佐藤B作&銀平らが東京No.1親子『夜鷹と夜警』で熱演、怪演、大奮闘~福原充則作・演出の最新舞台が開幕

SPICE

2020/9/15 15:00



佐藤B作佐藤銀平による親子ユニット“東京No.1親子”の第2回公演『夜鷹と夜警』が、東京は下北沢、ザ・スズナリにて2020年9月22日(火・祝)まで上演中だ。開幕した9月11日(金)、役者陣が観客を前に舞台に立つ喜びを滲ませつつも、高まる緊張感が確実に伝わってくる初日の舞台を観た。

4年ぶりの公演となる今回も作・演出は旗揚げ公演同様、今、演劇界で最も注目を集めている劇作家・演出家のひとり、福原充則が手がける。出演は、B作&銀平の他に、安藤聖 村上航 喜多村千尋。

新型コロナウイルスの影響を鑑みてのことか、前方のフラットな3~4列は客席にせず、役者が演技できるスペースとして利用し、つまりステージは段差も使って前に張り出した広い状態になっている。さらに舞台上には可動式の柱や壁、カーテンがいくつもあり、それらが場面に合わせて左右に動くことでスピーディーに転換する、つまり壁が移動すると役者やセットが出現する、いわゆる“ブレヒト幕”的な仕掛けとなっているのだ。

劇場内に入ると銀平が舞台上で前説を行っており、感染対策の話やこの公演のために作ったという多種多様なオリジナルグッズの話などをしつつ観客を和ませていた。客席がほどよくあたたまったところで、物語が始まる。
東京No.1親子『夜鷹と夜警』 撮影:露木聡子
東京No.1親子『夜鷹と夜警』 撮影:露木聡子

そこは東京都内からある程度は近いものの、利根川を渡った先でそこそこ離れていることも徐々にわかっていく、地方都市。ノイズ混じりのスピーカーから聞こえる町内放送の音声が祭囃子と共に、この地域のお祭り“吉貫祭り”の開催を明日に控えていることを告げている。そこに登場する、銀平扮する男、中田一政。実家を離れ東京で生活をしている彼は、B作扮する父・中田政雄のある行動を止めるために駆けつけたのだ。この中田親子と周囲の人々とのやりとりから、この町にはあからさまに偏った権力を持つ政治家がおり、様々な方面で利権絡みのズブズブな人間関係ができあがっていることがわかってくる。この親子の間にも、微妙で複雑な感情が揺れていることが会話の端々から垣間見える。

そんな親子を取り巻く個性的な人々が、物語が進むにつれて次々と登場してくるわけだが、何せ今回は、旗揚げ公演の3人芝居よりは人数が増えたとはいえ、出演者がたったの5人。その5人が入れ替わり立ち替わり、途中からはかなりの力技も見せつつ、キャラクターを演じ分けていく。これが、メイクや衣裳やカツラを大幅に変えたりすることではなく、ちょっとしたものを羽織ったり、カバンの持ち方を変えたり、せいぜい帽子やメガネを装着する程度というのが見せどころでもあり、笑いどころでもある。
東京No.1親子『夜鷹と夜警』 撮影:露木聡子
東京No.1親子『夜鷹と夜警』 撮影:露木聡子

そんな中で、B作は父・政雄のほかに、とある“秘技”を持つ謎の女性役を演じ、銀平は息子・一政のほかに“ガヤ”的な役も含めてなんと全6役に挑むという大奮闘ぶり。ヒロイン的な立ち位置でもある権力者の娘・吉貫佐恵を演じる安藤聖は、その本役のほかにも“メガネの女2”というクセの強い脇役で演技の幅を見せてくれるし、また村上航は銀平に次ぐ5役、それも一見実直そうな権力者の片腕や政雄の部下から狂気をはらんだ怪しい人物までを演じ、一方、喜多村千尋は“メガネの女”や“半被の女”などの4役をパワフルに丁寧に演じていく。物語に登場するキャラクターとしては、ここに加えてもう“一役”、実はある意味ポイントの高いというか、注目に値するというか、単に個人的にとても好ましい役どころがあるのだが……この存在に関してはあえてこの芝居を観た方だけのお楽しみということなので、詳細は伏せておくことにしよう。

佐藤親子の熱演、怪演はもちろんのこと、安藤、村上、喜多村の演技力に目を奪われることもしばしば、ではあるのだが、なんといっても福原の紡ぐ物語の転がり方や笑いの散りばめ方が秀逸。日常的でリアルなのかと思いきや、エッ! と驚く仕掛けや展開があったり、はぁ? と気をそがれる抜け具合が時に挟まるのも楽しい。そしてやはり詩的なセリフ、湿度を感じさせる言葉のチョイスには毎度のことながら今回も心を掴まれ、くすぐられ、揺さぶられた。シリアスと笑いのギャップ、視点や表現のひねり具合の塩梅、そしてアングラ芝居の香気を感じさせるカタルシスがとても気持ち良かった。
東京No.1親子『夜鷹と夜警』 撮影:露木聡子
東京No.1親子『夜鷹と夜警』 撮影:露木聡子

可動式の舞台装置がかなり複雑な動きをすること、それも演者自らが人力で動かしたりもするので、初日はかなりスリリングな転換もあったが、徐々に慣れてスムーズになるのだろうし、そこもまたナマの演劇ならばこそ! の面白み。上演時間は2時間弱で休憩なし、とはいえ、劇中では“3分間の換気タイム”を設けて、そこでは“ある俳優の30年以上前の貴重な舞台映像”を流して繋ぐコーナーがあったり、配信用のカメラを意識させる瞬間がサービス的にあったりもする。

劇場に足を運べば、このナマの芝居を体感する喜びが味わえるのは当然ながら、これはたとえ配信(今回はライブ配信もアーカイブ配信も両方あり環境によって選べるのも嬉しい)であってもまさに今、劇場で行われている演劇が肌で感じられることは太鼓判なので、どのような形であれ、とにかくお見逃しなきよう。
東京No.1親子『夜鷹と夜警』 撮影:露木聡子
東京No.1親子『夜鷹と夜警』 撮影:露木聡子

取材・文=田中里津子

当記事はSPICEの提供記事です。

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