コロナ禍の今、再び脚光を浴びるレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの鮮烈なデビューアルバム『レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン』

OKMusic

2020/9/11 18:00

90年代に登場した多くのオルタナティブロッカーの中でも、群を抜いて独創的なギターワークを披露したトム・モレロ。彼の破格のプレイがレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(以下、レイジ)の反体制としての姿勢を際立たせたのは間違いないだろう。コロナ渦で全世界が苦しむ中にあって、アメリカでは弱者に対して牙をむくトランプ大統領の悪政が繰り返されているせいか、デビューアルバムに収録された「キリング・イン・ザ・ネーム」が今年6月になってビルボードチャートで21位になるなど、レイジの音楽に再び注目が集まっている。そんなわけで、今回は92年にリリースされたレイジのデビューアルバム『レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン』を取り上げる。

■トム・モレロのバックボーン

レイジが登場した時、ヘヴィメタルのグループを思わせる重低音サウンドと、反体制の過激な歌詞をラップに乗せるスタイルが大いに受け、ライヴ会場はいつもカオスとなった。中でも目を引いたのがトム・モレロの多彩な音を駆使したギタープレイで、彼はフィードバックやタッピングといった従来からある奏法に加えて、エフェクターを多用することで数え切れないほどの重層的な音色を生み出していた。

モレロはジミー・ペイジとトミー・アイオミに影響を受け、自分のギタースタイルを作り上げたとインタビュー等で語っているが、2013年にリリースされたウディ・ガスリーの生誕100年を記念したトリビュート作品『Woody Guthrie At 100 ! Live At The Kennedy Center』(CD & DVD)にも、ライ・クーダー、ジャクソン・ブラウン、ジョン・メレンキャンプ、ランブリン・ジャックらとともに参加しており、生ギター1本でウディ・ガスリーをカバーしている姿を見ると、フォークリバイバルに影響を受けたインテリ(実際、モレロはハーバード大学卒)のフォークシンガーにしか見えない。モレロは思想的にもガスリーの影響を受け、レイジの音楽を構築していったのだろう。彼の音楽的および政治的なバックボーンはフォークリバイバルにもあるようだ。

ちなみにウディ・ガスリーは反体制のシンガーソングライターで、ボブ・ディランやランブリン・ジャック・エリオットをはじめ、後のアメリカのフォーク、ロック全体に大きな影響を与えた巨人である。

■オルタナティブ・メタル (ファンク・メタル、ラップ・メタル)

レイジの音楽はヘヴィメタル+ラップのようにも聞こえるが、王道のヘヴィメタグループと比べると意外に単純なリフの曲は少なく、リズムは明らかにファンクからの影響が大きい。アメリカ西海岸産のグループで言えばロリンズ・バンドやレッチリ、ラッパーのアイス・Tやアイス・キューブらの影響が大きいと思われる。

ヘヴィメタルとファンクがミックスされるのは、80年代にフィッシュボーン、リビング・カラー、バッド・ブレインズなど、それまではほとんど存在しなかった黒人ロックグループが参入するようになってからのことだと思う。そして、黒人音楽の世界でラップが登場すると、今度は白人がラップを取り入れるようになり、ロックはどんどんオルタナティブ化していく。92年頃はまだそういった音楽は散発されているにすぎず、ファンクメタルとかラップメタルという言葉はなかったはず(そう記憶している)であるが、レイジの登場によってそれらの音楽が明確に認識されるようになり、オルタナティブメタルという概念が現れることになる。

■グループの結成

91年、トム・モレロ(Gu)、ティム・コマーフィールド(Ba)、ザック・デ・ラ・ロッチャ(Vo)、ブラッド・ウィルク(Dr)の4人組で結成される。そもそも、ロッチャとコマーフィールドは小学校からの友人で、2人はインサイド・アウトというハードコア・パンクのグループに在籍していたが、ロッチャはランDMCのようなヒップホップ風味のあるグループを作りたいと考えていた。モレロは在籍していたロック・アップの解散後、ロッチャの独特のラップに感銘を受け、一緒にグループを結成しようと申し出る。ドラムにはロック・アップのオーディションに落ちた経験のあるブラッド・ウィルクが参加することになった。ベースはもちろん、ロッチャと長い付き合いのコマーフィールドである。

■本作『レイジ・アゲインスト・ ザ・マシーン』について

92年のはじめ、12曲入りのデモ作品を制作したところ、エピックレコードとの契約が決まり、デビューアルバムの制作がスタートする。エピックとの契約は音楽の中身について会社側は一切口を出さないというもので、新人としては破格の扱いであった。エピックはデビュー前であるにもかかわらず、彼らの成功を確信していたのだろう。

収録曲は全部で10曲。どの曲も印象深いが、やはり極め付けは「キリング・イン・ザ・ネーム」だ。曲の内容は、アメリカで実際に起きた白人警察官4人による黒人運転手の殺人事件についてのもの。この事件は、裁判で警察官4人に対して無罪判決が出たため、ロスの各地で黒人の暴動が起きるなど大きな騒ぎとなり、アメリカで根強く残る人種差別に世界規模でのバッシングが起こった。奇しくも今年の5月25日に起こった白人警察官による黒人ジョージ・フロイドの殺人事件と類似しており、30年近く経った今でも差別問題が解決していないことが露呈し、この曲がリバイバルヒットすることになったのである。

今のキナ臭い世の中だからこそ、彼らが発信する反権力・反体制のメッセージを真摯に聴き直すべきなのかもしれない。

TEXT:河崎直人

アルバム『Rage Against the Machine』

1992年発表作品

\n<収録曲>
1. ボムトラック/Bombtrack
2. キリング・イン・ザ・ネーム/Killing in the Name
3. テイク・ザ・パワー・バック/Take the Power Back
4. セトル・フォー・ナッシング/Settle for Nothing
5. ブレット・イン・ザ・ヘッド/Bullet in the Head
6. ノウ・ユア・エネミー/Know Your Enemy
7. ウェイク・アップ/Wake Up
8. フィストフル・オブ・スティール/Fistful of Steel
9. タウンシップ・リベリオン/Township Rebellion
10 フリーダム/Freedom

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