BAROQUEの圭、ソロワンマンで宣言「音楽で救われたものを、自分を通して皆に表現して、何か役に立ったらいい、というのが俺の人生」

SPICE

2020/9/14 02:29


BAROQUEの圭(Gt)が9月10日に開催したソロライブのオフィシャルレポートが到着した。
本公演直前の9月8日(火)には、BAROQUEのボーカル・怜(Vo)の引退が発表となり、BAROQUEの無期限活動休止、ツアーも中止という突然の知らせが告げられたばかり。そうしたなかで行われたライブのオフィシャルレポートをお届けする。

9月10日(木)、BAROQUEの圭(Gt)が、ソロワンマンライブ『beautiful emotional picture 2.0 「神と理想郷」』を日本橋三井ホールにて開催した。本来は3月を予定していたのだが、新型コロナウイルス感染症の影響で延期、生配信という選択肢も加えた上での振替公演である。公演直前の9月8日(火)、BAROQUEの怜(Vo)の引退が発表となり、BAROQUE無期限活動休止、ツアーも中止という突然の知らせに激震が走ったばかり。このような心境でライヴを観ることになるとは、半年前には予測不可能だった。

座席は感染対策に万全を期し広い間隔を取られており、観客はマスク着用のうえ発声を控えて開演を待機。紗幕越しにメンバーが登場し、純白のスーツ姿の圭が最後に現れ、ギターを鳴らす。最初の一音だけでモノクロームの世界を色付かせるような、鮮烈な始まりだった。無数の光の泡が弾けてゆく映像を背に、ゆったりと宙を泳ぐように身体を揺らしながら、最新ソロアルバム『4 deus.』収録の「empyrean.」を艶やかに演奏。紗幕が落ち、水面に反射する花の眩い映像が目に飛び込んでくると、2009年の1stソロアルバム『silk tree.』に収められている「pitiful emotional picture.」を繊細に歌い届けた。音楽だけでなく、想像力を掻き立てられる映像、照明、すべてが絡み合って圭の世界を構築していく。

ノスタルジックなオルゴールのような音色に乗せて静かに始まったのは「vita.」。同じく『4 deus.』の収録曲で、刻々と移り変わっていく曲調が人生・生命そのものを映し出すような、約15分の大曲。圭は、無垢なトーンを清らかに爪弾いたかと思えば、やがて咆哮するような攻撃的な音色も含みながら、暗く乱れたカオスへと突進。高松浩史(Ba/THE NOVEMBERS)、山口大吾(Dr/People In The Box)、hico(Key&Mani)の演奏も迫力に満ち躍動的で、4人の音は互いに絡み合いながら昂っていく。最後、圭は酩酊したように跪いてプレイすると、その後呆然と立ち尽くし、静かに音色を響かせた。深く引き込まれる圧巻の1曲だった。空気が一変し、ブルーのシンプルな光に照らされる中、hicoとの2人編成で披露したのはBAROQUEの「YOU」。ピュアなヴォーカルラインを、優しく、時にやるせない切なさを漂わせながらギターで奏でる圭。手を伸ばして何かを求める悲痛な叫びのような、想いの迸るフレーズには胸を締め付けられる。hicoはさざ波のように穏やかなピアノでそっと寄り添っていた。


「一昨日発表したからね、しんみりしちゃうよね…」とファンの複雑な想いを圭は気遣いながら、その件については後ほど改めて話すと予告した上で、「それまでは普通に楽しまない?」と語り掛けると、観客は大きな拍手で応えた。外出自粛期間中にスタートさせたツイキャス配信ラジオ番組『SYNERGY』で経験を積み、目に見える反応がない中での発信に慣れたこと、髪が伸び長い襟足で着る白スーツは「チャラいのでは?」と心配になったことなど、ざっくばらんなトークで笑いをもたらしながら空気をほぐした後、1人目のゲスト、圭が敬意を込めて〝変態ギタリスト″と呼ぶtakutoを招き入れた。2月に圭が出演したフラワーアーティスト相壁琢人の主催イベント『Adam et Eve₋Adam₋』では、takutoはwolrd’s end girlfreindとして出演。以来2度目の共演となる。圭がtakutoの隣へと移り、互いに向き合って音を鳴らし合い、セッションがスタート。音が次々に重なっていくと、それまでの和やかなトーク場面を瞬時に忘れ去ってしまい、時空の歪みに陥ったような狂気の世界へ。ダークでグラマラスな音の洪水に酔いしれ、忘我の境地に誘われていく。圭が脚を高く上げギターを振り下ろしセッションを閉じ、takutoを拍手で送り出した後は、「the sin.」を初披露。配信番組の中で即興的に生み出したばかりの新曲である。太古から変わらない大地の胎動のような力強さと最新のエレクトロニクスとが共存するダンスミュージックに、澄んだ空のような圭の透明なギターが美しく重なっていた。

続く「moon dreams.」(『4 deus.』)では、新国立劇場バレエ団のファースト・アーティスト益田裕子とコラボレーション(振付協力 丸澤芙由子)。スクリーンには月や海の神秘的な映像が映し出され、舞台上には淡い光が月光のように降り注いでいる。白いドレスをまとった益田は、まるで月の精のような透明感を内から放ち、軽やかに優美に舞い踊りつつ、ステージを左右広く使いきったダイナミックな回転や飛翔でも圧倒。クラシックとモダンが融合し、エレガントでありながらエモーショナル。強い生命力に満ちたバレエは、圭が紡ぐ音楽の世界と高次で融合し、幻想的な美しさを描き出していた。曲を終えて送り出した後、圭は「すごいね」と感嘆し、「『moon dreams.』でやりたかったんだよね。イメージがあったというか…実現できてよかったと思います」と、願いが叶ったことを喜び、初の試みに手応えを感じているようだった。

ライブは終盤を迎え、バンドセッションへ。ピラミッドなどエジプトのモチーフが背後に映し出される中、妖しくエキゾティックなギター音階を奏でる圭。4人の音と音とがぶつかり合って次第にボルテージが昂っていき、圭は激しく頭を振って、弾くというよりもほとんど打ち鳴らすようにギターを鳴らし、音に没入していく。曲が終わらないうちに客席からは自然と興奮の拍手が沸き起こる、熱狂的な演奏だった。本編のラストは「eve.」。上述のイベント『Adam et Eve₋Adam₋』のために書き下ろした楽曲だ。花の蕾が開いたり風に揺れたりする映像には、走り去る電車も織り込まれていたのが印象的。全身全霊で鳴らすギターを鳴らす圭の姿からは、この現実世界を見つめ、生きとし生ける者の全てをあるがままに受け止める広い視座し、すべてを音楽に込めて届けようとする覚悟が感じられた。

アンコールでは黒いシャツに着替えて圭が一人で登場。「今日は本当にありがとう!」と感謝を述べ、「大変な状況だったけど、楽しんでくれたでしょうか?」と問い掛けた。やがて意を決したように、BAROQUEの無期限活動休止の発表について言及。詳細な経緯に関しては発表直後に配信番組で語っており、説明を繰り返すことはしなかったが、「この件が決まった時、ファンの皆に対しては胸が痛かった。これを聞いたらどう感じるんだろう? すごく傷付くんじゃないかって…」と胸の内を明かした。「一番大切なことは、それぞれ…俺たちだけじゃなくて、一人一人の人が、本当に自分らしい生き方、自分が納得した、自分が毎日朝起きて楽しいと思える、幸せだと思える生き方をするっていうこと。この世界に生まれた誰にも壊せないものだと俺は思うので、それを今回は尊重させてもらいました」と大切にした理念を述べ、現時点では、「いい意味で流れに身を任せていく」と語った。

バンドの決断に理解を示すファンの優しさに感謝を繰り返し述べながら、「でも、簡単に受け入れられる話ではないのはよく分かってるので」「飲み込まなくていいと思うんだよね」とファンの奥底にある本心を推し量り、喪失感、虚しさ、悲しさをも肯定。「その気持ちに蓋をする必要もない」と語ったのが印象深かった。人の命の喪失も挙げながら、「失った時に思う心の穴、代わりになるものはない。でも、俺たちは生きてるし、生きていればどういう人生になるか分からない」とも。気持ちが辛い時には「逃げていいと思う」と受け止め、音楽が「そういう助けになったら一番いいし。俺自身もやっぱり、今日も改めてステージにあって思ったけど、すごく音楽に救われてるから。その救われたものを、自分を通して皆に表現して、何か役に立ったらいい、というのが俺の人生」と、自身の存在意義、音楽との向き合い方を再認識したようだった。「俺はしんどい時、嘆くし、〝もう一人の自分″に閉じ籠ることもある。けど必ず、傷付いたものとか失ったものの後には、もっと大きな素敵なものが生まれるのも、これまでの経験で知ってる。だから…すごく大きなものが今止まったけど、大きいからこそもっと大きいことを感じて、人生を良くして行ける。ステージに立ってそういうことを今日感じたので、どういう形であれ、俺がここにいることで皆の人生を…おこがましいけど、少しでもいいものにできたら、生まれて来た意味があると思う。その信念が無くならない限り、俺は絶対に諦めないんで」と強い口調で宣誓。「大変な時はたまに言うんで(笑)、心配しないでください。ありがとう!」と最後は笑った。

率直な想いの吐露に続き、アコースティックギター弾き語りで届けたのは、「I LUCIFER」。BAROQUEの最新アルバム『SIN DIVISION』において、圭が自身の少年期の喪失体験と怒り、その奥にあった哀しみ、抑圧してきた心の叫びと向き合って生み出した特別な曲だ。ところどころ声を震わせながら、しかし力強く歌い終えた圭の姿を、観客は身じろぎもせずじっと見つめていた。


様々な感情が胸に去来してステージから目を離せないでいると、圭は再びhicoを呼び込んで、最後の曲へ。本編でタイミングを逸してしまっていたメンバー紹介を、メンバー不在のステージ上で行うことに自ら苦笑しつつ、「まさか3月のライヴがこういうタイミングになって、こういう節目のライヴになるとは夢にも思わなかったですけど…」と圭。このステージに立つことで「何かが自分でもよく分かるようになったんで、本当にありがたいなと思います」と改めて言葉にすると、「最後に、一番深いところから演奏して終わりたいと思います。今日は本当にありがとうございました」と「deus.」を届けた。序盤、hicoの物憂げなピアノが心に沁み渡ってきて、赤いライトがステージに圭の影を大きく映し出す中、メランコリックに歪んだギターフレーズが物悲しく会場に響き渡る。やがて、BAROQUEの「BIRTH OF LIBERTY」のモチーフとリンクしながら、明るい光が差し込んでくるような終盤には、圭がこれから歩んでいく新たな未来への希望を感じた。

思いがけない展開を完全には受け止めきれないままこの日を迎えたが、ライヴで繰り広げられた圭の世界はどこまでも広く自由で、美しかった。延期の経緯によりリハーサルを十分に行えなかったというのが信じられないほど、サポートメンバーとの呼吸感も抜群。2組のゲストとのコラボレーションも、圭の表現領域が今後まだまだ広がっていくことを予感させた。ただでさえコロナ禍でライヴ開催が困難となっている状況で、更なる苦境に直面しながらも、未来への一筋の光を感じさせた2時間10分。光も闇もすべてを飲み込んだうえで、圭がこれから描き出していく景色はこの上なく美しいものになるだろう。次に出会えるその日を、楽しみに待っている。

文=大前多恵 写真=KEIKO TANABE


当記事はSPICEの提供記事です。

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