村上春樹「高校生の僕にとっては、中毒性のある演奏でした」夢中になったクラシック音楽家・作曲家は?

TOKYO FM+

2020/9/14 06:40

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」。9月13日(日)の放送は「村上RADIO~5分で聴けちゃうクラシック音楽」と題して、リスナーからの要望も多かったクラシック音楽を村上さん流にフィーチャーしてお送りしました。変わった楽器による演奏曲や、思春期から村上さんが愛聴してきた曲、小説に登場した印象的な曲などを放送しました。この記事では、中盤6曲についてお話しされた概要を紹介します。


◆「熊ん蜂の飛行」Ruth Laredo(piano)
リムスキー・コルサコフ作曲の有名な「熊ん蜂の飛行」。この曲は1分ちょっとしかかかりませんので、3種類、聴き比べてください。もともとはオペラのなかで演奏される、オーケストラのための曲だったのですが、演奏効果がとてもカラフルなために、いろんな楽器用に編曲されてアンコールピースみたいになっています。まずはラフマニノフがピアノ用に編曲したものを、ルース・ラレドが弾きます。これ、ものすごいテクニックが必要です。よく指が動くなあと感心しちゃいます。すごいですねえ。

◆「熊ん蜂の飛行」Ofra Harnoy(cello)
次は、オーフラ・ハーノイがチェロで弾きます。チェロで弾く「熊ん蜂の飛行」って、あまり聴かないですけど、なかなか骨太な迫力があります。編曲はオーフラさん自身です。すごい、これも!

◆「熊ん蜂の飛行」Isaac Stern(vln)
最後に、アイザック・スターンがヴァイオリンで弾きます。さすが巨匠、相当にすさまじい演奏です。3種類の熊ん蜂の羽音を愉しんでいただけましたでしょうか。並べて聴くと、かなり迫力ありますよね。

◆「プーランク『パストラール』『トッカータ』」Vladimir Horowitz
フランシス・プーランクの「パストラール」と「トッカータ」を続けて聴いてください。どちらも短い曲で、2曲合わせて5分もかかりません。才気あふれるプーランクの若書きの瑞々しい小曲を、これもまた若き日のウラディミール・ホロヴィッツが軽々と、でも異様なまでの明晰さをもって弾き切っています。1932年の録音で、もちろんSPレコードで、さすがに音は古いですが、音楽は実に生き生きしています。当時プーランクとホロヴィッツはパリで親交があったみたいです。2人して“当時のパリのサロンを沸かせた”みたいな雰囲気がみっちり漂っています。

僕はこのレコードを高校生のときに手に入れて聴きまして、それ以来しばらくホロヴィッツとプーランクに夢中になってました。僕にとっては、それくらい中毒性のある演奏でした。

◆「バッハ『フルート・ソナタ第二番』二楽章」加藤恕彦
次は、加藤恕彦(かとう・ひろひこ)さんのフルートで、バッハ「フルート・ソナタ第二番」二楽章です。1963年にパリでおこなわれたリサイタルの録音です。ピアノは北川正さん。

僕は小澤征爾さんからお話を聞いて、加藤恕彦さんという人のことを知りました。1937年生まれ、同年代で、学生時代2人は仲が良かったんだそうです。加藤さんが先にヨーロッパに渡って、ランパル(*Jean-Pierre Rampal:1922 – 2000、20世紀を代表するフルート奏者)のもとで勉強し、1960年にミュンヘンの音楽コンクールで2位をとり、モンテカルロ歌劇場管弦楽団の主席フルート奏者に迎えられました。小澤さんは、「ものすごく才能があったやつで、そのまま行けばすごい演奏家になっていただろうね」と、残念そうに回想しておられました。先に外国に出ていった彼に刺激を受けて、若き日の小澤さんも必死にヨーロッパを目指したということでした。

レナード・バーンスタインがヨーロッパを旅行したとき、そのモンテカルロのオーケストラを指揮して、そのあと「あそこには素晴らしい首席フルートがいたよ」と、小澤さんに語ったということです。それくらい耳目を惹く素晴らしい音楽だったんです。でも結婚したばかりの英国人の奥さんと、モンブラン登山をしているときに事故にあって、そのまま消息を絶ちました。まだ26歳という若さでした。その話をするとき、小澤さんは本当に悲しそうでした。たしかに、このバッハのソナタもとても自然な、心優しい演奏です。このLPは、このあいだ中古屋で見つけて買ってきました。手に入れるのはなかなか難しいんですけど、やっと見つけました。

◆「ロッシーニ『二匹の猫の滑稽なデュエット』」Victoria De Los Angeles, Elisabeth Schwarzkopf, Gerald Moore
次はロッシーニが作曲した「二匹の猫の滑稽なデュエット」です。Duetto buffo di due gatti――言葉はなくて、猫の声だけで歌われる曲ですが、歌っているのがエリザベート・シュワルツコップと、ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレスという、1960年代を代表する2人の偉大なソプラノ歌手、そしてピアノが伝説的な伴奏の名手ジェラルド・ムーアという、超豪華な組み合わせです。コンサートの実況ですが、当然ながら場内は大いに盛り上がります。2匹の素敵な猫ちゃんの艶やかな声を聴いてください。猫山さん、いかがでした?(ミャーオ)うん、楽しかったですね。

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聴取期限:2020年9月21日(月)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~5分で聴けちゃうクラシック音楽~
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時:9月13日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

当記事はTOKYO FM+の提供記事です。

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