文系 vs 理系「勉強になるマンガ」はコレだ!先生と学生に聞くオススメ漫画14選

Kindai Picks



日本を代表するカルチャーのひとつ、マンガ。娯楽として楽しむものだけでなく、医療系や建築系など、学生や大人が読んでも勉強になるマンガが世の中にはたくさん存在しています。

近畿大学の「アカデミックシアター」は、約7万2千冊の蔵書を誇る全蔵書のうち、約2万2千冊がマンガ。2階「DONDEN(ドンデン)」は、マンガで学生の想像力を触発し、新書や文庫で興味・関心へと導く「知のどんでん返し」を目指した空間になっています。

そこで今回は、個性豊かな先生と、図書館サポーターApricotConciergeに所属する学生に、文系・理系の勉強になるオススメのマンガをプレゼンしてもらいました!

専門性が高く魅力的な作品が、きっと日々の学びに力を添えてくれるはず。もちろん、他学部の学びを知ることができるので全ての学生にもオススメです。

※現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、アカデミックシアターの利用は人数を制限した事前予約制となっています。

文系学生にオススメのマンガ




まずは文系の学生にオススメのマンガをご紹介! 経営学部の熊谷先生、総合社会学部の岡本先生、そして文系学部の学生がセレクトしてくれました。

経営学部・熊谷先生オススメ!コロナ禍に読みたいマンガ



熊谷 哲哉(くまがい てつや)

経営学部 教養・基礎教育部門准教授

ドイツ文学を専門とし、第二外国語としてドイツ語の授業を担当している。著書に「ミニマムドイツ語(朝日出版社)」、「言語と狂気―シュレーバーと世紀転換期ドイツ(水声社)」など。


大学とはいったいなんだったのだろうか?


『全員くたばれ!大学生』

著者:サレンダー橋本
出版社:扶桑社

◆こんな学生にオススメ
コミュニケーションが苦手な自分を変えたい人、実はキラキラした学生生活を送ってみたいと思う人

◆熊谷先生のオススメポイント
新型コロナウィルスの収束がいったいいつになるのか全く予想ができない状況の中で、私たち教員もまた大学には行かず、自宅で遠隔講義や授業動画の作成に勤しんでいます。私たちにとっての大学とはいったいなんだったのだろうか……?と思いながらしみじみと読んだのが、『全員くたばれ!大学生』です。

この作品でやや誇張して描かれる、勉強しない馬鹿騒ぎのキャンパスライフは、コロナ禍の現在、もはや消滅しつつあります。私だって、本作の主人公・哲太のように、かつてはあまり友達などおらず、歯噛みしながら大学に通っていた貧乏学生だったので、学生たちが期待するようなキラキラしたキャンパスライフなど、本当は大嫌いです。

しかし、オンライン授業の配信とレポート課題だけになってしまった学生生活は、なんと味気ないことでしょう。このマンガが露悪的に描き出している大学生の姿は、今の私たちにとっては、失われたものへの憧憬のように写ります。自意識や劣等感に悩んでいた哲太が少しずつ変わっていくように、大学のキャンパスには私たちを成長させる力があるのです。コロナの収束はまだまだ見えませんが、大学がふたたび活発な学びの場に戻ってくれることを心から願っています。

総合社会学部 岡本先生オススメ!「社会」を学ぶマンガ



岡本 健(おかもと たけし)

近畿大学 総合社会学部 総合社会学科 社会・マスメディア系専攻 准教授

1983年生まれ。担当授業は「現代文化論」「情報と社会」など。博士(観光学)。専門は、観光社会学、アニメ聖地巡礼、コンテンツツーリズム、ゾンビ。著書に『ゾンビ学』(人文書院)、『アニメ聖地巡礼の観光社会学』(法律文化社)、『巡礼ビジネス』(KADOKAWA)、などがある。


総合的に社会を見ていく「視点」を学ぶ


『重版出来!』

著者:松田奈緒子
発行:小学館

◆こんな学生にオススメ
社会の「仕組み」に興味がある人、いい仕事とはどういうものか気になる人

◆岡本先生のオススメポイント
みなさん、この作品のタイトル名、読めますか?「じゅうはんしゅったい」と読みます。

書店に並んでいる本は、出版社が内容をつくり、印刷所で印刷され、取次と呼ばれる流通業者やネット通販サイト、書店などを通じて人々の手元に渡っていきます。この「最初に印刷する数」を初版部数といいます。みなさんの教科書として使われることの多い、いわゆる学術書なら1000部から2000部。『鬼滅の刃』のような大ヒットマンガ作品なら一気に数百万部印刷します。

作品が売れて初版が売り切れそうになると、さらに印刷して生産を強化する必要があります。これを「重版」や「増刷」と呼びます。厳密にいうと、このふたつの言葉は意味が違うのですが、どちらも「事前に予想していた以上に売れている」という出版社や著者からするととても嬉しい状況。これを「重版出来」というのです。

『重版出来!』では「出版」「マンガ」「雑誌」を通して、人、モノ、コト、場所やそれぞれの関係性について考えさせてくれます。しかも、主人公は世の中にとても「前向き」で、なんとかみんなが幸せになるようにと頑張ります。

総合社会学部は社会・マスメディア系専攻、心理系専攻、環境・まちづくり系専攻の3つで構成されています。それぞれ非常に広い範囲を射程に収める学問が合わさっていて、この学部で学べることは膨大です。『重版出来!』は、上で説明したような出版業界の仕組みの話はもちろん、仕事とは何か、人間の内面、地方の書店が置かれた状況、ネット社会のあり方など、総合的に社会を見ていく「視点」を提供してくれます。私自身、大好きで読んでいる作品ですし、就活前のゼミ生に必ずすすめています。

ブラック企業で削り取られた「人間性」をゾンビが蔓延する社会で取り戻せ


『ゾン100 ~ゾンビになるまでにしたい100のこと』

著者:高田 康太郎
原作:麻生 羽呂
出版社:小学館

◆こんな学生にオススメ
心豊かに生きたいと思う人、幸せの本質について考えたい人

◆学びのポイント
もし、現実世界にゾンビが登場したら、みなさんはどうしますか?

せっかく夢をもって入ったその会社はなんと超のつくブラック企業! サービス残業、ハラスメントは当たり前の仕事人生に、精神崩壊寸前の主人公・アキラ。

そんな彼を襲うのは「ゾンビ」。ある朝起きて出社しようとすると、世の中ゾンビだらけになっていたんです! 最初はなかなか状況が受け入れられず「それでも会社に行かないと!」と焦るばかりですが、しばらくしてふと気づきます。

「今日から会社に行かなくてもいいんじゃね?」

彼はゾンビだらけの世界で、これまでしたくてもできなかったことをどんどん実現していきます。忙しすぎて荒れ果てた自宅の掃除、親友と朝まで飲んでバカ騒ぎをする、回っていない寿司をたらふく食う、温泉でのんびりする……。

ブラック企業で削り取られてしまった「人間性」をゾンビが蔓延する社会で取り戻していく物語です。彼の変化は、周りの人々も巻き込んでいきます。コミカルなタッチで読みやすく元気のでる作品ですが、「楽しく暮らす」「豊かに生きる」ってどういうことなのか、考えさせられますよ。

文系近大生がオススメする文系マンガ4選!



藤田 菜摘(ふじた なつみ)

法学部 法律学科 3年生


起業家・投資家の裏の顔や日本経済の動きを学ぶ


『王様達のヴァイキング』

著者:さだやす
ストーリー協力:深見真
出版社:小学館

孤独だった天才ハッカーを青年投資家が見つけ、IT業界を舞台にふたりで活躍していくストーリーです。最初はハッカーとしての腕を利用し会社を立ち上げていくが、次第にサイバーテロを起こす犯罪者と戦っていくように……。展開がすごく王道少年マンガなんですが、ライバルや巨大な敵と戦っていくための武器がパソコンというのが新鮮でワクワクします。そして、主人公たちがそれぞれ会社を設立するために、自分の能力をどう活用すれば商売になるかを考えていて、起業について学ぶことができます。また、作中では仮想通貨がメインとなる話もあり、仮想通貨が経済に与える影響なども描かれています。

江戸初期~後期までの政治・文化とジェンダー問題


『大奥』

著者:よしながふみ
出版社:白泉社

江戸時代初期、男子にだけ流行する未知の感染症が原因で男性人口が激減し、女性ばかりのアンバランスな世の中になった……という「if」をベースに、男女が逆転した江戸城・大奥を描いた作品です。

徳川家や周辺の老中など、江戸幕府の主要なキャラクターが女性になっているのですが、史実とうまく馴染ませていて違和感がありません。歴史の道筋は同じなので、楽しく江戸初期~後期までの政治や文化を学ぶことができます。また、男女逆転していることでジェンダー問題についても考えることができます。

そして、物語中盤以降となる治済・家斉編は、先述した未知の感染症の完治方法を見つけようとする人々の闘いがメインとなります。今の世の中に通じるものがあるのではないでしょうか。

言い訳は置いといて手を動かし続けろ!


『かくかくしかじか』

著者:東村アキコ
出版社:集英社

ヒット作品を何度も生み出している東村アキコ先生の自伝的エッセイ。「私は絵の天才なので、美術系大学に進学して在学中にマンガ家としてデビューするんだ~」と大した努力もせず自分にうぬぼれていた主人公(昔の東村先生)と、そのうぬぼれをへし折り、竹刀とアイアンクローのスパルタ指導で生徒を美大合格へと導く絵画教室の講師・日高先生との日々を描いた作品です。

軽妙なギャグシーンと、プライドを折られ、大きな挫折を味わってもなおもがく主人公の重苦しいシーン、抑揚が絶妙でスルスル読み進めてしまいます。

「時間がないから」「才能ないから」「熱中したいと思えるものがないから」などさまざまな理由をつけて人は手を止めがちです。そんな言い訳は置いといて手を動かし続けろ、と叱咤し続ける日高先生の言葉は、全ての人に刺さります。

歌劇=女版歌舞伎!?プロへと進む少女たちの夢


『かげきしょうじょ!!』

著者:斉木久美子
出版社:白泉社


宝塚音楽学校をモデルにした少女たちの青春学園マンガです。「トップスターになります!」と豪語する少女、元アイドルの少女、大女優を母にもつ少女など、個性豊かな女の子たちが登場し、それぞれのキャラクターたちの目線から物語が描かれる群像劇。

多様なキャラクターが登場しますが、この作品の魅力はいじめなどの話は出てこず、ただただ少女たちが夢に向かってがむしゃらに頑張るところを描いているところ。読んでいて元気が出ます!

女性ばかりの舞台である宝塚歌劇と、男性ばかりの舞台である歌舞伎が図らずとも対比になっているのも興味深いです。

理系学生にオススメのマンガ




続いては理系にオススメのマンガを紹介! 医学部の角田先生からは、楽しく免疫学について学べるマンガを。そして、理系学部の学生もオススメのマンガをセレクトしてくれました。

医学部・角田先生オススメ!擬人化で学ぶ細胞・細菌



角田 郁生(つのだ いくお)

医学部 微生物学講座 主任教授

神経ウイルス学、神経免疫学の専門家として、神経難病の多発性硬化症や心筋炎におけるウイルスと免疫系の役割をデータサイエンスの手法などを用いて研究をおこなう。

近畿大学医学部微生物学教室
近畿大学病院


擬人化した細胞が人体の平和を守るために働く群像劇


『はたらく細胞』

著者:清水茜
出版社:講談社

◆こんな学生にオススメ
免疫学に興味がある人、人体の仕組みについて知りたい人

◆角田先生のオススメポイント
人間の体内にある細胞(主に免疫系の細胞)を擬人化したユニークな作品です。表紙の赤いキャップを被った女の子は「赤血球」、全身が白い男性は「白血球」です。それぞれ専門性や得意分野、性格の違う細胞たちが、人体の平和を守るために働く群像劇となっています。

専門的な見地では内容に正確ではない点もあるのですが、授業や教科書などで修正していけばよいので、この作品によって、学生たちに感染免疫学に興味をもってもらえるという点を高く評価しています。

スピンオフなどを除いて、本作は全5巻あるのですが、うち1~3巻がとくにオススメです。1巻では、いかに免疫細胞が病原微生物から生体を防御しているかという免疫系本来の役割が描かれています。2巻では血球の骨髄での分化や癌免疫も取り上げられてマンガの世界観が広がります。そして第3巻は解剖、免疫、感染症を学べる内容で、とくに第12話の「キラーT細胞」が胸腺で教育される話は、実際のサイエンスとマンガの筋立てがうまくハマっています。

医師国家試験で重要なグラム染色性を楽しく学ぶ


『ばくてり~擬人化細菌学~ ばくてりProject』

著:水上 京
イラスト:外側MAX
出版社:らいふラボらいふ

◆こんな学生にオススメ
わかりやすく細菌や真菌を覚えたい人、病気や感染の原因を知りたい人

◆角田先生のオススメポイント
さきほどの『はたらく細胞』は免疫系細胞の擬人化でしたが、こちらの作品では「細菌」「真菌」が擬人化されています。ちなみに、本書と『はたらく細胞』は学生さんが私に勧めてくれたもので、以来、医学部微生物学の講義で紹介しており好評をもらっています。

微生物学の講義は、とにかく暗記しなくてはならない細菌・真菌の種類が多く、そのグラム染色性、形態が球菌か桿菌か、鞭毛や芽胞の有無は……といった菌それぞれがもつ特徴もあわせて記憶しておくことが医師国家試験などで重要です。とくに、実習でおこなうグラム染色の染色性は、教える側として、学生たちに楽しく記憶してもらう方法を探していたのですが、本書はこの目的に最適の一冊です。

『はたらく細胞』も『ばくてり~擬人化細胞学』も、コロナの時代にあっては、学生さんのみならず、職員・教員のみなさまにもオススメです。ちなみに『ばくてり擬人化Project』は、私の知人の医師が執筆しており、内容に信頼がおけます。現在、電子媒体では、ウイルス編も登場し、コロナウイルスも擬人化されております。こちらもいつか紹介できればと思っております。

理系近大生がオススメする理系マンガ5選!



山下恵未莉(やました えみり)

近畿大学 建築学部 3年生


下半身不随の建築士・阿部一雄さんがモデルになったマンガ


『パーフェクトワールド』

著者:有賀リエ
発行:講談社

インテリアデザイナーと車いすの建築士の恋物語です。自力で身体を動かせない・感覚もない身体障害者の苦労や、「好き」という気持ちだけで全てがうまくいく訳ではない現実に苦しむキャラクターたちの苦悩が描かれています。多様性を求める社会で理解し合うことの大切さ、また、建築やインテリアに関わる主人公たちが、これからのデザインに関しても考えるきっかけをくれます。下半身不随の建築士、鮎川樹のモデルになった阿部一雄さんのインタビュー記事もあわせて読んでほしいです!

つくることの楽しさを再発見できる電子工作コメディ


『ハルロック』

著者:西餅
発行:講談社

電子工作好きな女子大生の学園コメディです。幼少期、DVDプレイヤーや炊飯器を興味本位で分解し「分解魔」と恐れられた主人公の晴が、大学で本格的に電気工作を学びながら多くの人と触れ合う中で、自分の技術で人助けをするまでに成長していきます。

現代ではなんでも買うことができる便利な時代だからこそ、主人公を通して「つくる」ことの楽しさを再発見できる作品です。主人公の、好きなものにまっすぐに情熱を注ぐ姿がかっこいいですし、発明品のセンスがとてもいいんです。知識がなくても読みやすいんですが、電子工作の知識があると制作過程はよりおもしろいはず!

遺伝子操作が産業化した世界から考える技術者としての倫理性


『螺旋じかけの海:音喜多生体奇学研究所』

著者:永田礼路
発行:講談社

遺伝子操作が産業化した世界で暮らす、生体操作師の物語です。この作品の世界は別の動物の遺伝子を掛け合わせたキメラなどが一般的なのですが、高い技術をどのように、誰のために、何を目的として使うべきなのか、技術者としての倫理観を考えさせられます。

差別問題や経済格差など、今世界が抱えている問題にも関係するストーリーがたくさんです。ぜひいろんな人に読んでほしいと思います。

高圧蒸気滅菌器で焼き芋に挑戦したり理系あるあるが満載!


『決してマネしないでください。』

著者:蛇蔵
発行:講談社

理系大学を舞台に繰り広げられる実験系コメディです。フライドチキンで骨格標本をつくってみたり、ホタルイカの発光バクテリアを利用して、お金のかからないクリスマスイルミネーションを好きな子にプレゼントしたり……学生たちの専門性が高くて知恵はあるけど、どこかヌケているところが微笑ましい!

生活の知恵から少し専門的な知識まで、誰かに話したくなるような話がいっぱいあって、読んでいて楽しいです。理系のみなさんだったら「わかる~!」となるエピソードも多いんじゃないでしょうか。学ぶことへの興味が引き出されます。

日本人の数学レベルは高かった!?和算をテーマにしたマニアックなマンガ


『天地明察』

著者:槇えびし
原作:冲方丁
発行:講談社

冲方丁の小説のコミカライズになります。江戸時代前期の天文暦学者・渋川春海が改暦に挑む歴史ものであり、和算をテーマにしたマニアックな作品です。

和算とは、明治以降の西洋数学の導入以前に日本、とくに江戸時代を中心に発達した数学のこと。当時は世界的にみても日本人の数学レベルは非常に高かったといわれているんですよ。

暦というのは季節や気候を知り、いつどんな野菜を育てはじめるのがいいか、服装はいつまでに変えておけばいいのか、現代人にも必要な知識です。それをイチからつくるには天文学や統計学、そして算術の高い知識と経験が必要です。それらを駆使して改暦を成し遂げるさまがマンガならではの表現で描かれていて圧巻です。

まとめ




「こんな作品があったのか!」「こんなニッチな人物が主人公に……!?」と、学生たちの学びたい欲にぴったりハマる作品の数々。読めばきっと、読む前とは全く違う自分へと成長できるはず。まさに「知のどんでん返し」!

ぜひ、高い専門性に彩られた作品に触れ、たくさんの学びを身につけていってくださいね!

(おわり)

文:平山靖子(おかん)
撮影:岡島彩乃
企画・編集:人間編集部

当記事はKindai Picksの提供記事です。

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