【インタビュー】豪華絢爛な王朝絵巻!古典中の古典、牧阿佐美バレヱ団『眠れる森の美女』は王子2人が初役~全国配信も決定

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【動画】牧阿佐美バレヱ団 2020年10月公演「眠れる森の美女」P.V.

2020年10月3日(土)・4日(日)に牧阿佐美バレヱ団『眠れる森の美女』の公演が行われる。去る8月に行われたコロナ禍による自粛後初のガラ公演「サマー・バレエコンサート2020」に続く、今度は初の全幕物の舞台だ。

『眠れる森の美女』は「古典中の古典」とも言われる名作バレエ。またバレヱ団のこの作品は、ルイ14世時代の王朝絵巻を思わせる、豪華絢爛な衣裳や舞台セットであることも魅力のひとつだ。

主演を務めるのは青山季可&清瀧千晴(3日)と中川郁&水井駿介(4日)の2組。幾度となくオーロラ姫を踊っているベテランの青山、今回が2度目のオーロラ役となる中川に対し、王子役の清瀧と水井は初役だ。10月3日の公演はオンラインによる配信も決まり、約10カ月振りとなる全幕舞台の公演に向けバレヱ団のモチベーションもいよいよ高まっているという。舞台にかける意気込みを、中川郁、清瀧千晴、水井駿介の3人に聞いた。(青山は都合により欠席。文章中敬称略)
左から清瀧千晴、中川郁、水井駿介
左から清瀧千晴、中川郁、水井駿介

■「拍手が温かく感じた」8月のガラ公演。スタッフ一丸となりいよいよ全幕舞台の上演へ


――夏のガラ公演を経て、いよいよコロナ禍自粛後初の全幕物の公演となります。自粛期間中の思いを含め、今のお気持ちは。

清瀧 バレエを見たいと思ってくださる方々にようやく舞台を見ていただける。バレエの公演は観客の皆様がいて初めて成り立つということを再認識した自粛期間と、自粛明けのガラ公演でした。今回はさらに全幕物の舞台で、オーケストラ付き。バックステージのスタッフの方々も含め、舞台に関わる全ての方々の力が結実してできる舞台です。とくにオーケストラの方々も、自粛期間はとても辛い思いをされていたと思います。そうした方々と一緒に舞台が作れるということが楽しみであり、またいかにこれが貴重な機会であるかという思いも含め、期待感もいっぱいです。

個人的には自粛前に少し身体を壊していたので、自粛期間はメンテナンスをする時間にあてられました。心身ともに自分に向き合う、いい時間になったと思います。

中川 自粛期間は体が思うように動かせなくて、バレエ団のオンラインレッスンをやっていても自宅では回れない、跳べない、といった制約などがあり辛かったです。バレエ以外の料理や編み物といった趣味をやりながら、気持ちのリフレッシュをしていました。

8月のガラ公演で久々に舞台に立ったとき、舞台ってこんなに広かったのか、照明ってこんなに明るかったのかと思い、なぜかすごく緊張しました(笑)。今はその経験を踏まえたうえで、舞台の上にいることを想像しながらリハーサルをしています。

水井 3月の『ノートルダム・ド・パリ』、6月の『ロミオとジュリエット』の公演が中止になってしまったのが残念でした。「ノートルダム」はフロロ役として最後の最後までリハーサルを進めていたところだったし、「ロミジュリ」ではロミオの役をいただき、自分のキャラとは全く違う役をどう演じていこうかと考え楽しみにしていたので、全てが不完全燃焼の状態で悔しい思いもあり、ストレスのようなものを感じていました。

ですから、8月のガラで(青山)季可さんと『海賊』を踊ったとき、通常より少ない50%のお客様でしたが、拍手がいつもより温かく、大きく感じられてすごく幸せでした。ガラ公演はライブ配信があったので、普段忙しくて劇場に来られなかったり、東京まで出てこられない地方の方々も見てくださって、ある意味バレエの新しい見せ方に繋がり良かったと思いますし、そうしたたくさんの方々に見ていただけたのもうれしかったです。
撮影:鹿摩隆司
撮影:鹿摩隆司

■水井は子役時代にウヴァーロフの姿を間近に。中川は二度目ゆえの課題も


――そうした状況を経て、いよいよ『眠れる森の美女』(以下「眠り」)の公演です。水井さんは初めての王子役になりますね。

水井 「眠り」の王子というのはクラシックバレエの王子の中の王子という役で、今回全幕を踊る機会をいただけてうれしいです。同時にどうやってその王子の風格や品格、人々に憧れられるような立ち居振る舞いができるのかなと研究しているところです。

実は僕、小学生の時に新国立劇場の『眠れる森の美女』公演でガーランドの子役で出演する機会があったんです。その時の王子がウヴァーロフさん(※アンドレイ・ウヴァーロフ/元ボリショイ劇場バレエ団プリンシパル)。王子の中の王子という方で、あの姿を間近で見たときは衝撃的でした。しかも劇場もセットも衣装も豪華で、舞台には噴水があって水まで出ている。すべてが強烈で新鮮だったことを今でも覚えています。

ウヴァーロフさんの姿を自分の思い描く王子像とするにはあまりにも自分とのギャップがすご過ぎて無理ですが(笑)、僕が子供の頃に感じた「見て、憧れられるような存在」にはなりたいなと思います。でも一番はまず、郁ちゃんに憧れられるような王子にならないといけないんだけどね(笑)。

中川  (笑)駿介君とのリハーサルはすごく勉強になります。彼はとてもストイックで、絶対に納得がいくまでやるしうやむやにしない。私も駿介君に引っ張られて、互いに切磋琢磨できる感じで、とてもありがたいパートナーです。
撮影:山廣康夫
撮影:山廣康夫

――中川さんは2017年に続いて2度目のオーロラ役です。今回の役に対するアプローチは。

中川 「眠り」はバレエの真髄が凝縮されているような作品で、1回経験しているから2回目はでは楽かというとまったくそうではなく、また高い壁が聳えている感じです。前回はバレヱ団の過去の映像はもちろん、プロダクションのベースとなっている英国ロイヤルバレエ団のDVDなどを見て勉強しましたが、今回は16~17世紀のフランスの衣装についてや、物語のモデルとなったユッセ城をネットで見るなど、世界観について勉強をしてイメージを膨らませています。あの時代のかぼちゃパンツの中には武器などを隠してはいけないとか(笑)、暮らしなどを調べているうちにその時代が身近に感じられるようになってきました。

課題のひとつにはオーロラ姫の演じ分けがあるのですが、私的には1幕のオーロラのイメージは「小鹿のバンビ」っていうのでしょうか、初めて外に出た嬉しさで跳ねまわり、目に映るものすべてが新鮮。でも幻想は王子の理想の姿であり、王子の目を通して舞台上に存在するオーロラです。ここは音楽がとても美しくて大好きなので、大切に踊っていきたい。3幕は古典ならではの型をしっかりと見せていかなければならないなと思っています。
撮影:山廣康夫
撮影:山廣康夫

■ベテラン清瀧は初の「眠り」の王子に。3幕の結婚式は「2人で踏み出す第一歩」


――清瀧さんは「眠り」で今回が初の王子というのがとても意外な気もします。

清瀧 皆さんそう仰います(笑)。僕にとって「眠り」といったらブルーバードで、これまで6人くらいのフロリン王女と踊っており、すごく愛着のある役です。でも全幕の「眠り」の王子を踊らせていただける機会は早々ないので、やはりうれしいです。先ほども話しましたが、オーケストラやバックヤードのスタッフの方々など、いろいろな方々の思いを背負って踊るところも大きい。できる限りの王子を演じていこうと思います。
ブルーバード(清瀧千晴) 撮影:鹿摩隆司
ブルーバード(清瀧千晴) 撮影:鹿摩隆司

パートナーの季可さんとは『ドン・キホーテ』で初めて組んで以来、これまでにいくつもの作品を2人で踊ってきました。その季可さんと今回「眠り」というグランド・クラシックバレエを踊れるというのはとてもありがたいです。季可さんもキャリアを重ねて、たぶんオーロラ姫は4回くらい踊っているんじゃないかと思うんですが、お互いにこれまで積み重ねてきたものを、舞台でしっかりと出せればいいなと思っています。

王子の役どころとしては2幕からの登場になりますが、『白鳥の湖』の王子同様、なにか腑に落ちないところを感じている。そこで幻想のオーロラと出逢い、今まで味わったことがないような感情が芽生え、そこからやはり変わっていくんですよね。中川さんがさっき音楽がとても美しいと言っていましたが、僕もそう思いますし、その音楽に乗せて王子の心情を描いていきたい。「眠り」は3幕の華やかなグラン・パ・ド・ドゥも見どころですが、2幕の心理描写などにも注目して見ていただければと思います。
オーロラ姫(青山季可) 撮影:鹿摩隆司
オーロラ姫(青山季可) 撮影:鹿摩隆司

水井 『眠れる森の美女』は、サブタイトルは「オーロラ姫の結婚」といっても言い過ぎではないくらい姫が中心ですから、3幕は幸せな気持ちいっぱいで踊れればと思います。とくにあのグラン・パ・ド・ドゥはオーロラ姫と王子が人々の祝福を受けてともに踊る最初の踊りですよね。これから一歩一歩、2人でともに歩んでいくんだという思いがあり、そして祝福され幸せいっぱいの状態で幕が降りる。そういう幸福感、新たな人生の始まりというのを舞台から伝えたいと思っています。

■配信を通じてそれぞれの場所で「劇場空間」を楽しんで


――この「眠り」は3日の、青山さんと清瀧さんの公演がオンライン配信される予定です。

清瀧 聞くところによるとカメラが4台くらい入って、多様な角度から撮るようなのですが、アップになったりもするので、表情など細かいところには気にしつつ踊らなければならないかなとは思っています。

ただ、劇場に来ていただいたお客様の生の熱気も含めての舞台であり、そうしたところも伝えたいというお話なので、個人的にはいつもの通り、劇場のお客様に向けてのパフォーマンスをするというところに集中していこうということを季可さんと話しました。

今回はライブ配信で、編集したテレビ放送とは違うので、舞台のライブ感を楽しんでいただければと思いますし、劇場に行かれた方もライブも観ていただけると豪華な衣装などが至近距離で見られるといった楽しみ方もあると思います。
撮影:山廣康夫
撮影:山廣康夫

――最後にお客様へメッセージを。

中川 この作品は「ザ・バレエ」という古典作品の代表作です。初めての方でも分かりやすく、衣裳や舞台セットも絢爛豪華で、この作品ならでは見どころがたくさんありますので、ぜひ見にいらしてください。

水井 まだこのコロナ禍の状態が終息したわけではありませんが、僕たちバレヱ団のダンサーは感染対策などに全力で取り組みながら、毎日の稽古やリハーサルに挑んでいます。もちろん劇場でも可能な限りの感染対策を徹底的にしているので、ぜひ日常を忘れられる空間を楽しみに、来ていただければいいなと思います。ライブ配信もぜひ、ご覧になってください。

清瀧 バレエ『眠れる森の美女』は、実はそう頻繁に全幕上演がある演目ではありません。今回は文京シビックホールの20周年を祝う記念公演として上演されます。牧阿佐美バレヱ団のホームといえる劇場のこのような特別な機会に、バレヱ団としても10カ月ぶりとなる全幕公演で『眠れる森の美女』を踊れることを本当に嬉しく思っています。装置や衣装、そして生のオーケストラで上演される、本格的なバレエをダンサー達も一丸となってお届けしたいと思っています。ライブ配信という、今だからこその新しい形もとられていますので、お客様それぞれの場所で、劇場にいるのと同じ時間を共有できればいいなと思います。

――ありがとうございました。
撮影:鹿摩隆司
撮影:鹿摩隆司

取材・文=西原朋未

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