多摩川で金を採掘。時給にするといくら儲かる?

日刊SPA!

◆武田の隠し金山もあった多摩川

東京都心部を流れる多摩川は意外に懐が深く、奥多摩秩父山系に起源を持つ一級河川だが、この川で砂金が採れることはあまり知られていない。現在でも中流域の、岩盤の露出した地点を丁寧に見て回れば、砂金粒が刺さっているのを見つけることができる。

実は多摩川の源流には、かつて戦国大名武田家の隠し金山が存在した。「黒川金山」がそれである。武田家の屋台骨を支えたといわれる幻の金山だが、謎めいた伝説がいくつか残されている。いわく、「この金山を発見したのは『六人衆』と呼ばれる平家の落武者で、現在の一ノ瀬集落に住み着いた」とか、「金山には結界が張られていて、探鉱師は必ず道に迷い、決して発見することができない」などなど。しかし最も有名なのは「おいらん淵」だろう。

かつてこの金山には「黒川千軒」といわれる鉱山街が形成され、多数の遊女が暮らしていた。あるとき深い渓谷に「渡り舞台」を差し掛け、酒宴が催されたことがあった。

多くの遊女が舞を披露するさなか、突然、舞台が切り落とされ、遊女たちは谷底に真っ逆さまに墜落した。滅亡寸前の武田家が口封じのために殺したのだと伝えられる。それ以降、「おいらん淵」には遊女の霊が出ると言われ、西東京では名の知れた怪談スポットとなっている(※現在はトンネルができたため訪ねるのは難しい)。

◆砂金が濃集する「寄せ場」

奥多摩湖を過ぎ、さらに山梨方面へ車を走らせると、左手に林道の入り口が見えてくる。本流は通年、水量が少なめで、真夏でも冷たく気持ちがいい。河原を歩いて10分ほど。左手に、黒川金山に至る沢が見えてくる。

少し登ったあたりで、沢全体を塞いでいる大岩を見つけた。しかも露出した岩盤に乗り上げていて、隙間に砂利が堆積している。上流から流れてきた土石流は、この大岩にぶつかって逆巻く。従って砂金は、この岩の下に沈殿するはずである……という読み(妄想?)のもとに、さっそく掘ってみよう。

砂金が濃集する「寄せ場」には、いくつかの条件がある。「露出した岩盤」、「カーブした川の内側」、「大きな岩の下手」などがその代表だが、もっとも簡便な方法は、露出した岩盤に走る、川の流れと直角に交差する亀裂に挟まった砂利、あるいはそこに自生するコケや雑草の根っこを丹念に洗ってみるのがいい。使用するのは、スコップと砂金掘り専用の「ゴールドパン」である。水面に近い砂利はとりあえず捨て、20cmほど掘ったあたりからパンでさらってみる。

◆黄金に輝く金粒が顔を出す

スコップで砂利をすくい取り、パンを山盛りにする。トロ場まで運び、パンを水中に沈めて静かにゆする。すると、比重の軽い砂利は浮き上がり、比重の重い砂金はパンの底に沈む。要するに液状化現象を起こすわけである。浮いてきた砂礫を捨て去り、再びゆする。これを幾度か繰り返すと、パンには細かな砂利が残る。これをパンに刻まれた段差を使って、うまく流し落としていくと、黒い細かな粒が残る。これが砂鉄である。

「砂金があるところには、必ず砂鉄が出る」というのは定説である。この砂鉄をパンを回しながら注意深く流していく……おお。あった! 黄金に輝く金粒が顔を出したのである。この瞬間こそが砂金掘りの醍醐味である。パンに残った砂金は、よく乾燥させた指先にくっつけ、水を汲み入れたフィルムケースに落として保管するとよい。

こうして半日作業した成果は、20粒ほどの細かな金粒であった。重量にすると0.05g程度だろうか。敢えて金額にすれば350円。時給換算すれば100円にも満たない。金価格が急上昇している昨今でも、この程度である。

◆砂金掘りは違法行為?

ここで読者は本質的な疑問を持たれるかもしれない。「砂金って、勝手に掘っていいのか?」ということだ。まさにご指摘の通りである。砂金採取には法律上、いくつか注意すべき点があるのだ。

まず、管轄する都道府県の森林管理署に入林届を提出する必要があること。そして鉱業法第七条により「いかなる鉱物資源も鉱業権がなければ採取してはならない」ことになっているため、砂金掘りをする際には厳密には鉱業権を取得する必要があるのだ。

社会通念上、趣味の範囲で採取する程度なら容認される……かもしれないが、鉱業権ナシで砂金を採取することは違法行為であることを念頭に置いておこう。また採取した砂金を売買する、イベント化して金銭を徴収する、機械などを使用して大規模に採掘することなどは、間違ってもしないようにしたい。

◆時給はたったの100円だけど……

しかしそれでも、筆者は言いたい。「砂金掘りはカネ儲けではない」ということを。

砂金の採れる川は、概して山間部の清流である。パンを洗う手をふと止めると、川のせせらぎが耳に飛び込んでくる。吹き渡る涼やかな風。鳥のさえずり。新緑のにおい。そこが都会を離れた別天地であることに、誰もが気づくだろう。そして顔を出した砂金が、数千万年もの時を経て、今自分の手元にある不思議さ。金色の小さな輝きに、地球という生命の神秘を思わずにはいられない。さて、早く家に帰って黄金の液体(ビール)でも飲むとするか。採取した砂金は川に戻し、筆者は帰路についた。

【中山茂大】

(なかやま・しげお)ノンフィクションライター。北海道出身。上智大学文学部卒。主な著書「ハビビな人々」(文藝春秋)、「笑って! 古民家再生」(山と渓谷社)、「田舎暮らし始めました」(LINE文庫)など。「渓流」(つり人社)にて砂金掘りの記事を、「ノースアングラーズ」(つり人社)にて「ヒグマ110番」を連載中

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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