バイプレイヤーの泉 第53回 『妖怪シェアハウス』松本まりかの“愛されないキャラ”について考える


幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第53回は女優の松本まりかさんについて。彼女から連想する言葉いくつもあると思います。あざとい、色っぽい、男ウケ……は一般的に。ちなみに最近、彼女のことが好きな私は"強欲"と言う言葉が浮かんできます。これは完全なる褒め言葉なのですが、その詳細を色々と書いていこうと思います。
○触れたくなるような質感の裏側には……?

現在、松本さんは放送中の2作品に出演している。まずは『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ、フジテレビ系)のあらすじを紹介しよう。

両親を自殺に追い詰めた霧島源平(遠藤憲一)に復讐をするため、自分の一生を捧げる覚悟を決めている双子の兄弟、矢端竜一(玉木宏)と竜二(高橋一生)。そのために竜一は整形をして、戸籍も変えて和田猛として生活をしている。竜二は源平の娘・まゆみ(松本)と交際を始め、竜一は経営コンサルとしてキリシマ急便に乗り込み、目的を果たす日に近づいていた……

松本さんが演じているのは、成金の資産家に生まれて家族の誰からも愛されることなく育った、霧島まゆみ。気に入らないもの、欲しいものは全て金で解決しようとする。そんなまゆみは、父親に復讐を企んで近づいてきた竜二を予想外に愛してしまう。復讐が済んだら竜二はまゆみを捨ててしまうのに……? と思うと、切ない。誰かを愛することで柔和になった性格が、また崩れるのかそれとも壊れてしまうのか。

この"愛されない"は、現在の松本さんの演技を語るうえで大きなキーワードになる。彼女の存在が一斉に知られた『ホリデイラブ』(テレビ朝日系、2018年)で演じた、井筒里奈も誰からも愛されない女性だったことを思い出してほしい。

里奈は夫・渡(中村倫也)から愛される実感もないまま、束縛をされて自分の居場所を完全に見失っていた。二人の子どもがいたけれど、愛情の注ぎかたもわからなかったように思う。そして、自分を愛してくれる存在を探して不倫をする。求めていたのは普通の家庭だった。

愛されない、不幸キャラに松本さんがハマったのは、単に可愛らしさもあるけれど、ふんわりとした"質感"だ。でもマシュマロのような柔らかさの裏には、ドロドロとした感情が渦巻いている。そのギャップが演じ辛そうな“愛されなキャラ”を彼女に確立させた。確かに"愛されキャラ"を演じるのは、想像がつくけれど、逆パターンは浮かんでこない。何かをヒットさせたいと思ったら、「誰もやっていないことをやれ」というのは鉄則。彼女はその通りに一つ武器を得た。
○3作品で演じた"愛されないキャラ"の魅力とは?

松本さんがもう1作品、出演しているのは『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系)。

男にも仕事にも恵まれない目黒澪(小芝風花)が辿り着いた、シェアハウス。住人は一見すると普通なのに、実はぬらりひょん、お岩さん、酒呑童子、座敷童子と、全員が妖怪だったことを知る。見た目は怖いけど、手厚く迎えてくれた妖怪たちに心を許す澪。彼女の人生も少しずつ前進し始めた。

と、これがドラマのあらすじ。松本さんが演じているのはもちろん、四谷伊和こと、お岩さん。かつては夫に裏切られて、呪い殺したこともあるほど深い愛情と、倍返しの精神を持つ。こちらはコメディだけど、期待を裏切らずにまた"愛されないキャラ"を全うしている。このキャラをただの不幸枠にだけ留めず、笑いも変えてしまうとは彼女の賢さを感じ取ることができる。

ほんの少し前までパブリックイメージから、女性から好かれていなかった松本さん。世間の評価は気にせず、話題に上がった自分のキャラの一部を操縦して今日の活躍がある。次にどんな役を演じるのだろうか? いや、彼女のことだからひょっとすると演技以外にも目標を打ち立てているのかもしれない。

そう思わせるのは彼女が持つ強欲さである。あのぷにゅっとした外見と可愛らしい声の裏には、とんでもない強度の精神を持っているはず。ちなみに今まで私がチェックしてきた同類の雰囲気を持つ女性は、美容家の神崎恵さん、タレントの紗栄子さん。皆、ビジュアルと生き方がリンクしていないところが魅力的。自分の周囲にたくさんのヴェールを纏っていて、最終的な一枚は絶対に脱がせないようなイメージだ。

松本さんは次にどんな展開を見せてくれるのだろう。その日を楽しみに待ちたい。

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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