【おそ松さん特集10】藤田陽一と松原秀が語り合う第2期最終回!

『おそ松さん』第3期放送開始を記念し、月刊アニメージュのバックナンバーに掲載されたインタビューを再掲載して6つ子の世界の魅力をあらためて紹介する特集「おそ松さんを6000倍楽しもう!」。
今回は2018年5月号掲載の監督・藤田陽一とシリーズ構成・松原秀の対談だ。
第2期放送終了直後に掲載された対談なので、話題の中心はやはり最終2話(第24話「桜」、第25話「地獄のおそ松さん」)のこと。
第24話「桜」は、父の入院を期に自分たちを見つめ直す兄弟、特に長男・おそ松の葛藤が静かな演出で描かれる。そして第25話「地獄のおそ松さん」は、おそ松が弟たちに”大事な話”をしようとした瞬間、イヤミの飛行機が墜落してきて全員死亡! そして6つ子のハチャメチャな地獄巡りがはじまる。
最終2話のシリアスからギャグへという流れは第1期と共通だが、第2期はさらにドラマチック。そして、そこには若いファンに向けたある種の”メッセージ”も込められていた。
なお、文中にもあるように当初この取材はキャラクターデザイン・浅野直之も含めた3人での座談会だったが、浅野が急遽欠席。その代わりに浅野が描いた「お詫びイラスト=詫びイラ」は第1期最初のティザービジュアルに自らオマージュを捧げたもので、当時、ファンのあいだで大きな話題となった。

クール&ドラマチックなラストスパートはいかが!?
藤田陽一【監督】×松原秀【シリーズ構成】

「桜」はつまり「さわやか3組」だった?

——本日は藤田さん、松原さん、浅野(直之)さんの3人での『おそ松さん』第2期総括座談会の予定でしたが、何と先ほど浅野さんから「ギックリ腰になって動けないから欠席します」という緊急連絡が入りました!

松原 やりやがりましたねえ、アイツ(笑)。

藤田 欠席のお詫びイラスト、略して「詫びイラ」のひとつも描いてもらわないことには収まらないですね、これは(笑)。

——ということで急遽、藤田監督と松原さん、2人でお送りする総括対談です。まず最終回の第25話「地獄のおそ松さん」、完成しての手応えはいかがですか?

松原 めっちゃいいと思います!

藤田 マジすか? オレはまだ客観的には観られないところがありますけど。できたばっかりなんで。

松原 ついさっき完パケ映像が送られてきて観たばかりですけど、スゲぇ! よくできてる!! と思いました。おもしろかったです。

——どのあたりが特に?

松原 いや、おもしろいところがたくさんあって、「どこ」とは言いにくいんですが(笑)。

藤田 弁当箱からはみ出す勢いで、大量にネタが突っ込んでありますね。

——で、最終回を語るならやはり、第24話「桜」とセットかなぁと思うのですが。

藤田 ああ、そうですね。

松原 確かに僕の中でも結構、2話でつながっているかもしれないです。

藤田 第1期のラスト2話よりつながってますね、あくまで「前回比」だけど。もっと言うと、2クール目の後半からラストに向けた前振りを少しずつ入れていました。「ニート矯正施設」(第21話)とか「深夜の日松屋」(第21、23話)とか。

——「日松屋」もそうなんですか?

松原 そういう意味もあった、みたいな感じです。単発で楽しんでもらっても全然、問題ないですけど。

藤田 「日松屋」は、こんな奴らが現実にいたら相当キツいよね、という6つ子本来の「ダメな連中」感をあらためて観てもらった感じです。その上で「桜」を観れば、また違った見え方がするかなと。

——「桜」のストーリーは、どんな風に生まれたのでしょうか?

松原 僕は、何となく「やっとかなアカンなぁ」という気持ちがあったんですよ。「ちょっと重いけど、やっといたほうがいいよね……」みたいな。ギャグものとはいえ、全部「ウソ」、全部「オチャラケ」では、何かなぁ……と。

藤田 逆に、普段「ウソ」や「オチャラケ」でやっているからこそ、やりたくなったり、効いてきたりするエピソードだとも思う。

——藤田監督は第24話で、何を見せたいと思っていました?

藤田 まあ、演出的に漠然とやりたかったのは、「青春モラトリアムもの」というか。モラトリアムの終わりは別におそ松たちだけの話じゃないぞ、お前らも悩めよ、悩んでもいいんだぞ、という若い観客に向けたマジレスですかね。答えはないけど、悩むことそのものに意味があるんちゃうの? というのが描きたかった。

——「お父さんが倒れた」と聞いた6つ子がそれぞれどんな対応をするかは、スムーズに決まりましたか?

松原 おそ松が中心の話だったので、おそ松がどうするかは、藤田さんやプロデューサーといろいろ相談しつつ調整していった感じです。残りの5人はほぼ僕のほうで考えましたけど、こいつはこうする、あいつはこうすると、わりと違和感なく決まりましたよ。

藤田 そうでしたね。カラ松くらいじゃないですか。打ち合わせで何となく「こいつ、どこで働く?」みたいな話が出たのは。

松原 おそ松に関しては、あれだけ腹の内をさらけ出したのは多分、はじめてだと思うんです。それは、僕の中では「とっておいた」イメージなんですよ。ある意味、第2期のメインというか、何となく「あいつ、最後に本音を言うのかな……」と。

藤田 おそ松については、そんな風に描こうって初期から言っていましたよね。シリーズを通してちょっとずつ積み重ねる感じで。

——おそ松がみんなを集めて「ちょっと言っときたいことがある」と言って終わりますが、あれは何を言いたいと思っていたんですか?

藤田 おそ松が悩んだ末に何を言おうとしたか……その答えは、見た人それぞれにバラバラでいいかなと思ってます。だから、画面でも表情を拾ってないし。

——確かにあの場面、おそ松の表情は一切映りませんね。

藤田 おそ松の言いたいことがポジティブなことなのか、ネガティブなことなのか、それもわからないように撮ったつもりです。なるたけフラットに演出して、解釈は見た人にお任せします、と。つまり「それぞれ考えてください」というのが、あのエピソードで言いたいことなんで。第1期の「手紙」に比べると、かなり大人な演出にはなっていると思いますよ。「手紙」はわかりやすく昭和のホームドラマ風にしたけど、「桜」はもうちょっと平成風というか今っぽく、メロウになりすぎることもなく、淡々と撮りました。特にBパートは、音楽もほとんどつけずに事実を粛々と描いていけばいいかなって……。まあとにかく、若い子たちが観ているなら「お前らの話だぞ」ってことです(笑)。

松原 そう、自分たちより若い子が観ているってことを知っているからこそ、さっきも言った「やっとかなアカンなぁ」という謎の使命感が、余計に大きかった気がします。そうじゃなければ全部オチャラケで、おもろいことばっかりで、みたいなノリでもいいかなと思うけど、若い子が観ているから全部「ウソ」はなぁ、みたいないらん使命感が……何か、言葉にすると恥ずかしいことを言ってしまいそうですねぇ(笑)。

藤田 はははは(爆笑)。いいじゃないですか、お客さんは「恥ずかしい言葉」を聞きたいと思いますよ。

松原 (笑)。実際、観る人によって印象が違うんじゃないかなとは思います。「え、別に悪いこと何も起きてないじゃない?」っていう人もいるでしょうし。逆に、ただひたすらしんどい話だと感じる人もいるでしょうし。

藤田 もっとめっちゃ若い子だったら、何の話かよくわからないかもしれないし。まあ「さわやか3組」みたいな話ですよ。

松原 ……「さわやか3組」?

藤田 いや、見た人それぞれ考えてね、という意味で(笑)。





(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会

最終回だからみんな死んじゃえばいい!?

——「桜」では、宝探しに行くイヤミたちを見送るおそ松の姿が印象的でした。「モラトリアムの終わり」の象徴として、淡々としつつも切なく表現されていてグッと来ました。

藤田 はい、はい。

——で、それがまさか「地獄のおそ松さん」への伏線になっているとは……と(笑)。

藤田 ははは(笑)。

松原 ありましたよね、「やりやがったな!」感が(笑)。

——宝探しに出発したイヤミの飛行機が6つ子の家に墜落して、おそ松が「言いたいこと」を言う前に全員死んで地獄に落ちてしまう、という展開でした。あらためて聞くのもちょっと間抜けですが(笑)、最後に生き返るとはいえ、どうして6つ子を殺しちゃったんですか?

藤田 まあ最終回なんで、みんな死ねばいいんですよ。

松原 ……(笑)。ええと、まず第24話が「何となくこんな話かな」と決まり、じゃあ最終回はどうしよう? ということで。何かアイデアを出すきっかけにでもなればと、熱海に行ったんですよ。

藤田 そう、また熱海に行って打ち合わせ。熱海打ち。

松原 そしたら、なぜかそんな話が出てきたんですよね。「最終回だから死んだほうがいいんじゃない?」みたいな(笑)。あと、地獄に行ったらF6もいるのかなとか。

藤田 最近見ないキャラクターはみんな、地獄に落ちてりゃいいんだよって。少なくとも天国には行ってないだろうから。それに、わりと初期から、地獄をネタにした話はやりたいなっていうのもあったので。

松原 そうでした。それを結局、最終回に持ってきた形ですね。それにしてもあんなフザけた話なのに、終盤の盛り上がりはすごかったですよね。ちょっと観ていて「熱さ」も感じましたよ。最後にアガってくところでウルっときたっていうスタッフもいましたけど、僕もその気持ちはわかりましたよ。

藤田 後半は熱血少年アニメですからね、演出の方向性が。

松原 確かに、何とかしようと必死にあがいている感じでしたね。

藤田 第1期の最終回(「おそまつさんでした」)は、あえてドラマを排したお祭り騒ぎだったけど、今回はちょっとドラマチックにしました。とはいえ、やっぱり最後はお祭りにしたいから、最終回らしくカロリーを無理矢理使って、強制的にテンションをアゲてみたって感じですね。

——せっかくなので、後半のエピソードで藤田監督的に印象深いものを挙げていただけますか?

藤田 印象深いエピソード……まあ「イヤミはひとり風の中」(第18話)かな。あれは、第2期をやると決まった段階で、最初から「やらないといけない話」と自分の中では決めて、勝手に背負い込んでいたんです。だから完成した時は、肩の荷が降りた感がありましたよ。

——あの話は原作にあるエピソードですよね。原作では「時代劇」ですが、今回は終戦直後の雰囲気にアレンジされていました。どうしてあのエピソードをやろうと?

藤田 それは単純に、小1、小2くらいの時に原作を読んで、いまだに覚えていた話だから。ただ、イヤミのキャラクターがある程度認知されてからじゃないとできない話なので、第1期でやるのは無理で。第2期があったらやろうと思ってました。

松原 結構、早い段階から準備をしていて、確か最初は1クール目に入っていましたよね。だけど「まだちょっと早いか」とか……。

藤田 あと「こっちの話を先にやっとかなアカン」とか、そういう調整をしているうちに、思ったより後半にやることになりました。

——赤塚不二夫先生らしい、チャップリン風の人情話が見応えありましたし、終戦間もない風景の描写もさりげなく細かかったですね。

藤田 いやあ……TVシリーズの1話こっきりで、あんなことをやっちゃあいけないな、と。各話のスタッフが頑張ってくれたおかげで、いい形になったと思います。(赤塚)りえ子さん(赤塚不二夫の娘でフジオ・プロ社長)もあの回をめちゃくちゃほめてくださったそうで。やってよかったなと思いました。

——では最後に。第2期を作り終えての今のお気持ちをお願いします!

松原 ……こういうのって普通、感慨とかあるんでしょうか?(笑)。

藤田 物語がキレイに終わったらあると思いますけど……オレも『貧乏神が!』とか『クラシカロイド』の第1期とか、キレイにお話を終わらせたなって時は、少し感慨みたいなものはありましたよ。でも、『おそ松』みたいに永遠に続いてもおかしくないタイプの作品だと、特に何もないなっていう感じで(笑)。

松原 「終わった感」を抱きにくいタイトルってことですね。あ、あと個人的には、少し6つ子を休ませたほうがいいんじゃないかな、と思ってます。さすがにあいつらも、疲れたんじゃないですかね(笑)。

藤田 EDイラストで浅野くんは「魔他井津華怒狐火出!(またいつかどこかで!)」って書いていましたね……卒塔婆に。

松原 前向きなメッセージだけど、書いてある場所がなぁ……(笑)。

藤田 というわけでこの対談も、締めの言葉は浅野くんの詫びイラに任せるってことで!(笑)

▲「詫びイラ」by 浅野直之

(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会

当記事はアニメージュプラスの提供記事です。

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