1曲で9人を演じ分ける。黒木渚初の楽曲提供で、こゑだが見せた脅威の歌唱力と表現への貪欲さ

日刊SPA!

2020/9/8 06:50

 新型コロナですべての人が立ち止まっている現在――。過去に「立ち止まった経験」をもつ2人の女性シンガー・ソングライターがタッグを組んだ。

中学3年生でニコ生系のクリエーター集団「supercell」のゲストボーカルとしてデビューしたこゑだは、2015年にソロデビューしたあと約2年半、活動が停滞した。2012年のデビュー後、小説家としても活躍する黒木渚は2016年に「咽頭ジストニア」という自分の声をコントロールできなくなる病気になり、活動休止と再開を繰り返してきた。

互いにそれらの苦難を乗り越えようとしていた矢先、全世界の人々と同様に、2人も新型コロナウイルスの影響で思っていたような活動ができなくなった。ただ、2人には「立ち止まった経験」があるからこそ、戸惑いつつも、このコロナ渦の状況でも比較的スムーズに表現活動を続けている。

黒木渚、初の楽曲提供となる新曲「V.I.P.」でこゑだが見せた驚きの表現方法とは?

――このコロナの状況になってから、多くのミュージシャンと同様、2人ともネット配信などで発信を続けています。特にこゑださんは中学2年生からニコニコ生放送の「生主」として歌を歌い出し、2000人の応募があったオーディションを経て「supercell」のゲストボーカルになったという経歴があるので、YouTube、ツイキャスなどの配信もお得意ですよね?

こゑだ:私は小学校5年生からパソコンにハマって、反抗期の頃はネットの世界にどっぷりで、心配した母から「あんたはずっとそんなところに引きこもって! 顔が電車男みたいになってるよ!」と言われていたぐらいなので(笑)。ソロデビューしてからは一時期、どう自分で動いていいのかがわからない時期があったんですけど、「自分で動かないと物事は動かない」ということに気付いて、昨年からオフィシャルの活動に加えて、自主製作やYouTubeの配信なども自分の意思で始めました。なので、コロナの自粛期間もライブができないぶん、ミュージックビデオを公開したり配信したりしながら「今は自分でつくりたいものをつくる時期なんだな」とつくり続けていましたね。

黒木渚(以下、渚):こゑだちゃんに比べると私は「お姉さん」だし、バンド上がりのけっこう伝統的なタイプのミュージシャンなんで、ネット配信するための機材を買って、慌てて勉強して、コロナの最初の頃は「機材鬱」みたいな感じにはなりましたね(笑)。ただ、喉の病気もあって活動が停止することには慣れていたから、ほかのアーティストさんが「やばい、活動止まっちゃった、何かしなきゃ」ってなっているときに、けっこう序盤から「よっしゃ、つくろう!」って切り替えは早かったと思います。ちなみに、私もインスタやYouTubeでの生配信を始めたんだけど、コメントって、どのぐらいの頻度で拾えばいいの?

こゑだ:いやねぇ、それ、私もちょっと研究中なところはあるんですけど、目についたら(笑)。

渚:手当たり次第いったほうがいいっていう?

こゑだ:私の場合、配信はすごいアットホームにやっているので、家の中にいっぱい友達がいて、なんか「わー」って言ってて、それに「あー、だよね」みたいなぐらいのテンション感で拾うっていう(笑)。

渚:じゃあ、私も割と気さくなことを心がけて(笑)。ちなみにこゑだちゃんのやってきたニコ生での音楽の世界は、私はわかっていない部分も多いんだけど、とにかく複雑で、ギミックが多くて難しいというイメージがあって。音階とか転調の数とかも普通のポップスよりもかなり多いし、歌のメロとかもどこで息継ぎしたらいいんだろうって思うぐらい、テクニカルなことをしているなぁという印象。だから、歌い手さんの中にもものすごいクオリティの人がたくさんいるんだろうなぁ。

こゑだ:実は、私がソロデビューしてから活動が停滞してしまったのは、とにかくニコ生のボカロPさんたちのやっていることのレベルが高すぎるっていうのが、自分の「呪縛」になったという面もあるんですよ。あの人たちは本当にすごくて、作詞作曲、アレンジ、で、歌は初音ミクが歌うので、そこも全部1人でやっている。だから私も自分で曲はつくり始めていたけど、「私も、作詞作曲、歌、あとアレンジもやらなきゃ!」みたいなのがあって。ほかにも、仕事の進め方がわからなかったりとかいろいろあったんですが、「あ、自分が動けば、人は助けてくれるんだ」ということに気付いてからは動きやすくなりました。

渚:でもそれって、こゑだちゃんが18歳とか19歳の頃の話でしょ。私は中高と全寮制の学校で世間から隔離されていたから(笑)、大学のバンドサークルではっちゃけていた年齢の頃の話だもん。すごいなぁ。

◆黒木渚もこゑだも「歌をバカにされた怒り」が原動力だった

――そもそも、2人が歌を歌おうと思った「初期衝動」はなんだったのでしょうか?

渚:私はその全寮制の学校で、中学校のときに歌のテストでクラス全員に爆笑されて、音痴だってことを自覚しました。そこで、それが悲しくて「笑われる人生はイヤだ!」と思って(笑)、音楽の先生に習ったポリバケツを頭に被って歌うっていう練習方法を2年間やって、普通に音程が取れる程度の人にはなってたんです。でも、歌手になろうとかは夢にも思っていなくて、普通に就職とかもしていたし。でも、バンドは楽しくて、まさかプロになるとは思っていないけど、やってるうちにいろんな人が関係してきて……っていうのが最初でしたね。

こゑだ:私は、母が自営業者でお店をやっていたんですよね。で、母はもともとピアノをやっていたりして音楽はけっこう好きだったみたいで、「お店でコンサートみたいなのをやるから、一緒に歌わない?」って、小学校中学年ぐらいのときに言われたのが人前で歌う一番最初だったと思うんです。で、詳しい内容は覚えてないんですけど、歌ったあとに母がお客さんと電話していたときに、「聴きにきているのは娘さんの歌じゃなくて、お母さんの歌を聴きにきているんだから」みたいな話をされていたのがわかったんですね。また、同じ時期に友達とカラオケに行ったときに「歌手になりたい」と言ったら、「俺の友達のほうがウメーよ」「お前、絶対ムリだろ」ってすごいバカにされたりとかして。そこで、「ハァ?」って思ったんですよ(笑)。「ハァ? 何言ってんの、全然わかってないなぁ」って。でも、そう思わせているのがすごく悔しくって、そこで負けず嫌いみたいなのが働いたんでしょうね。「もう、めっちゃ大きくなって、バカにした相手を踏み潰してやる!」と思って(笑)。

――お2人とも歌の上手さには定評のあるシンガーなのに、最初は「歌が下手だ」とバカにされて、歌を真剣に歌い出したという共通項があるんですね。ただ、こゑださんの場合は、生まれて初めて「人間が歌っているCD」を手にしたのが自分のCDだったりとか、自分の初めてのライブまで、他の人のライブを観たことがなかったという、かなり特殊な逸話がありますが。

渚:すごいっスよ。おそろしい(笑)。

こゑだ:(笑)。そうですね。もともとは音楽を聴くことがものすごく好きだったわけではなくて、一回聴いて「あ、いいな」って思ったら、自分でずっと歌ってしまう子供だったんです。ただ、パソコンがすごく好きだったので電気屋さんに母と行ったときに、当時はニコニコ動画がすごい流行っていて初音ミクのCDが置いてたんですよね。「あ、初音ミクだ」って、そのCDを母に買ってもらったのが、恐らく一番最初で最後みたいな感じのまま「人の声のCD」を買ったことがなかったんです。それで「supercell」のゲストボーカルでデビューして、自分の歌の入ったCDをいただいて、「あ、人間の歌っているCDだ」ってなったんです(笑)。

渚:(笑)

こゑだ:で、ライブに関しては今まで観に行ったことがなかったから、初めて自分のライブをやるってなったときに「勉強しに行かないとダメだよ」っていう声をもらったりはしてたんですけど、もう私の頭の中で「ライブはこういう感じでやる」みたいな、成功するイメージみたいなのがあったので、逆に観たくないなっていうのがあって、そのまま行きましたね。そしたら、アンコールの仕方がわからなった(笑)。

渚:(笑)。私の初ライブの話ってこゑだちゃんにしてないよね?

こゑだ:初めて聞きます。

渚:大学生のときに付き合っていた彼氏がギターで、私が歌っていうユニットだったのね。で、初めてのライブが決まっていたのに、突然、別れちゃって(笑)。で、そのライブに元カレが「面倒だし、行きたくない」って言うから、私は「もうチケットも売ってるし、ハコにも迷惑がかかるから絶対にやったほうがいい。当日、待ってるから。楽屋で待ってるから、ちゃんと来いよ、本番に」って言って、念のために弾けないギターを持って本番に臨んだのね。で、楽屋で待てど暮らせど元カレは来なくって、ライブハウスの人に「本番でーす、黒木さんの時間です」って言われて、もうなんか、怒りでどうにかなりそうで。

こゑだ:(笑)

渚:「なんやねん、あいつー!!」と思って、怒りのままに弾けないギターを摑んでステージの上に出て行っちゃって。でも、そのとき弾けるコードが2つしかなくて、Em(イー・マイナー)となぜかAadd9(エー・アド・ナインス)しか押さえられなかったのね。で、すべての曲をその2つのコードで歌い殴るみたいな(笑)。わーって。で、ハッと顔を上げたら、なぜか客席にその彼がいたの。こうやって腕組んで観てて。「殺すぞぉ!!」って思いながらそっちに向かって(笑)。それが人生始めてのライブで、「音楽やめよう、こんな恥ずかしい思いをするんだったら、ライブなんて一生しない」と思った。そしたら、その日の夜にライブハウスの店長から電話かかってきて、「来月も一本、お願いしまーす」って、何を評価されたのかよくわからないんだけど、「来月も」っていう予約が入ったことで、「そっか、じゃ、練習しなきゃ」みたいな感じになって、今に続いている(笑)。

――いや、絶対にその店長さんも電話すると思いますよ(笑)。だって、きっと尋常じゃないものをそこでは観たわけじゃないですか。2つのコードでがなり立てる怒りまくった女性という。

渚:いや、あの元カレの行動は本当に謎でしたね。今、思い出すとイラっとくるな。

――イラっとくるけど、それがあったから、今の黒木渚がいる、というわけですね。

こゑだ:面白い(笑)。

◆喉の病気を経て「歌える喜び」に目覚めた

――さて、そんな2人が今回、タッグを組んだのが「V.I.P」という曲で、こゑださんは「supercell」以降、そして自主製作以外では初めての「他人の曲」のリリースであり、また、黒木さんも他人へ楽曲提供、プロデュースをするのは初めてとなります。これはどういった経緯で?

渚:最初に会ったのは、こゑだちゃんが私の「はさみ」という曲をカバーしてくれて、しかも当時はレーベルメイトで、ニコ生に一緒に出ようとなったのが、最初に会ったきっかけだったと思うんですよ。

こゑだ:そうですね。

渚:それから一緒にライブしようねと約束してたんですけど、私が喉を壊してダメだったという流れがあって。

こゑだ:渚さんが活動休止ってなるときに、渚さんに連絡したんですよ。で、私も自分の喉や発声がうまくいかなくなったらって想像したら、すごい恐くって。だから、渚さんがそれと向き合っているのはやっぱ本当にすごいし、めっちゃ応援したいなって思いましたね。

渚:いや、でもポリープとかはよくある話じゃん。ツアー一本回ったら、みんなたいがい軽い結節ぐらいはできてる。でも、昔は私も「喉が痛い」とか、ライブのときは「(モニターからの)返しの音量がうまく調整できてないからピッチが取りにくい」とか悩んでいたけど、今回、咽頭ジストニアという病気になったら、そんなことどうでもよくて、足元から自分の声が返ってきてりゃOK。自分の声が「あー」ってやって「あー」って出りゃOKみたいな、水準がめちゃくちゃ下がったんですよ。歌う喜びのほうが勝って(笑)。その点は病気に感謝しているというか、病気にならなかったら、ずっとヘンな方法で完璧主義を貫いて歌っていたかもしれないなって思ってる。気持ちの整理に2年ぐらいかかりましたけど。

――こゑださんもものすごい喉の持ち主ですし、黒木さんと同じ病気というのはなかなかならないと思いますけど、自分の一番の武器である「声」の変調は怖いですよね。

渚:いや、ホント、こゑだちゃんは頑張り屋さんだし、負けず嫌いだし、そういうコほど、自分でストップをかけられないんですよ。喉がヘンなんだって思うのは自分しかいないし、自分のことだから一番わかるんだけど、お客さんは待っているし、スタッフはみんな期待しているし、止まれない。でも、自分でブレーキをかけられなくなるのが、一番深刻に壊しがちだから、絶対に「喉がヤバイ」って思ったら、楽屋に立てこもるぐらいの勢いで、「今日はムリ!」って言ったほうがいい(笑)。

こゑだ:(笑)

――周りは許してくれないだろうけど(笑)。それで、今回はこゑださんからのオファーだったとの話ですが。

こゑだ:そうですね。もともと、以前にご一緒してから、渚さんの楽曲を聴いたりして、「毒」のある曲を歌うことに挑戦してみようと思ったのがひとつの理由ですね。自分がつくるものってやっぱり、自分の経験や世界の中のものでつくるようになってしまう。私は自分には知識があまりないって思っていて、逆に知識がないからこそ、独特の表現ができるような武器でもあるなとも思ってはいるんです。でも、一方で、黒木さんは自分で言葉を紡いで、小説なども書いてらっしゃるし、楽曲の中にも歌詞の中にもちょっと毒々しいエグみがあるんだけど、でも、スッと聴ける音楽をつくっているところにすごく魅了されて。そこがすごく素敵だなと思ったので、そういう楽曲を私も一緒に歌ってみたいというのもあって、お願いしました。

◆自分で歌う曲と、他人に提供する曲の違い

「こゑだ「V.I.P.」Studio Session Teaser」。新曲「V.I.P.」を初お披露目したときの映像

――歌詞の話が出たので、今回の「V.I.P.」の内容について見ていきたいのですが、非常にBPMも速く恋する女のコの気持ちを描いている。一聴するとアップテンポな恋愛ソングですが、ちょいちょい黒木渚流の表現がいいひっかかりを残す曲になっています。まず、サビの「グラスに注がれた私(あなた)の夕方を」という歌詞はまさに黒木渚節というか、本来はまったく異なる概念の言葉をつなぎ合わせ、新たなイメージを生み出す文学的な広がりがありますね。それで、初めて聞いたときに、なぜか全然違う傾向のはずの黒木さんの楽曲「君が私をダメにする」を思い出して。そのことについては黒木さんと2人で話したんですけど。ドラムが柏倉隆史(ex.toe / the HIATUS)さん、ギターがまこっちゃん(井手上誠)といういわば「黒木チーム」のメンバーがいるからか、とか。

渚:でも、アップテンポで恋愛ソング、しかも主人公の女性が相手に夢中という点が共通しているね、という話にはなりましたね。

――ただ、今までの黒木渚の楽曲と大きく異なるのがコール・アンド・レスポンスのところ。もちろん、黒木さんのこれまでの楽曲でもコール・アンド・レスポンスはあるんだけど、ここまで「ライブで盛り上がる感じが丸見え」なものはなかった。やはり人に提供するとなると自分の作品とはちょっと違うのかな、と。とくにこのコール・アンド・レスポンスの最後「イエスもブッダもV.I.P.!!」は笑えるし、「イエス」「ブッダ」のところをイベントの主催者にしたり、ご当地の何かにしたりといろいろと使えますね。

こゑだ:確かに!

渚:うんうん。そこら辺は意識的に書いてます。地方をツアーで回るときとかも使えますよね。大阪だったら「お好み焼き」「タコ焼き」にしたり……ちょっとこれだと音と文字数が合ってないか(笑)。

――ライブで盛り上がるのは間違いないですね。

渚:ただ、それ以前に曲の全体的な話をすると、こゑだちゃんと私はシンガーとして精神的な、歌に対する意識とかはすごく近いと思うけど、やっぱ、年齢とかが全然違っていて。で、この曲を書いたときに、やっぱり歌うにふさわしい「女の階段」が出てくるんだなという発見もあって。確かに、私のほうが年上っていうのもあるし、ちょっとダークなイメージが強すぎる気がしていて。で、こゑだちゃんは陰も持っているんだけど、すごくキュートでコケティッシュな部分も持っているんです。その両極を持っているのがすごい魅力だと思っていて、「V.I.P.」ではちょっと小悪魔っぽくてセクシーで、みんなを天然で魅了しちゃうみたいな部分を爆発させようと思って。

こゑだ:(笑)

――なるほど。演劇や映画だと「当て書き」という書き方があるじゃないですか。今回はこゑださんに提供する前提だから、ここに書かれている女のコはこゑださんをイメージして書いたのか、飽くまでもこういう歌をこゑださんが歌ったら今みたいな話になるだろうな、とイメージして書いたのか?

渚:こゑだちゃんは何にでもなれるんですよ、歌の中だと。それをずっと感じていて。ライブを観ていてもその歌に憑依できるタイプだから、ちゃんと曲として完成したものを献上すれば(笑)、絶対に成功するというのはわかっていて。こゑだちゃんをモデルにしたというよりは、こゑだちゃんが憑依できるキャラのうちの一人をコントローラーで操ったみたいな感覚かな。

こゑだ:私が一番大事にしていることは、生の表現を詰め込むことなんです。もともとピッチ補正など歌に対する機械的な補正を加えてほしくないっていうのがずーっとあって、それを今までずっと守ってきていて。CDなんだけど、音源とライブはまた違うんだけど、音源に詰め込む表現力みたいなところは一番重要視しています。例えば悲しい表現をするときはすごく悲しい表情で歌うとか、楽しいときは笑顔で歌うとか、そういう表現もかなり重要だなと思って、そこを一番意識してやっているので。なので、物語の背景とか情景とか、どういう気持ちで立ち振る舞えばいいのかっていうのはかなり重要だったので、渚さんにいろいろ聞きました(笑)。

◆8人のチアリーディング部の女性の設定をつくり、21秒に凝縮

渚:それに、この歌詞の主人公だけじゃなくて、こゑだちゃんはコール・アンド・レスポンスのところで8人の女のコを演じ分けているんですよ。

――え? どういうことですか?

こゑだ:このコールレスポンスは歌入れする前、バンドサウンドを録るところから、「ここはチアリーダーっぽい」みたいな話になっていて。で、チアリーディングは大勢でやるから、8人の設定をつくって。まずはオーソドックスなチアリーダー、普通の人の設定で歌入れして、次に「すごい静かな女のコ」の設定をつくったんですよね。「普段は図書館で眼鏡をかけて本を読んでて、しゃべりかけると『あっ』って言って会話が続かないようなすごい静かな人。だけど、ちょっと自分を変えたくて、チアリーディングに入って、チアリーディングをしているときはすごい声を出す」っていう。でも、やっぱり根がおとなしいコだから、本当に声を出すコよりは出さないみたいな。

――すごい設定!

こゑだ:で、一番こだわったコがいて、本人は周りのコからすごい好かれていると思っているんですよ。ちょっと浮いてるコで「私はみんなのために、みんなは私のために」みたいな。でも、みんなは正直、そのコのことをすごくうっとうしく思っていて、でも、そのコは気付いていない。もしくは、ちょっと気付いているけど、でも、気付いていないフリをしてる。

渚:あー、いるわー(笑)。

こゑだ:それで、ちょっと声が大きくなっちゃうんですよ。チアリーディングを自分はまとめているつもりでいて、実はすごくうっとおしがられている。だから、1人だけ、めっちゃ張り切ってて、だけど、ちょっとズレてるんですよ(笑)。

――ごめんなさい、確認ですが、それは8人全部、こゑださんが8人役をやっているということですね? ここの21秒ほどのコール・アンド・レスポンスの中にそんな物語が……、どっかの高校のチア部がいるんスね(笑)。

渚:重ねてるから。

――つまり、主人公の女のコに加えて8人のチア部、合計9人の女性を演じ分けた一曲だ、と。いや、これははやくコロナが納まって、ライブで「V.I.P.」を聴きたいところですが、ちなみに黒木さんは、「V.I.P.」は歌える?

渚:ムズいっス(笑)。こゑだちゃんみたいに上手に歌えないもん。

――そういうことを言うと、喉の調子のこともあり、初の楽曲提供で「もしかしたら黒木渚は裏方に回るのか」という疑念もありますが。

渚:いえいえ! 自分の曲もつくっていますし、ライブも計画を練っていますよ。状況が状況でなかなか難しいところですが、小説や楽曲提供だけに専念するつもりはないのでご安心ください。あと、こゑだちゃんには「V.I.P.」以外にも2、3曲つくったりしてて、ライブとかでそういうのを実現していきたいというか。

こゑだ:ねー、やりたいですね。

渚:リリースとか関係なく。なんか「こゑだ」って名前ってめっちゃいいと思ってて。

こゑだ:あー、うれしい!

渚:こゑだちゃんへの曲を書き殴っているときに、名前を書いていて気付いたんですけど、「こゑだちゃんのすべてって何? こゑだちゃんの歌って何?」って聞かれたら「声だ!」ってもう、名前に内包しちゃっているんですよ。それってなんかすごくて、それを言っていいのはこゑだちゃんだけだなって。

こゑだ:うれしい。「声だ!」(手を振り上げながら)

共に立ち止まった経験を持つ2人だからこそ、このコロナの状況下でも制作が止まることはなかった。この新たなコラボレーションが生み出す新たな世界が広がっていくことを祈る。

取材・文/織田曜一郎

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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