「規制改革」を敵視する利権屋が「保守」を語り、ネトウヨ言論人として怪しげな言論を蔓延らせる/倉山満

日刊SPA!

―[言論ストロングスタイル]―

◆右下のネトウヨも左下のパヨクも、同じ穴のムジナだ。学力の低さにおいて

昨年10月末の原稿を再掲する。

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究極の選択である。「安倍晋三、菅義偉、山本太郎、この3人の中で首相にふさわしいのは誰か?」と聞かれたら、今の私は迷うことなく「山本太郎」と答える。安倍・菅両氏は官僚の言いなりだが、山本氏は「それではダメだ」との意思はある。官僚の言いなりならば、日本はいつまでたってもダメな国だ。

かつて「安倍救国内閣」に身命を賭した私に、ここまで言わせるのは誰か?

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この文章を誤読した御仁が、左右関係なく大量発生した。この部分、かなり丁寧に前提条件を解説していて、ネット記事では「馬淵澄夫の動きに注目」と見出しまでつけているのに。苦笑いするしかない。

引用部だけでも、「究極の選択である」「この3人の中で」「今の」と限定的条件を付けているのが、そこは読まなかったらしい。あげくに、「誤解させた貴様が悪い」と言われるのだが、誤解した方が悪いに決まっている。

ネトウヨは「我らが安倍様より山本太郎を持ち上げるとは非国民か」と非難轟々だったし、パヨクは「あの倉山満が我らの山本太郎を褒めたたえてくれた」と狂喜乱舞していた。

ネトウヨどもの学力の低さは百も承知だったが、パヨク側で一人くらい「安倍や菅への批判に太郎を持ち出すな」という人間がいるかと思いきや、皆無だった。しょせん、右下のネトウヨも左下のパヨクも、同じ穴のムジナだ。学力の低さにおいて。

◆菅義偉氏ほど運命が転変した人も珍しい

では、当時の意見を今はどうなのだと聞かれたら、違うと答えるに決まっている。条件が変わっているのだから。前回は政権発足直後であり、「期待を込めて見守る」と書いた。世の中には「見守る=支持する=永遠に帰依する」と勘違いしている人もいるので、これまた誤読されないかそこはかとなく不安だが……。

そもそも昨年の秋から、菅義偉氏ほど運命が転変した人も珍しかろう。それまでは「令和おじさん」として次期首相間違いなしと目されていたが、安倍首相との関係が急速に悪化し、「座敷牢」に封じ込められるが如き環境だった。ところが今年の夏に安倍後継で突如として急浮上した。

政界の一寸先は闇と言うが、菅首相ほど身に染みている人も居るまい。今は支持率が高いが、わからない。

右か左かの結論だけで判断するのではなく、中身をきちんと読む目の肥えた読者が増えて欲しいと心から思う。

世の中が不安定な時は、怪しげな言論が蔓延る。たとえば「規制緩和を進める菅は、親中派で新自由主義者だ」とのネトウヨ言論人が流している風説だ。

少し菅氏の経歴を調べれば、むしろ親米派としか思えないのだが、ネトウヨ言論人によると二階幹事長と盟友関係にあるので親中派らしい。

ところがそのネトウヨ言論人が昨日までは安倍首相絶対支持だったりする。ならば二階幹事長を重用した安倍首相こそ親中派になるのだが、そういう理屈はネトウヨには通じない。どうして通じないかは、近著『保守とネトウヨの近現代史』をご覧あれ。

◆「規制改革」を敵視する利権屋が「保守」を語り、ネトウヨ言論人として怪しげな言論を蔓延らせる

もう一つ。ネトウヨ言論人は、自分の気に入らない人物に「新自由主義者」のレッテル張りを行うことが多い。もっとも、こうしたレッテル張りを使うネトウヨに、「では新自由主義と普通の自由主義の違いを言ってみろ」と問い詰めると、「竹中平蔵みたいな奴の事」と平気で答えてくる。最近、その竹中氏と会談したので、ネトウヨの菅攻撃は病的なまでに激化している。

一般的な新自由主義とは、冷戦最末期にアメリカのレーガン大統領やイギリスのサッチャー首相が行ったような、公務員制度を改革して特権を取り上げて無駄を削り、民間の活力を喚起する環境を整備して経済を活性化させる施策を行うことである。その中で最も重要な施策が、規制緩和である。

では、これに反対する勢力とは何者か。公務員の特権と、官僚に群がる業者の利権を守りたい連中である。要するに利権屋だ。少なからずの利権屋どもが「保守」を語り、ネトウヨ言論人として活動している。そして連中は、菅首相が政権の目玉政策として掲げる「規制改革」を徹底的に敵視する。

感情的議論が先行して実態が伝わらないのでは困るので、解説しておこう。

◆レストランにも無駄な規制

そもそも、規制とは何か。政府が民間に対して指図する根拠となる法令である。無駄な規制も多い。

私の経験談で、一例をあげる。行きつけのレストランでワインを一本頼み、余ったら持ち帰らせてもらう。あるいは、別に一本買って帰るのが習慣だ。このコロナ禍では、苦しんでいる地元の自営業者を支えようと、営業自粛中は努めて行きつけのレストランを使った。

夕食後、行きつけの店を通りがかると店長がいた。そこで「ワインを一本!」と言うと、「ウチ、許可とっていないので…」と顔が曇るので、着席してワインをボトルで頼み一杯だけあけて、残りを持ち帰らせてもらった。ついでに言うと、その為だけにつまみを一皿頼んだ。要するに、食事中にボトルを頼んで持ち帰るのは良いが、空いていないワインの販売には別の許可がいるのだ。

この種の規制は、枚挙にいとまがない。官僚自身も、「その規制が何の為にあるか」には答えられなくなっているのだ。だから不要な規制を廃止しようとなるのだが、官僚は自分の権限を削られるのを嫌がる生き物だ。だから無駄な規制でも、廃止するには抵抗が大きい。

◆無駄な規制で利益を得ている人も

そして、無駄な規制で利益を得ている人もいる。たとえば、レストランでワインを売られたら酒屋は困る、など。しかし、すべての酒屋がこんな規制を求めているはずがないのだが。ただ、官僚は業者を保護することで権限を拡大する。

もちろん、すべての規制を廃止したら法令そのものが消滅する。また、安全保障に関する部分は規制強化が必要だ。外国人の土地取得が自由であるのに、有事の規制は存在しない。自衛隊周辺地が外国のスパイに使われたらどうするかなど、不安は尽きない。強化すべき規制もある。

また、ある規制を緩和することが、特定の業者の利益になることもあるので、公正な競争を担保する方法にも留意しなければならない。

菅首相が何を実現したら「規制改革」なのかは不明だが、基本的な議論は踏まえておいた方が良い。

―[言論ストロングスタイル]―

【倉山 満】

’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』のほか、『保守とネトウヨの近現代史』が9月25日に発売された

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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