ジブリと『コンフィデンスマンJP』が救世主?コロナ禍の映画館の悲痛な声

女子SPA!

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、全国に緊急事態宣言が発令された4月16日、日本の映画館は突如として軒並み休館を余儀なくされた。映画の受け皿である映画館が休業という異例の事態を受けて、配給会社も続々と公開時期の延期を発表し、4月2週目の週末には新作の公開作品はゼロ。もっとも打撃の大きかった5月は、映画配給大手12社の興行収入が前年同月比98.9%減。つまりほぼゼロという過去最低の記録となった。

◆シネコンも地方単館も……いまだ公開延期が相次ぐ映画館の厳しい経営事情

あれから約半年、映画館はいまだ苦しい状況にある。東京都立川市にある地元資本系のシネマコンプレックス・立川シネマシティで番組担当を務める椿原敦一郎氏は、「コロナの影響は計り知れないほど大きい」と嘆息する。

「4月の緊急事態宣言から明けて、休館前日の初日だけ上映した作品を6月5日から2週間再上映することはできましたが、新作はすべて延期になっていました。当時は、編成スケジュールを立て直すことで精いっぱいでした」

中には、3月に公開延期となり、緊急事態宣言が明けてすぐの6月5日に公開となったジム・ジャームッシュ監督の『デッド・ドント・ダイ』のように、前評判がよかったにもかかわらず宣伝を立て直す余裕もないまま公開を余儀なくされた作品もあった。

毎年、映画館が多くの家族連れで賑わっていた春休みも、今年はコロナによってすべてが狂わされた。『映画ドラえもん のび太の新恐竜』が8月7日に公開延期、ゴールデンウイークの目玉になるはずだった『クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』は、緊急事態宣言中の4月24日から9月11日に公開延期が決定。映画館にとってはベストシーズンだったはずの今春、休館と大作の公開延期というダブルパンチで、多くの劇場が厳しい状況に追い込まれたのだ。

だが、そんな窮地の映画館を救ったのがスタジオジブリの名作アニメだ。

「一生に一度は、映画館でジブリを。」のコンセプトで、6月26日から全国370館を超える劇場で4作品を再上映。圧巻の動員数とともに、どの世代にも響く名作は映画館にファミリー層を呼び戻した。同時に洋画では、リスク覚悟で公開に踏み切った作品も功を奏した、と椿原氏は振り返る。

「ソニー・ピクチャーズが3月27日公開の予定だった『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を6月12日からの公開に踏み切り、先陣を切っていただいたことはとてもありがたかったです。それからは、純粋に新作をかけられるようになった。6月頭からの予定だった『ランボー ラスト・ブラッド』も6月26日から公開になり、当館で好評をいただいている極上音響上映を実施しました」

邦画では、7月17日に『今日から俺は!!劇場版』が公開され、9月10日時点で興収52億円を突破。7月23日に公開された『コンフィデンスマンJP プリンセス編』は9月6日時点で興収33億円を突破しており、シネマシティでは現在もロングラン上映が続いているという。

「『今日から俺は!!劇場版』以降に顕著だったのは、戻ってくるのが一番厳しいと思っていたシニア層やお子さまが来てくれたことです。コロナ禍で暗いニュースが多いなか、単純に明るく楽しめる作品だったのが今の雰囲気にマッチしていたのでしょう。それでも席数制限による損失はかなり大きく、一日の上映回数を増やしたり、毎週冷や冷やしながらなんとかやりくりできたというのが正直なところです」

◆地方ではシニア客が激減。経営難で閉館した劇場も

東京の大型映画館でさえ、ここまで苦しい状況が続いているなか、地方のミニシアターもまた客足が戻らないまま、立ちゆかなくなってしまう恐怖と常に直面している。今年5月には、山形県庄内地方で唯一の地元映画館「鶴岡まちなかキネマ(まちキネ)」が、コロナによる経営難を理由に閉館した。

常連客の減少は地方の劇場にとって致命的な問題であり、筆者が現在ボランティアで館主補佐を務める大分県別府市の別府ブルーバード劇場も、館長が89歳と高齢、ほとんどが地元客でシニアの客層がメインだ。映画館でのクラスターは今まで一度も発生していないが、都内の演劇公演で起きたクラスター報道による「劇場は怖い」というイメージを払拭できないまま4月以降は客足が激減。一時は、観客ゼロとなってしまう回もあった。

政府や関係省庁にも劇場側は振り回されている。9月19日からの観客制限緩和措置に伴い多くの劇場が全座席売りの準備を始めた直後、厚労省が全席売りはフード持ち込みNG、50%制限ならOKという新ルールを発表。某劇場館主は匿名で憤りを露わにする。

「当初は、全席売りはドリンクもNGと言われ現場は混乱しました。2時間水分補給なしは常識的にもありえない。結局、現在はドリンクだけ認められましたが、根拠も示されないまま全国で各劇場バラバラの対応となる中途半端な営業になっているのが現状です」

パンデミックの影響により多くのスタジオが閉鎖されているハリウッドでは、製作すらままならない状況が続く。新作が激減し、このまま厳しい状態が続けば、1年後、2年後に持ち堪えられなくなる劇場も増えるだろう。これからの映画館を支えていくのは観客の存在があってのこと。シネコンも単館系もさまざまな作品が上映されているので、つらいニュースばかり続く今だからこそ、しっかり対策を取りながらぜひ映画を楽しんでもらいたい。

◆休業明けの映画館を救った作品たち

▼コンフィデンスマンJPプリンセス編

7/23公開・興収33億円突破(公開7週時点)

長澤まさみ主演の人気ドラマの劇場版第2弾。興収は前作超えでコロナをはねのけ、すでに第3弾の製作も決定している。

▼今日から俺は!!劇場版

7/17公開・興収52億円突破(公開10週時点)

福田雄一ワールド全開で人気を博した’18年のドラマを映画化。幅広い層を長期間にわたり劇場に呼び込み異例の大ヒット。

▼ジブリ4作品リバイバル上映

6/26公開・累計興収21億円突破(公開5週時点)

新作をかけにくい状況で、東宝が『千と千尋の神隠し』など4作をリバイバル上映。劇場に客足を取り戻すのに一役買った。

▼ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

6/12公開・興収3億円突破(公開7週時点)

劇場再開後、待望の新作として先陣を切り見事に好発進。自分らしく生きる自由を求める娘たちの姿が女性の支持を集めた。

【立川シネマシティ番組担当・椿原敦一郎】

地元資本系シネコン・立川シネマシティで番組編成を担当。「極上音響上映」など独自の企画や番組で支持される劇場として知られる。

【別府ブルーバード劇場館主補佐・森田真帆】

18歳で単身渡米。北野武監督のLAロケなどの撮影に参加し、帰国後は映画ライターの傍ら、別府の老舗映画館を手伝うなどの活動を続ける。

<取材・文/森田真帆 撮影/岡戸雅樹>

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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