無縁だったわけ。それで、最初に出した時に、私が「山本周五郎の『さぶ』以来の感動がある」と推薦の帯を書いた。そのぐらいほれ込んだ小説だったから、いつか映画化したいとずっと思っていたんですよ。まさか自分で監督をやるとはまったく思ってなかったけどね。

当記事はアサ芸プラスの提供記事です。

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